ここで扱っている陥し穴は縄文時代を通しての陥し穴であり、縄文時代早期に限られているものではありません。
また、陥し穴分布は陥し穴罠猟だけでなく、それと一緒に行われていたと考える追い込み猟の指標でもあると考え、陥し穴分布は広義の狩猟適地の指標になると考えます。
2017.03.27記事「千葉県 陥し穴分布ヒートマップ」では陥し穴分布と旧石器時代遺跡分布を比較して、旧石器時代と縄文時代を比べると縄文時代の狩猟好適地が大幅に限定されてしまった様子を考察しました。
この記事では陥し穴分布と縄文時代遺跡分布を比較して、狩猟という生業の好適地と他の生業の好適地との関係を考察します。
1 千葉県 陥し穴分布ヒートマップ
千葉県 陥し穴分布ヒートマップ
半径パラメータ5㎞、輪郭をトレース
この分布図で赤地域は縄文時代の狩猟好適地を表現していると考えます。
2 千葉県 縄文時代遺跡分布ヒートマップ
千葉県 縄文時代遺跡分布ヒートマップ
半径パラメータ5㎞、輪郭をトレース
縄文時代草創期から晩期までの6553遺跡をプロットして作成したヒートマップです。
この分布図で赤地域は縄文時代人の生活・活動が活発に行われた地域を表していて、より具体的には貝塚集落などに象徴される漁業が盛んであった地域、堅果類の採集が盛んであった地域、狩猟が盛んであった地域、その他の生業(漆、道具づくり、交易、…)が盛んであった地域が複合的に表現されていると考えます。
この縄文時代分布ヒートマップと陥し穴分布ヒートマップを比較すると、縄文時代の生業が盛んであった地域のほとんどが狩猟以外の生業が盛んであった地域であるとことが判ります。
海岸や入り江付近の漁業と内陸の堅果類採集が大きな比重を占め、狩猟はさほどでもないことが判ります。
3 千葉県中央部付近のヒートマップ
千葉県中央部付近のヒートマップ比較
千葉県中央部付近のヒートマップを比較すると陥し穴分布ヒートマップで赤色地域であり、かつ縄文時代遺跡分布ヒートマップで赤色地域になっている部分(B)は陥し穴分布ヒートマップの赤色地域(B、C)の半分程度にすぎません。
これは陥し穴分布が縄文時代全遺跡分布に与える影響が極めて限定されていることを物語っています。
陥し穴分布が縄文時代全遺跡分布に与える影響が極めて限定されていることの最大の意味は狩猟好適地が他の生業の適地と比べて狭いということです。
そのほかに、狩猟好適地では施設は陥し穴程度であまり必要がないので、つまり自然的環境を保つ必要があるので、他の生業適地(貝塚など)と比べて遺構が少ないという意味もあると考えます。
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