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2024年3月5日火曜日

加曽利EⅢ式土器(025)(香取市多田遺跡)観察記録3Dモデル

 Kasori EIII style pottery (025)(Katori City,Tada Site) Observation record 3D model


I created a Observation record 3D model of Kasori EIII style pottery (025), which is on display at the Kasori Shell Mound Museum special exhibition "That's also E... Sotobo Area Edition". 

This pottery is a design filling type pottery with alternating spiral patterns on the rim and body.


加曽利貝塚博物館企画展「あれもE... 外房地域編」で展示されている加曽利EⅢ式土器(025)の観察記録3Dモデルを作成しました。

この土器は、口縁部と胴部の渦巻文が交互に配置される意匠充填系土器です。

1 加曽利EⅢ式土器(025)(香取市多田遺跡)観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式土器(025)(香取市多田遺跡)観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度企画展「あれもEこれもE加曽利E式土器 -外房地域編-」

撮影月日:2024.01.20


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.517 processing 145 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 展示説明

「025の意匠充填系土器は、隆線と充填縄文で描かれる口縁部と胴部の渦巻文がくびれを境に交互に配置され、上下入組む形で連携しています。」


2024年1月30日火曜日

加曽利EⅢ式土器(043)(芝山町古宿・上谷遺跡) 観察記録3Dモデル

 Kasori EⅢ style pottery (043) (Shibayama Town,Hurujuku/Kamisaku Site) Observation record 3D model


I created a Observation record 3D model of Kasori EⅢ style pottery (043), which is on display at the Kasori Shell Mound Museum special exhibition "That's also E... Sotobo Area Edition". 

This pottery is a Horizontal cooperation arc line pottery.


加曽利貝塚博物館企画展「あれもE... 外房地域編」で展示されている加曽利EⅢ式土器(043)の観察録3Dモデルを作成しました。この土器は横位連携弧線文土器です。

1 加曽利EⅢ式土器(043)(芝山町古宿・上谷遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式土器(043)(芝山町古宿・上谷遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度企画展「あれもEこれもE加曽利E式土器 -外房地域編-」

撮影月日:2023.12.19


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.511 processing 116 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 メモ

展示ではつぎのような説明がされています。

「加曽利EⅢ式土器の変容

加曽利EⅢ式では、口縁部文様帯+胴部文様の構成が崩壊し、新たな土器が生まれます。横位連携弧線文土器は、胴部懸垂文が伸びて口縁部文様帯と連携する、連弧文土器の影響のもと成立する土器です。

意匠充填系土器は、胴部にも配置される渦巻文と隆線の隙間に縄文を充填する手法が特徴で、大木式の影響のもと成立する土器です。」

043土器は横位連携弧線文土器です。


043土器の特徴

4 参考

古宿・上谷遺跡の読み(フルジュク・カミサク)を確認するためにweb検索している時に、次の論文をみつけ、おもしろいので、時間をわすれて読み通しました。

加納実「山武郡芝山町古宿・上谷遺跡の再検討-小規模集落の分析にむけて-」(千葉県教育振興財団 文化財センター 研究連絡誌82号、令和2年3月)





2023年2月8日水曜日

加曽利EⅢ式土器3Dモデルのリメイクと塗色版作成 その2

 Kasori EIII pottery 3D model remake and painted version creation 2


I was interested in the Kasori EIII type deep bowl, which I created a 3D model three years ago, so I remade it and created a painted version to observe it. I am interested in where the difference between EII and EIII lies.


3年前に3Dモデルを作成した加曽利EⅢ式深鉢に興味が湧いたのでリメイクして塗色版を作成して観察しました。EⅡとEⅢの差異がどこにあるかという点に興味を持っています。

1 加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市内田端山越遺跡) 観察記録3Dモデルv2 (リメイクバージョン)

加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市内田端山越遺跡) 観察記録3Dモデルv2

撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」

撮影月日:2019.11.19


展示の様子

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 97 images

当初作成3Dモデル https://skfb.ly/oDICR

Kasori EIII type deep bowl (Uchidahayamakoshi site,Sakura City) Observation record 3D model

Location: Kasori Shell Mound Museum 2019 Special Exhibition "That's also E..." (Inba area edition)

Shooting date: 2019.11.19

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.513 processing 97 images

2 加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市内田端山越遺跡) 塗色版3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(佐倉市内田端山越遺跡) 塗色版3Dモデル

縄文施文域(緑色)と沈線(空色)、隆帯(赤色)を塗色

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和元年度企画展「あれもE これもE-加曽利E式土器(印旛地域編)-」

撮影月日:2019.11.19 


Photoshopによるテクスチャ画像塗色の様子

3DF Zephyr で生成 v6.513 processing 97 images

元3Dモデル https://skfb.ly/oDIEq

Kasori EIII type deep bowl (Uchidahayamakoshi site,Sakura City)  Painted version 3D model

Jomon patterned areas (green), grooved lines (sky blue), and ridges (red) are painted

Location: Kasori Shell Mound Museum 2019 Special Exhibition "That's also E..." (Inba area edition)

Shooting date: 2019.11.19

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.513 processing 97 images


塗色版3Dモデルの動画


塗色版3Dモデルの画像

3 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

4 メモ

この土器が典型的キャリパー形加曽利EⅡ式土器と似ている点、異なる点を次にピックアップしてみました。

この土器が典型的キャリパー形加曽利EⅡ式土器と似ている点

・器形がキャリパー形である。

・文様が口縁部と胴部の2段構成である。

・磨消縄文が垂下する。

この土器が典型的キャリパー形加曽利EⅡ式土器と異なる点

・口縁部文様帯に渦巻文が無い。

・口縁部文様帯の下限が「ヨコ一線」ではなく、崩れて段差ができている。

・口縁部に4単位の波状突起がついている。

・口縁部区画文の一部に隆帯が貼り付き、隆帯の一部は小突起に連続する。

・底部の径が小さくなっている。

加曽利EⅢ式土器には次の3種類の土器があると言われています。

キャリパー形土器

意匠充填系土器

横位連携弧線文土器

このうち意匠充填系土器と横位連携弧線文土器は加曽利EⅣ式土器に連続しますが、キャリパー形土器はEⅣ式まで続くとの情報にこれまで接していません。それで正しいのでしょうか?

また、加曽利EⅢ式期にキャリパー形土器と意匠充填系土器・横位連携弧線文土器は同じ集団で一緒に使われたのでしょうか、それとも使う集団が異なっていたのでしょうか?

加曽利EⅡ式→EⅢ式の変化について興味が深まってきました。


2023年2月5日日曜日

加曽利EⅢ式土器3Dモデルのリメイクと塗色版作成

 Kasori EIII pottery 3D model remake and painted version creation


I was interested in the Kasori EIII type deep bowl, which I created a 3D model three years ago, so I remade it and created a painted version to observe it. It makes me think about what it is called "EIII".


3年前に3Dモデルを作成した加曽利EⅢ式深鉢に興味が湧いたのでリメイクして塗色版を作成して観察しました。何をもって「EⅢ」というのか考えさせられます。

1 加曽利EⅢ式深鉢(酒々井町墨木戸遺跡) 観察記録3Dモデル v2 (リメイクバージョン)

加曽利EⅢ式深鉢(酒々井町墨木戸遺跡) 観察記録3Dモデル v2

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和元年度企画展「あれもE これもE-加曽利E式土器(印旛地域編)-」

撮影月日:2019.11.19 


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v6.513 processing 58 images

当初作成3Dモデル https://skfb.ly/oDEqE

Kasori EIII type deep bowl (Sumikido site,Shisui Town) Observation record 3D model

Location: Kasori Shell Mound Museum 2019 Special Exhibition "That's also E..." (Inba area edition)

Shooting date: 2019.11.19

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.513 processing 58 images

2 加曽利EⅢ式深鉢(酒々井町墨木戸遺跡) 塗色版3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(酒々井町墨木戸遺跡) 塗色版3Dモデル

縄文施文域と沈線を塗色

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和元年度企画展「あれもE これもE-加曽利E式土器(印旛地域編)-」

撮影月日:2019.11.19 


Photoshopによるテクスチャ画像塗色の様子

3DF Zephyr で生成 v6.513 processing 58 images

元3Dモデル https://skfb.ly/oDErW

Kasori EIII type deep bowl (Sumikido site,Shisui Town) Painted version 3D model

Jomon patterned areas and grooved lines are painted

Location: Kasori Shell Mound Museum 2019 Special Exhibition "That's also E..." (Inba area edition)

Shooting date: 2019.11.19

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.513 processing 58 images


塗色版3Dモデルの動画

3 GigaMesh Software Frameworkによる展開


塗色版3DモデルのGigaMesh Software Frameworkによる展開

4 観察

4-1 参考 一般的な加曽利E式土器変遷説明


一般的な加曽利E式土器変遷説明

加曽利貝塚博物館平成30年度企画展「あれもE・・・」パンフレットから引用

4-2 加曽利EⅢ式深鉢(酒々井町墨木戸遺跡)の特徴

加曽利EⅢ式深鉢(酒々井町墨木戸遺跡)の特徴を加曽利EⅡ式土器と似る点、異なる点に着目してピックアップしてみました。

加曽利EⅡ式土器に似る特徴

・器形がキャリパー形に近い。(復元胴部下部にわずかな膨らみが観察できる。)

・口縁部が平縁に近い。(しかし、詳しく観察すると極わずかの4単位波状である。)

・口縁部文様帯が楕円文で構成され、頸部との境は比較的明瞭

・口縁部文様帯に渦巻文残滓と思われる沈線カーブが認められる。

・磨消懸垂文を有する。

・口縁部と胴部で縄文施文方向が異なる。

・口縁部と胴部ともに沈線で区画をつくった後、縄文を施文している。(EⅡとEⅢの中間的特徴)

加曽利EⅡ式土器と異なる特徴

・口縁部文様帯、頸部無文帯、胴部文様帯の3段構成になっている。(EⅡとEⅢの中間的特徴の一つ?)

・頸部無文部と胴部文様帯との間は沈線で画され、上下区画がしっかりしている。(EⅡとEⅢの中間的特徴の一つ?)

・胴部の磨消懸垂文の中に上部が噴水のようにカーブする沈線(蕨文?)が垂下する。(EⅡとEⅢの中間的特徴)

・懸垂文を描く沈線が上端で連結し、弧状を呈する。(横位連携弧線文の萌芽?)

4-3 感想

加曽利EⅢ式深鉢(酒々井町墨木戸遺跡)の特徴は加曽利EⅡ式土器からEⅢ式土器へ移行する途中段階であることは誰の目にも明らかです。このような土器を加曽利EⅡ式新というのか、加曽利EⅡ式新~EⅢ古というのか、加曽利EⅢ式古というのか、それとも加曽利EⅢ式というのか、その命名基準に興味が湧きます。

有吉北貝塚における環状集落居住期と環状集落居住忌避期の境に加曽利EⅡ新とEⅢ古の境を対応させた新土器分類を念頭におくと、この土器は加曽利EⅡ式新に該当するように感じます。


2021年5月23日日曜日

有吉北貝塚北斜面貝層から出土した加曽利EⅢ式土器(紙上観察)

 縄文土器学習 611

前の記事で有吉北貝塚竪穴住居から出土した加曽利EⅢ式土器(第12群土器)の紙上観察を行いましたが、この記事では有吉北貝塚北斜面貝層出土加曽利EⅢ式土器(第12群土器)の紙上観察を行います。

1 第12群土器の例

1-1 キャリパー形土器

発掘調査報告書では当該期のキヤリパー形土器の特徴として、曲線的なキャリパー形の器形が崩れて直線的になること、口縁部文様帯と胴部文様帯の癒着が顕著であること、磨消懸垂文を描出する沈線が縄文施文帯の上部で逆のU字状に連結したり懸垂文が胴部中位で左右に連結して対弧状になる資料が出現すること、磨消懸垂文の幅広化が進んで縄文施文部と磨消部のどちらが懸垂文であるか明確でなくなること等を挙げています。


339

4単位の把手を有するもので、口縁部文様帯の渦巻文や区画文の配置が複雑になることによって文様帯下端が水平でなくなっており、胴部文様帯の磨消懸垂文や縄文が重複あるいは著しく接近して施されています。


343

磨消懸垂文の一部が左右に連結し、連結部が対弧状になっています。発掘調査報告書では「入組系横位連携弧線文土器と深い関連を持つ資料であろう」と記述しています。


参考 横位連携弧線文土器

1-2 口縁部文様帯が省略されたキャリパー形土器


355

胴部文様は一般的なキャリパー形土器と同様で、上端が逆Uの字状に連結している。口縁部に円形刺突列が2条と沈線1条が巡っています。

1-3 大木様式系土器


384

「口縁部文様帯は第10~11群キャリパー形土器とほぼ同じで、若干の頸部無文帯を介して渦巻文やパネル状の区画文、渦巻文等を組み合わせた胴部文様帯が存在する。大木8b式と思われる資料で、本来は第7群~11群の広い時期に対応するのであるが、便宜上ここに掲載した。」→第12群ではないということか?

1-4 鉢形土器及び有孔鍔付土器


392

鉢形土器。胴部文様帯は上端が逆Uの字状に連結した磨消懸垂文内に蕨手状の沈線が1条垂下している。

自分が「杖状文」とか「渦巻文(垂下文付)」などと呼んだ文様がここでは「蕨手状沈線」という名称で記述されています。蕨手の向きが1つだけ異なる事象がここでも観察できます。この事象は土器正面を表示するなどの機能があると推察します。

2021.05.20記事「杖状文と渦巻文(垂下文付)


395

有孔鍔付土器。「球状を呈する胴部に直立する口縁部が接続し、屈折部に2個1単位の孔を有する鍔が貼付されている。胴部に沈線による渦巻形を基本とする文様を描出し、文様内の一部にLRL複節縄文を充填している。」

2 メモ

2-1 波状沈線区画文土器出土がほとんどない

北斜面貝層から出土する加曽利EⅢ式土器のうち深鉢はキャリパー形土器と口縁部文様帯が省略されたキャリパー形土器が多くなっています。


有吉北貝塚北斜面貝層出土の主な加曽利EⅢ式土器

埼玉編年(1982)で加曽利EⅢ式を特徴づけるとされている2群土器(波状沈線区画文を基本とするもの)がほとんど出土しません。


埼玉編年 加曽利EⅢ式

有吉北貝塚集落の最後期が加曽利EⅢ式期であることから、キャリパー形土器が駆逐されて波状沈線区画文土器が盛行する前に集落が終焉したのかもしれません。そのあたりの様子を今後詳しく検討することにします。

343土器の説明で、磨消懸垂文の一部が左右に連結し、連結部が対弧状になっている様子を、発掘調査報告書では「入組系横位連携弧線文土器と深い関連を持つ資料であろう」と記述していることが、ヒントになるかもしれません。

2-2 意匠充填系土器の出土が北斜面貝層からほとんどない

竪穴住居からは意匠充填系土器が主に出土しました。

2021.05.22記事「有吉北貝塚竪穴住居から出土した加曽利EⅢ式土器(紙上観察)

ところが北斜面貝層から意匠充填系土器の出土はほとんどありません。この理由解明が今後の遺跡理解の糸口になるかもしれないと興味を持ちます。意匠充填系土器はその形状が大きく、日常の鍋料理ではなく大釜を必要とするような活動(大規模な調理、収穫物の多かった時の保存食作成、染色、植物繊維加工…)に使われた可能性を想像すると、その出土竪穴住居が集落から離れた縁辺にあることに何か意味があるかもしれません。

なお、395有孔鍔付土器に使われている渦巻文は意匠充填系土器につかわれている渦巻文とほぼ同じです。


意匠充填系土器


2021年5月22日土曜日

有吉北貝塚竪穴住居から出土した加曽利EⅢ式土器(紙上観察)

 縄文土器学習 610

この記事では有吉北貝塚竪穴住居から出土した加曽利EⅢ式土器(第12群土器)の紙上観察を行います。

1 第12群土器の特徴

第12群加曽利EⅢ~EIV式

埼玉編年のⅩⅢ~ⅩⅣ期に対応する。遺構数は極端に滅少し、遺物も少量が出土しているにすぎない。

加曽利EIV式の資料がほとんどみられないため両者を一括して第12群とした。キヤリパー形土器では、2段構成が崩れ、口縁部と胴部の両文様帯の癒着傾向が現れる。また、胴部文様帯の磨消懸垂文が幅広になって縄文施文帯との懸垂文効果が不明瞭になり、沈線が縄文施文帯の上端で逆Uの宇状に連結する例等も存在する。連弧文土器は消滅し、波線文土器や横位連繫弧線文土器と呼ばれる類型が出現するが、その出土量は少ない。

(有吉北貝塚発掘調査報告書から引用)

2 第12群土器の例


sb225-1

波状口縁部に文様帯はなく、胴部上部に大きな渦巻文が描かれています。


sb236-1

小型の土器で縄文施文部が懸垂文のようになり、口唇部で逆U字を呈します。


sb236-2

小さな波状があります。胴部上部に大きな渦巻が描かれている意匠充填系土器です。


sb236-4

波状口縁で口縁部はなく、大きな渦巻が胴部に描かれています。

3 渦巻について

竪穴住居から出土した加曽利EⅢ式土器は渦巻が胴部に大きく描かれる意匠充填系土器が多くなっています。しかし、発掘調査報告書の実測図及び写真では土器表面の1/3くらいしか詳細に観察できません。そこで、参考に加曽利貝塚博物館R2企画展展示の類似土器について展開写真をつくり、渦巻を並べて観察してみました。

3-1 加曽利EⅢ式深鉢(No.23)(船橋市新山貝塚)


3Dモデル画像


GigaMesh Software Framework展開写真に文様トレース

括れ部を境に文様が判れ、上段は渦巻文横方向につながっています。下段は渦巻文かもしれません。

3-2 加曽利EⅢ式深鉢(No.49)(柏市小山台遺跡)


3Dモデル画像


GigaMesh Software Framework展開写真に文様トレース

縄文が地、磨消が文様をつくる図となっています。括れ部で文様のテーマが異なり、上段は2つの渦巻文が繋がる文様が楕円区画文を挟んで展開しています。下段は中抜き楕円区画文と楕円区画文が展開しています。

3-3 加曽利EⅢ式深鉢(No.52)(流山市桐ケ谷新田第Ⅱ遺跡)


3Dモデル画像


GigaMesh Software Framework展開写真に文様トレース

括れ部を境に、上段は渦巻文が横位に連携して配置され、下段は垂下文が描かれます。渦巻文は口縁部小突起に併せて配置されています。

3-4 加曽利EⅢ式深鉢(No.64)(我孫子市鹿島前遺跡)


3Dモデル画像


GigaMesh Software Framework展開写真に文様トレース

括れ部を境に文様が2段にわかれますが、いずれも渦巻文が配置されます。観察できる範囲では上下段の渦巻文ともに2つの渦巻が繋がって描かれています。

3-5 メモ

GigaMesh Software Framework展開写真に文様トレースした例を見ると、胴部に大きく描かれた渦巻が単独で孤立しているものはありません。2つがペアになっているか、横位に次々につながっているかどちらかです。

また、上下段に渦巻が描かれるものもありますが、下段が垂下文あるいは区画文になっているものがあります。

これらの観察から、sb225-1、sb236-2、sb236-4の渦はいずれも横位に2つペアか、連続してつながっていたと考えます。

sb236-4は胴部下部の文様が垂下文である可能性が濃厚です。

【意匠充填系土器の渦巻文に関する問題意識メモ】

・渦巻が二つペアになっているものはいわゆるS字状文と同じ意義があるのではないかと考えます。2つの渦巻が結ばれる線がどのようなカーブを描くかというデザインはいろいろあり得ますが、2つの渦巻が結ばれるという原理の意味解読の方が重要です。

これまでの自分の空想では、水のネットワーク(泉のネットワーク…理想郷の環境)がS字状文や渦巻文連携の意味だと考えています。しかし、2つの渦が結ばれるというデザインはもっと深い意味があるに違いありません。今後じっくり思考していくことにします。土器に描かれた渦が豊かで新鮮な水が土器内部に注がれるという暗喩があるとすれば、2つの渦のうちもう1つの渦は土器内部から美味しい鍋料理が生まれ出るという別の暗喩があるかもしれません。土器内部と外部は別次元の世界で、それを結ぶ装置が渦模様である。(?)




2021年5月20日木曜日

加曽利EⅢ式深鉢(No.49)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 607

この記事では今年2月まで開催された加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」で展示された加曽利EⅢ式土器(No.49)を3Dモデルで観察します。

1 加曽利EⅢ式深鉢(No.49)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(No.49)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.09

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 51 images

展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 観察メモ

沈線をなぞってみると文様が良くわかるようになります。


沈線をなぞる

胴部の括れている部分で文様が二分されます。上部には2つの渦巻文がつながった大きな文様が2つ見え、おそらく波状頂部の間に対応して別に2つ存在していると推測します。二つの大きな渦巻文の意味はS字状文一般と同じ意味であると考えます。


加曽利EⅢ式深鉢(No.61)(流山市中野久木谷頭遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 605 

この記事では今年2月まで開催された加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」で展示された加曽利EⅢ式土器(No.61)を3Dモデルで観察します。

1 加曽利EⅢ式深鉢(No.61)(流山市中野久木谷頭遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(No.61)(流山市中野久木谷頭遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.16

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 49 images


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 観察メモ

沈線による垂下文の付いた渦巻文に興味を持ちます。次のような想像的感想が生まれました。

地中から吹き上がった湧泉が弧を描いて流れ落ちる様子という空間立体的な様子が土器表面に渦として表現されている。同時にその吹き上がった水が土器の内部に吸い込まれていくという空想的渦の様子が表現されている。

縄文人は渦を多義的な観点を込めて造形したと想像しました。


渦巻文(垂下文付)の塗色(沈線部分を塗色)

2021年5月19日水曜日

加曽利EⅢ式深鉢(No.64)(我孫子市鹿島前遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 604

この記事では今年2月まで開催された加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」で展示された加曽利EⅢ式土器(No.64)を3Dモデルで観察します。

1 加曽利EⅢ式深鉢(No.64)(我孫子市鹿島前遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(No.64)(我孫子市鹿島前遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.09

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 68 images


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 観察メモ

ア 文様の様子


文様の様子

隆帯を抜き書きしたものです。

隆帯2本で大きな渦巻を上段と下段に描出しています。観察できる範囲内では精緻なデザインプランに基づいて描いたというより、その場の勢いでどんどん描いた(隆帯を貼り付けた)という感じがします。隆帯が合流する部分などでは必ずしも合理的に処理されていません。

イ 土器分類

加曽利貝塚博物館で使う土器分類でいえば、意匠充填系土器に該当します。


意匠充填系土器

ウ 我孫子市湖北郷土資料室展示土器

この土器は2年前に我孫子市湖北郷土資料室で観覧した土器です。当時は土器分類知識ほとんどゼロであり、人にいわれるまま加曽利EⅠ式頃の土器と考えていました。2019.08.18記事「我孫子市湖北郷土資料室 縄文土器展示風景3Dモデル


2年前の我孫子市湖北郷土資料室におけるの加曽利EⅢ式深鉢(No.64)(我孫子市鹿島前遺跡)展示風景

加曽利EⅢ式深鉢(No.46)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 603

有吉北貝塚の加曽利EⅢ式土器学習の前段参考とするために加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」(~2021.02)で展示された加曽利EⅢ式土器を3Dモデルで幾つか観察します。この記事はその最初です。

1 加曽利EⅢ式深鉢(No.46)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅢ式深鉢(No.46)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2020.11.27

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 47 images


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 観察メモ

ア 文様の様子


文様の様子

埼玉編年(1982)のⅩⅢ期A類(7)に似ています。


埼玉編年(1982)ⅩⅢ期A類(7)

加曽利貝塚博物館で使う用語でいえば、その本質は入組系横位連携弧線文土器であるといえます。


横位連携弧線文土器

イ 杖状(C字型ステッキ状)文

胴下半部の楕円区画文の間に杖状(C字型ステッキ状)文が沈線で施文されています。

この文様は噴水(勢いよく吹き上がる湧水)を表現している文様であると、これまで考えて(想像して)きています。2019.08.18記事「加曽利EⅡ式把手付鉢の杖のような模様」等

ウ 杖状文(C字型ステッキ状文)の向き

この土器の杖状(C字型ステッキ状)文の上部の向きが右側3つ、左側1つとなっています。他の展示土器でも右側が多く、左側が2つ以上観察したものは、自分はありません。

土器全周の観察機会がないので不確かさの大きな推察ですが、杖状(C字型ステッキ状)文の上部の向きは1つが左側を、他の全部は右側を向いているという規則性がある可能性があります。左側を向いている杖状文の位置が当該土器の正面を表現しているのかもしれません。