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2020年2月29日土曜日

把手のある意匠充填系土器

縄文土器学習 361

現在、加曽利貝塚博物館E式土器企画展の展示土器について学習しています。この記事では把手1つと波状口縁を持つ意匠充填系土器、加曽利EⅢ式深鉢(印西市馬込遺跡)企15を観察します。(企15はこのブログにおける整理番号です。)

1 加曽利EⅢ式深鉢(印西市馬込遺跡)企15 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(印西市馬込遺跡)企15 観察記録3Dモデル 
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」 
撮影月日:2019.11.19 
整理番号:企15 
ガラス面越し撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 83 images

展示の状況

2 3Dモデル展開写真
GigaMesh Software Frameworkを使って3Dモデルから展開写真をつくりました。
ここで示す展開写真はテクスチャモデル(画像を貼り付けたモデル)展開写真とソリッドモデル(凹凸だけのモデル)展開写真をPhotoshopでオーバーレイして作成しました。単なる展開写真ではなく、立体性を付与した展開写真です。
隆帯をトレースするときなどでは、オーバーレイ方法の違いによって立体性強調場所が異なるので、幾つかの展開写真をつくり参考にします。

加曽利EⅢ式深鉢(印西市馬込遺跡)企15 展開写真 1

加曽利EⅢ式深鉢(印西市馬込遺跡)企15 展開写真 2

3 文様の分布
文様(隆帯)の分布は次の通りです。

加曽利EⅢ式深鉢(印西市馬込遺跡)企15 の文様(隆帯)の分布

4 観察及び感想
・上段に渦巻文、下段におそらく懸垂文が配置されていて、1本隆帯で意匠が充填されています。
・上段は渦巻文と副文として区画文があるように観察できますが、渦巻文と副文が繋がっているとこともあります。
・上段と下段は1本隆帯で分かれています。
・把手1つと口縁部突起3つの4単位の器形をしていますが、把手部分に対応する渦巻文は上下から2つ派生していて、個々だけ特別です。把手のある場所がこの土器に正面であると考えられます。
・口縁部形状は把手のある場所と対向の突起の場所では湾曲が異なります。把手のある場所のほうが口縁部の湾曲が強くなっています。胴本体の形状は円形に近い造形になっています。(2020.03.01追記 この記述は粗雑な観察であり、間違っているようです。下図をよく見ると、土器投影形は把手とその対向突起を結ぶ軸方向に長軸を持つ楕円になっています。土器作成に際して土器正面を最初から設定している可能性があり、土器形状がその思考(土器設計イメージ)に影響を受けている可能性があります。模様と形状からみた土器正面という概念について観察を重ねたいと思います。)

加曽利EⅢ式深鉢(印西市馬込遺跡)企15 土器の「上から」3Dモデル画像(オルソグラフィック画像)
・把手や波状口縁のある土器の割合は加曽利EⅡ式土器と比べて加曽利EⅢ式土器では格段に増えるのではないかと想定しています。逆に言えば加曽利EⅡ式土器の時代には前後と比べて、特別少なかったと考えます。波状口縁の有無・把手の有無・把手デザインの精緻化が社会の趨勢(発展と凋落)に関連していると仮説しています。その仮説を検証したいという気持ちが趣味活動推進源の一つになっています。

2019年2月18日月曜日

加曽利EⅠ式前段階土器 追補

縄文土器学習 32 加曽利貝塚博物館企画展展示土器の観察 10

この記事は2019.02.13記事「加曽利EⅠ式前段階土器の観察と感想」の追補です。

1 加曽利EⅠ式前段階土器(No.2)の出土遺跡訂正
加曽利貝塚博物館への問い合わせに返答をいただき、加曽利EⅠ式前段階土器(No.2)の出土遺跡表記が(誤)有吉北貝塚→(正)荒屋敷貝塚と訂正されました。

2 加曽利EⅠ式前段階土器(No.2)の発掘調査報告書記述
加曽利貝塚博物館から情報を提供していただきました。この土器の発掘調査報告書記述は次の通りです。

26深鉢。把手部のみ破損。器高31.5、口径26.0、胴径16.9、底径8.4cm。胴部に施文原体Lを用いた縄文を縦方向より施文。頸部には横位の沈線3本周回。口唇部は、平滑になでられており、その端部には刻み目を施す。把手は一部のみ接合しているが、接合不能な破片が2点あることから、3ヶ所一対であったと思われる。器内面は横位のナデ、胴土には砂粒を含む。色調黒褐色。059出土。

出土土器挿図
掲載報告書名:1978『千葉市荒屋敷貝塚‐貝塚中央部発掘調査報告‐』(発行:建設省関東地方建設局、日本道路公団東京地方建設局、財団法人千葉県文化財センター)

3 把手部の位置推定
接合している把手部のほか、写真左口唇部に出っ張りが観察できるのでその場所がもう一つの把手部であったと推察できます。

把手部位置の推察

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参考 加曽利EⅠ式前段階土器(No.2)の展示位置

加曽利貝塚博物館の情報提供に感謝します。