Research summary
The results of the research on database construction and utilization for the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita shell mound (interim report) have been summarized. The construction of a database for 3D spatial analysis is believed to be the first in shell mound research in Japan.
有吉北貝塚北斜面貝層に関するデータベース構築活用研究(中間報告)の結果をまとめました。3D空間分析用データベース構築は本邦貝塚研究で初出であると考えられます。
1 遺物投棄原理検討材料を集めた
本研究では、北斜面貝層において異なる遺物種の投棄(埋納)原理の違いを浮彫にする材料をある程度集めることができました。データベースを活用することにより、今後さらに多くの材料を集める予定です。土器、骨・歯のみならず、土錘、円盤、貝刃、磨貝、打製石斧、磨製石斧・・・など遺物種毎に投棄特性データを収集し、比較するつもりです。
2 データベース構築により出土遺物を100%利用できるようになる
北斜面貝層出土遺物の発掘調査報告書掲載件数、掲載率
データベース構築は北斜面貝層出土全遺物を対象としており、今後データベースを活用すれば調査研究において出土遺物100%の情報を利用できます。現状(発掘調査報告書限定の調査研究)での遺物に関する最大利用率は5.1%にとどまります。データベースを活用することにより今までより20倍の遺物情報を利用できることになり、調査研究のレベルアップに資することが期待できます。また、データベースを利用することにより、遺物と貝層との関係がはじめて明らかになり、画期的です。
3 3D空間分析用データベースは本邦貝塚研究で初出である
データベース構築作業に関連した資料収集では、3D空間の中で貝層分布、遺物分布を精細に把握し、その関係を分析した事例を本邦貝塚研究で見つけることが出来ませんでした。本研究が初出であると考えられます。研究類例がないため、3D空間分析用データベース構築は試行錯誤の中で進めたが、今回プロトタイプとしての姿を表すことができました。
活用事例の中での貝層大区分(斜面性貝層と流動性貝層)及び貝層別遺物件数、密度(件/㎥)、密集度などの指標は過去の研究で扱われたことがなく、これも本研究が初出です。
4 活用事例分析の成果は大きなものであった
活用事例分析はデータベース試用を主目的とした試行的作業であるため、その結果に考古学的結論を直接期待するものではないが、予察的検討しての成果は予想外に大きなものでした。
特に、土器現物破片の遺物番号を知れば、データベースに土器型式情報(即ち時期情報)を取り込むことができ、貝層と遺物関係に時期情報をリンクできることが確認できました。その意義は大きなものです。
5 データベースの完成をめざす
一方、「斜面における貝殻・遺物の移動実体」など分析に必要な基礎的事項のデータ不足も判明しました。今後データ不足を補う活動について検討します。
データベース構築及び利用に関して次の課題が残っているので引き続き取組み、完成を目指すこととします。
● 3D 空間分析用データベース構築及び利用に関する課題
・遺物分布図からXY 座標を読みとる残作業などの完遂。
・土器現物から破片別遺物番号を読み取り、その情報を遺物データベースに加える。
・セクション図記載情報(分層情報)を再吟味し、その活用法について検討を深める。
・3D空間における各種分析技法の開発
3D空間分析用データベースの構築は第二の発掘です。
6 謝辞
最後になりましたが、北斜面貝層発掘原票の閲覧利用を許可していただいた千葉県教育委員会に感謝申し上げます。
参考引用資料
・「千葉東南部ニュータウン19 - 千葉市有吉北貝塚1(旧石器・縄文時代)- 第1分冊(本文)」(平成10年3月、住宅・都市整備公団・財団法人千葉県文化財センター)
・同第2分冊(分析・付図・付表)
・同第3分冊(写真図版)
研究経済:この研究は組織・団体からの資金提供を受けていません。
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