2025年11月30日日曜日

斜面貝層形成仮説 -ハマグリが斜面下部に分布する-

 Slope Shell Layer Formation Hypothesis: Clams Distribute at the Lower Slope


Regarding the shell layers on the slope, I proposed the "Slope Shell Layer Formation Hypothesis: Clams Distribute at the Lower Slope." This hypothesis is similar in spirit to the artifact distribution hypothesis, but uses a different verification method.


斜面部貝層に関して「斜面貝層形成仮説 -ハマグリが斜面下部に分布する-」を設定しました。この仮説は遺物分布仮説と同趣旨ですが、検証方法は別としました。

1 斜面貝層形成仮説 -ハマグリが斜面下部に分布する-

有吉北貝塚北斜面貝層を事例に、次の仮説を設定しました。

斜面最下部はガリー流路による流水営力の影響がありますが、それより上の斜面部では下部にハマグリなど二枚貝純層が分布します。

1-1 仮説結論

斜面貝層では貝殻が斜面上部から投棄され、重力及び葡行現象(クリーピング)で斜面下部に移動する。

斜面傾斜は安息角に近いあるいは同等(35度~40度)であるため、形状の大きい貝殻ほど下方への移動量が大きい。

斜面プロセス

・大きな貝殻ほど斜面表面に露出しやすい。

ハマグリなど二枚貝>イボキサゴなど巻貝>イボキサゴの破砕貝片

・斜面で貝殻が露出すると転がったり滑ったりしやすく、重力でより下方へ移動しやすい。

・結果として斜面下部に大柄の貝殻(主にハマグリ)が分級されて堆積する。

1-2 仮説の基礎となる貝殻移動原理 葡行現象

●葡行現象

斜面の貝殻は長期にわたる葡行現象で斜面下方に移動する。

葡行現象は冬季霜柱と動物・人の踏圧等で生じる。

1-2-1 緩慢な移動

冬季霜柱により斜面の垂直方向に貝殻が上昇する。日中の霜柱融解で貝殻は鉛直方向に下方移動する。このため貝殻は斜面下方に移動する。長期にわたる冬季霜柱の影響で貝殻は緩慢に移動する。

1-2-2 急激な移動

斜面は安息角に近いあるいはそれ以上の急斜面であり、冬季霜柱による微細移動をトリガーとして局所的な小崩壊・滑り(急激な移動)が頻発する。

「持ち上げ → 支えを失う → 安息角を超える → 一気に短い表層すべり」

動物や人の踏圧、強風、豪雨、地震等でも同じ小崩壊・滑り(急激な移動)が発生する。

葡行現象に伴う急激な移動(崩れトリガー)で、遺物は下方へ大きく移動する。

1-2-3 大きな貝殻の選択的移動

破砕貝片、イボキサゴな小さい貝殻はハマグリなど大きい貝殻の間に紛れ込むので、斜面ではハマグリなど大きな貝殻ほど表面に浮かび上がる。つまりハマグリなど大きな貝殻ほど表面に露出しやすくなる。そのため葡行現象の影響を受けやすくなる。一方、破砕貝片、イボキサゴな小さい貝殻は地表面から沈むので葡行現象の影響を受けにくくなる。従って、ハマグリなど大きな貝殻が選択的に斜面移動する。

2 仮説の検証について

2-1 斜面下部ほどハマグリなど大きい貝殻が選択的に分布するか

次の資料から斜面下部ほどハマグリなど大きい貝殻が選択的に分布する様子を詳細にデータ化できます。

・貝層断面図(発掘調査報告書掲載)及び発掘原票「セクション図」

・貝層断面写真(発掘調査報告書掲載)

・貝層剥ぎ取り断面現物(千葉県中央博物館展示)

2-2 投棄後に本当に貝殻が動いたのか、もともと斜面下部にハマグリが投棄されたのではないか

次の4つの視点から投棄後に貝殻が動いて分級したことを検証する予定です。

2-2-1 サイズ分析

貝層剥ぎ取り断面撮影写真から貝殻分類、長径サイズデータ化し、その分布から「動いたか、もともとその場所に投棄されたか」検証します。

2-2-2 貝殻配向分析

貝殻の長軸方向のパターンが葡行現象による斜面移動と整合的であるかどうかを分析して、葡行現象による移動つまり「動いたか、もともとその場所に投棄されたか」検証します。

流水により礫が一定方向に揃って並ぶインブリケーションという配向現象が知られています。それと対応できるような配向現象が安息角斜面における貝殻移動でも観察できるかどうか、観察・分析します。

安息角斜面における貝殻移動では流水における礫移動とは異なり、「 一気に短い表層すべり→小堆積」現象の繰り返しが配向現象として記録されていると考えられ、流水礫インブリケーションより複雑なパターンになると考えられます。

2-2-3 層境界分析

貝層境界分析により、連続的に変化した堆積なのか、斜面下部にもともとハマグリが投棄されたのか、検証します。

2-2-4 貝殻破損分析

貝殻が斜面上部で投棄され、斜面下部まで葡行現象で移動してきたと仮定すると、斜面上部の貝殻は破損が少なく、斜面下部では破損が進んでいると考えられます。この観点から現実的な分析方法があるかどうか検討します。

斜面上部と斜面下部の貝殻サンプルが現存していて、それを使うことができれば、この分析ができる可能性があります。

剥ぎ取り断面には斜面上部と斜面下部の貝殻現物が存在しているので、断面非破壊的方法で貝殻破損分析を行うことが可能であると考えられます。剥ぎ取り断面写真を予察的にみると、斜面下部のハマグリには破損・ひび割れが多いように見受けられますので、この方法が有効になる可能性があります。

3 メモ

斜面最下部はガリー流路による流水営力の影響があります、この最下部を除く斜面部では、「斜面貝層における遺物分布仮説 -大きい遺物ほど斜面下部に分布する-」を援用して「斜面貝層形成仮説 -ハマグリが斜面下部に分布する-」を設定しました。遺物と貝層の仮説は同じ趣旨ですが、検証方法は別としました。

これからの有吉北貝塚北斜面貝層取組みはこの遺物と貝層に関する仮説検証が重要な軸の一つになり展開します。

この仮説検証過程で有用情報の多産が期待できそうです。


斜面貝層形成仮説


斜面貝層形成仮説

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