2016年8月17日水曜日

上谷遺跡 遺構分布図作成

上谷遺跡の奈良・平安時代竪穴住居、掘立柱建物、土坑、溝状遺構の分布図を八千代市教育委員会の技術アドバイスも得て、やっと作成しました。

次の発掘調査報告書の情報を1枚の分布図に集成しました。


「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第1分冊-」(2001、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第2分冊-」(2003、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第3分冊-」(2004、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第4分冊-」(2004、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第5分冊-」(2005、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第1分冊本文編-」(2005、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

発掘調査報告書は発掘調査区毎の細分された分布図とその検討のみが行われていて、遺跡全体の分布とりまとめや考察はありません。

1 遺構分布図作成

1-1 竪穴住居分布

次に上谷遺跡奈良・平安時代竪穴住居分布を示します。

上谷遺跡 竪穴住居 基図は地理院地図(標準地図)

基図を地理院地図(標準地図)にすると現代開発前の台地・谷津地形の概況が判りませんから、このブログでは基図を旧版2万5千分1地形図(大正年間測量)とします。

上谷遺跡 竪穴住居 基図は旧版2万5千分1地形図

竪穴住居は発掘区域に一様に分布するのではなく、明瞭な分布上の粗密が読み取れます。

1-2 掘立柱建物分布

上谷遺跡奈良・平安時代掘立柱建物分布を示します。

上谷遺跡 掘立柱建物

掘立柱建物の分布は竪穴住居以上に分布が偏在しています。

1-3 土坑分布

上谷遺跡奈良・平安時代土坑分布を示します。

上谷遺跡 土坑

土坑分布も粗密に特徴があります。

1-4 溝状遺構分布

上谷遺跡奈良・平安時代溝状遺構分布を示します。

上谷遺跡 溝状遺構

2個所に見られ、1個所は台地を東西に走り、1個所は台地崖脚部に存在します。


2 遺構分布ヒートマップ作成

遺構分布の特性つまり分布粗密の特性を把握するための分析資料として遺構別ヒートマップを作成しました。

ヒートマップ作成はカーネル密度推定(半径パラメータ50m)によりQGISの機能を利用して作成しました。

2-1 竪穴住居ヒートマップ

上谷遺跡 竪穴住居ヒートマップ

竪穴住居密度が高い空間が赤色で示されています。

赤色の空間は6つのゾーンに区分できそうです。

2-2 掘立柱建物ヒートマップ

上谷遺跡 掘立柱建物ヒートマップ

掘立柱建物密度が高い空間、つまり赤色の空間は大局的にみれば2個所であり、それぞれがまた2つから構成されているように観察できます。

2-3 土坑ヒートマップ

上谷遺跡 土坑ヒートマップ

遺跡西部に大きな高密度空間(赤色空間)が、遺跡中央にも赤色空間があります。

遺跡北部にも赤より色の薄い空間が存在します。



遺構のヒートマップを作成することにより、遺構の空間分布特性を把握して操作できるよになりました。

この情報を操作して、次の記事で遺跡(集落)のゾーン区分推定(機能や集団単位の推定)を行います。

集落ゾーン区分推定(機能や集団単位の推定)を念頭において出土遺物の検討を行うことにより、集落の特性をより合理的かつ深く把握できると考えます。


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