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2025年2月26日水曜日

資料 遺物台帳の「出土貝層」と貝層断面図「分層貝層」との関係

Material: Relationship between the "excavated shell layer" in the artifact ledger and the "separate shell layer" in the cross-section of the shell layer


The relationship between the "excavated shell layer" in the artifact ledger and the "separate shell layer" in the cross-section of the shell layer for the pottery in the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound was clarified using a test grid. It was understood that the "separate shell layer" in each cross-section is independent and cannot be joined.


有吉北貝塚北斜面貝層の土器について、遺物台帳に記載されている「出土貝層」と貝層断面図の「分層貝層」との関係をテストグリッドで明らかにしました。断面毎の「分層貝層」は独立していて、接合できないことを理解しました。

1 遺物台帳の「出土貝層」と貝層断面図「分層貝層」との関係


遺物台帳の「出土貝層」と貝層断面図「分層貝層」との関係

テストグリッド(331グリッド)の遺物(土器・土製品)について、遺物台帳の「出土貝層」と貝層断面図「分層貝層」との関係を明らかにしました。

遺物台帳データの「出土貝層」記述は10断面分層体系に対応するものと11断面分層体系に対応するものに二分されます。

その二分されたデータは空間的にほぼ棲み分けし、10断面分層体系に対応するデータは10断面に近い空間に、11断面分層体系に対応するデータは11断面に近い空間に分布します。

また、10断面と11断面の分層体系は全く異なり、接合性や整合性はありません。

2 貝層断面図の分層貝層分布と対応土器の空間的分布との関係


10断面対応対応貝層出土土器の分布

10断面の分層貝層分布と対応土器を断面図にオルソ投影した空間的分布の関係をみると、その関連がよくありません。B-1層とC-2層では土器の分布が広がっていて、単一の分層貝層から出土した様子を汲み取ることができません。I層出土土器は断面図I層の場所から離れた場所に分布します。


11断面対応対応貝層出土土器の分布(と想定移動方向)

11断面における関係は10断面と異なり、土器分布と分層貝層分布がほぼ対応しています。

3 メモ その1

1と2の結果から、発掘作業は断面図に近い場所毎に独立した単位作業として行われ、そこで使われる分層体系は独立していることがわかりました。

それぞれの単位作業では、分層貝層を忠実に反映したデータを作成する場合もあれば、データを一括して特定の分層貝層に当てはめてしまう場合があることもわかりました。データを一括して特定の分層貝層にあてはめてしまうという簡易的な処理は、遺物台帳記載の仕方を見ると感じることができます。

そもそも、「分層された貝層」そのものが全て、縦断的・横断的に混土率・破砕率・貝種・層の色が漸移的に変化します。ある断面で「分層された貝層」を別の断面に接合しようとする行為自体が原理的にできないことであると考えます。

10断面の分層貝層と11断面の分層貝層を対比・接合させることはできないと考えます。

また、遺物台帳の「出土貝層」記述は正確な場合もあれば、信頼できない場合もあるということが資料を扱う上での感想になります。

4 メモ その2

発掘資料における(必要以上に詳細な)分層を離れて、例えば貝層断面写真から新たに自分で全体を鳥瞰すれば、別次元の貝層対比・対応・空間的連続性を見つけられる可能性は否定できません。斜面貝層に視点を物理的に近づけしすぎると、見えるものも見えなくなる可能性があります。


2023年5月27日土曜日

オブジェクト(例 貝層断面図)をBlenderにインポートして正置させるBlenderPythonスクリプト

 A Blender Python script that imports an object (e.g. shell layer cross section) into Blender and orients it correctly


I created a BlenderPython script that imports an object (e.g. shell layer cross section) into Blender and orients it in 3D space. With this script and object files, I'm ready to build a Blender file. There is no need to use the Blender file as the original, which improves work efficiency.


オブジェクト(例 貝層断面図)をBlenderにインポートして3D空間に正置させるBlenderPythonスクリプトを作成しました。このスクリプトとオブジェクトファイルがあれば、いつでもBlenderファイルを構築できます。Blenderファイルを原簿とする必要がなく、作業効率が向上します。

1 例 第2貝層断面図


オブジェクト(第2貝層断面図)がBlender3D空間に配置されている様子


オブジェクト(第2貝層断面図)のBlender3D空間における位置・回転・スケール諸元

2 オブジェクト(第2貝層断面図)をインポート・正置させるスクリプト


オブジェクト(第2貝層断面図)をBlenderにインポートし正置させるスクリプト

……………………………………………………………………

# 平面画像オブジェクトをインポートして位置の移動、回転、拡大縮小させて、正置させる。

import bpy

import math

bpy.ops.wm.obj_import(filepath="I:\\20221214有吉北貝塚北斜面貝層プロジェクト\\■貝層断面図等Pythonによるプロット\\20230525Pythonスクリプト基礎検討\\2o4a-01eee.obj", directory="I:\\20221214有吉北貝塚北斜面貝層プロジェクト\\■貝層断面図等Pythonによるプロット\\20230525Pythonスクリプト基礎検討\\", files=[{"name":"2o4a-01eee.obj", "name":"2o4a-01eee.obj"}], forward_axis='X', up_axis='Z')

# 現在選択されているオブジェクトを取得します。

selected_objects = bpy.context.selected_objects

# 選択されたオブジェクトを拡大縮小します。

for obj in selected_objects:

obj.scale[0] = 0.1

obj.scale[1] = 0.1

# 選択されたオブジェクト(の原点)を移動します。

for obj in selected_objects:

obj.location[0] = 10.182

obj.location[1] = 4

obj.location[2] = 5.1797

# 選択されたオブジェクトを回転します。

for obj in selected_objects:

obj.rotation_euler[0] = math.radians(90)

obj.rotation_euler[2] = math.radians(0)

# オブジェクトを原点へ移動。(過去の操作でオブジェクトの原点が移動している場合があるので、それを補正するためのスクリプト。)

bpy.ops.object.origin_set(type='GEOMETRY_ORIGIN', center='MEDIAN')

……………………………………………………………………

3 オブジェクト(第2貝層断面図)のBlenderインポートと正置


オブジェクト(第2貝層断面図)のBlenderインポートと正置の様子

4 感想

4-1 情報パネルに表示されるPythonスクリプトの逆引き的活用

BlenderPythonスクリプトを書くために情報パネルに表示されるPythonスクリプトを逆引き的に利用できることに気が付きました。

Blenderで行う操作は全て情報パネル(Scripting画面におけるPythonコンソールの下)にPythonスクリプトとして記録されます。従って、書きたいスクリプトの操作をBlenderで行えば、そのスクリプトを得ることができます。とても便利です。これを利用することによりスクリプト作成の高い敷居がとても低くなりました。


BlenderのScripting画面における情報パネル

4-2 オブジェクトのインポート・正置BlenderPythonスクリプトの意義

オブジェクト(例 貝層断面図)をBlenderにインポートして3D空間に正置させるBlenderPythonスクリプトを今回作成しました。このスクリプトとオブジェクトファイルがあれば、いつでもBlenderファイルを構築できます。従って、Blenderファイルを原簿とする必要がなくなります。有吉北貝塚北斜面貝層に関する学習活動では多数のBlenderファイルを作成してきていて、その管理が大変面倒になってきています。しかし今回のスクリプトとオブジェクトファイルがあればBlenderファイルを構築できることにより、原簿をオブジェクトファイルとすることができ、煩雑なBlenderファイル管理がなくなり、活動効率が向上します。

4-3 つかまり立ちレベル

自分のPython・BlenderPython学習レベルを幼児発達に例えると、ようやくつかまり立ちができるレベルに到達できたといううれしい状況です。まだヨチヨチ歩きは無理という感じですが、はやくそうなりたいです。



2021年8月6日金曜日

貝層断面図の面積測定 2

 縄文社会消長分析学習 120

有吉北貝塚北斜面貝層の貝層断面図について貝層分類別に面積測定しています。この記事では第2断面~第15断面(横断面)の面積測定結果を眺めてみます。

1 面積測定結果


有吉北貝塚北斜面貝層断面別 貝層区分別断面積(㎡)

2 貝層区分別断面積(㎡)


北斜面貝層横断面別 貝層区分別断面積(㎡)

純貝層と混土貝層(混土率50%まで)は大局的にみて第2断面から第12断面の方向(上流→下流の方向)にその断面積を拡大するように観察できます。一方、混貝土層(混土率50%以上)は第2断面から第12断面の方向でみてあまり変化しません。一定の値に近いような印象を受けます。なお、純貝層+混土貝層+混貝土層の合計値は第2断面から第12断面の方向で拡大します。

断面積の値(結局は体積の値)の挙動が、混貝土層と純貝層・混土貝層とでは異なることに大きな問題意識が生まれます。

投棄された貝は下流で多かったといえます。また、上流では混貝土層が「異状に多い」といえます。

3 貝層断面図での確認

代表的断面として第2、第6、第11断面をとりあげ、観察します。


第2断面


第6断面


第11断面

全ての断面で貝層の最下層が混貝土層になっています。また第1断面図(縦断図)の最上流部を見ると次図のように混貝土層が谷頭部侵食地形を充填しています。


第1断面図(縦断面図)谷頭部の様子と所見

4 メモ

これらの事象から混貝土層のほとんどは縄文人が意図して生成した物質(材料)である可能性が濃厚であると考えます。つまり、純貝層や混土貝層から自然営力で貝殻と土が混ざって混貝土層ができたのではなく、混貝土層という物質(材料)を初めから意図して生成して、それを貝塚形成の最初時期に一斉に北斜面に隈なく配置したと考えることが合理的です。

現時点ではガリー侵食が急拡大して集落立地が危機にさらされたので、貝殻を砕いて土と混ぜそれをガリー侵食谷斜面に広域配置し、それによって地形侵食を弱めたのだと考えています。混貝土層の全面配置の後に、貝殻を下流部を中心に投棄して、結局ガリー侵食地形を全部埋め立てたというストーリーが考えられます。



2021年8月2日月曜日

貝層断面図の面積測定 1

 縄文社会消長分析学習 118

有吉北貝塚北斜面貝層の貝層断面図について貝層分類別に面積測定しています。この記事では第1断面(縦断面)の面積測定結果を眺めてみます。

1 第1断面(縦断面)とその位置


第1断面(縦断面)(illustrator作業図)


第1断面(縦断面)の位置

2 面積測定結果

2-1 貝層別断面積


貝層別断面積

純貝層、混土貝層、混貝土層、砂層、土層の5区分では混貝土層の断面積が最も大きくなっています。

貝層(純貝層、混土貝層、混貝土層)とそれ以外(砂層、土層)は次のように、全体の約6割が貝層になります。


貝層、砂層・土層別割合

2-2 貝と土・砂別にみた断面積

2021.07.28記事「混土貝層・混貝土層の成因 その2」で、貝層別分類の混土率の平均値を求めました。


貝層分類別の混土率・破砕率の平均値

この貝層分類別混土率平均値を原単位として使い、純貝層、混土貝層、混貝土層という区分を貝層中の貝、貝層中の土という区分に変換しなおしてみました。その結果をグラフにすると次のようになります。


貝と土・砂の断面積(実面積)

貝層を取り上げると、貝と土の断面積は拮抗しています。大雑把にみれば、貝殻1単位を廃棄するとほぼ同量の1単位の土が混ざりこむことになります。自然の営力でそれほど大量の土が供給される仕組みが考えづらいとすれば、少なくとも土の一部は縄文人が持ち込んだことになります。混土貝層、混貝土層の土がもともと存在していた場所とその移動の仕組みを詳しく検討することが必要です。


貝と土・砂の断面積(割合)

貝と土・砂という2分で全体の断面積の割合を求めるとおおよそ貝の断面積の割合は全体の1/3になります。

3 メモ

北斜面貝層は後年の撹乱の影響を受けていない、プライマリーな貝層です。縄文人がつくった貝層がそのまま出土した珍しい貝層です。その貝層の全体像イメージを15葉ある貝層断面図の断面積分析から得ることにします。この記事では全体像を知る予察的作業として縦断図の分析をしました。

4 面積測定法

第1断面(縦断面)(illustrator作業図)→2m×2m図形を書き込みpsdファイル出力→psdファイルをPhotoshopで読み込む→Photoshopで当該オブジェクトを範囲指定しヒストグラムの全ピクセル数値を知る。2m×2m図形の全ピクセル数値を使って当該オブジェクト全ピクセル数値を㎡数値に換算する。


psdファイル

赤四角は2m×2mの図形

2021年7月17日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層断面図の学習について

 縄文社会消長分析学習 113

有吉北貝塚発掘調査報告書には北斜面貝層断面図が全部で15図掲載されていて、その内訳は縦断面図1枚、横断面図14枚です。横断面図4枚には詳細な観察記録が付いています。この貝層断面図を詳細に分析して見ることにします。この記事では縦断面図1枚と詳細観察記録のある横断面図4枚を観察して、直観レベルの感想をメモして、自分が何に興味を持っているのか意識してみるとともに、これからの作業を企画します。

1 北斜面貝層主要断面図観察から浮かぶ感想


北斜面貝層主要断面図

ア 混貝土層の形成の仕方

縦断面図左端(ガリー谷頭付近)では次のように、貝層形成直前は切り立った侵食面が、貝層形成後は混貝土層による空間充填が観察できます。これから、混貝土層は縄文人が貝殻をばら撒いて、一方斜面上方から土が崩れ落ちてきて、それらが混ざりあってできたと一つの考えが浮かびます。


混貝土層の出来方

しかし、それほど多量の土が上方斜面から好都合に落ちてくるものであるのか、自分には大きな疑問となります。

縄文人が貝殻を撒いたことは確実です。一方その場所に土が移動してきたことも確実です。

自分はその土の移動に縄文人が意図的にかかわっているのではないだろうかと疑っています。

横断面6、11における左岸斜面の混貝土層も同様に土の供給に縄文人がかかわっている可能性を検討し、否定なり肯定なりの判断をしなければなりません。

イ 遺物多出層準としての混貝土層

遺物が多出する層準が混貝土層であり、純貝層からの遺物出土は少なくなっています。この事象をデータで確かめるとともに、その理由について知る必要があります。

ウ 大局地層変化の意味

北斜面貝層の大局地層変化は下から混貝土層→混土貝層→純貝層という順番になっています。なぜ最初に混貝土層が形成されるのか、その意味を探りたいと思います。

エ 土層、砂層について

土層、砂層堆積の背後に縄文人による土層、砂層移動というかかわりがあるのか、ないのか検討を深め結論を得ることにします。

2 今後の作業

ア 基礎情報として断面別に混貝土層・混土貝層・純貝層・土層・砂層等項目別面積を求めます。それから斜面貝層全体の項目別容積の分布を推計します。

イ アの結果から断面別に貝殻量と土・砂量の比を求め、その分布について分析します。

ウ 近隣貝塚の斜面貝層断面図を収集し、有吉北貝塚北斜面貝層断面図と比較してみます。

3 メモ

一言でいうならば、北斜面貝層とは単純に貝殻を捨てた場所ではなく、貝殻を捨てる行為を軸に展開された人工埋め立て活動現場であると作業仮説しています。この作業仮説を肯定できるか、否定できるか決着させて結論を得たいと希望しています。