2021年8月6日金曜日

貝層断面図の面積測定 2

 縄文社会消長分析学習 120

有吉北貝塚北斜面貝層の貝層断面図について貝層分類別に面積測定しています。この記事では第2断面~第15断面(横断面)の面積測定結果を眺めてみます。

1 面積測定結果


有吉北貝塚北斜面貝層断面別 貝層区分別断面積(㎡)

2 貝層区分別断面積(㎡)


北斜面貝層横断面別 貝層区分別断面積(㎡)

純貝層と混土貝層(混土率50%まで)は大局的にみて第2断面から第12断面の方向(上流→下流の方向)にその断面積を拡大するように観察できます。一方、混貝土層(混土率50%以上)は第2断面から第12断面の方向でみてあまり変化しません。一定の値に近いような印象を受けます。なお、純貝層+混土貝層+混貝土層の合計値は第2断面から第12断面の方向で拡大します。

断面積の値(結局は体積の値)の挙動が、混貝土層と純貝層・混土貝層とでは異なることに大きな問題意識が生まれます。

投棄された貝は下流で多かったといえます。また、上流では混貝土層が「異状に多い」といえます。

3 貝層断面図での確認

代表的断面として第2、第6、第11断面をとりあげ、観察します。


第2断面


第6断面


第11断面

全ての断面で貝層の最下層が混貝土層になっています。また第1断面図(縦断図)の最上流部を見ると次図のように混貝土層が谷頭部侵食地形を充填しています。


第1断面図(縦断面図)谷頭部の様子と所見

4 メモ

これらの事象から混貝土層のほとんどは縄文人が意図して生成した物質(材料)である可能性が濃厚であると考えます。つまり、純貝層や混土貝層から自然営力で貝殻と土が混ざって混貝土層ができたのではなく、混貝土層という物質(材料)を初めから意図して生成して、それを貝塚形成の最初時期に一斉に北斜面に隈なく配置したと考えることが合理的です。

現時点ではガリー侵食が急拡大して集落立地が危機にさらされたので、貝殻を砕いて土と混ぜそれをガリー侵食谷斜面に広域配置し、それによって地形侵食を弱めたのだと考えています。混貝土層の全面配置の後に、貝殻を下流部を中心に投棄して、結局ガリー侵食地形を全部埋め立てたというストーリーが考えられます。



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