2021年7月28日水曜日

混土貝層・混貝土層の成因 その2

 縄文社会消長分析学習 117

2021.07.28記事「混土貝層・混貝土層の成因」のつづきです。有吉北貝塚発掘調査報告書掲載北斜面貝層貝層断面図における貝層区分を統計分析しています。

1 混土率

貝層区分は54ありますが、その混土率を20%刻みで見てみました。


貝層区分における混土率の分布

混土率0%から99%までの推移が滑らかではありません。21~40%が凹み、41~60%が出っ張ります。もし、貝層の全部の出発点が混土率0%であり、それが様々な自然営力で周辺の土と混ざる理想的な過程を仮定するならば、このグラフはもっとなめらかなカーブを描くはずです。混土率41~60%以上のものの中には自然営力で形成されたのではなく、人工的に形成されたものがふくまれているのかもしれません。つまり縄文人が意図的に貝と土を混ぜた可能性について検討することが必要です。

2 破砕率

貝層中の貝殻の破砕率を20%刻みで見てみました。


貝層区分における破砕率の分布

破砕率グラフの推移が滑らかではありません。60~79%が飛び出ています。もし貝殻が使われた後そのまま捨てられて、その破砕率が~19%に収まっていたとします。それが自然営力で破砕され破砕率が大きいものも生まれるに違いありません。そうした状況を考えると、このグラフは大数の法則からしてもっと滑らかになるはずです。しかし、現実には破砕率60~79%が突出します。破砕率60~79%とそれ以上のものについては縄文人が貝殻を意図して破砕して北斜面貝層に持ち込んだ可能性が推定できます。

3 混土貝層・混貝土層の土の色相


混土貝層・混貝土層の土の色相


混土貝層・混貝土層の土の色相

土の色相は黒色土、黒褐色土、暗褐色土の3つがメインとなっています。これらの色相の違いはそれぞれが異なる環境のもとで堆積したという情報を内蔵している可能性があり、分析的に検討する価値があると考えます。特に黒色土についてはその地層が地面であった当時植物が繁茂していた可能性を強く暗示します。また黒色土11のうち9はローム粒を含むと注記されています。また炭化物を含むと注記されているものも2つあります。これらの情報から黒色土は縄文人が意図して破砕貝と(破砕貝に付着する)有機物と土壌(ローム)を混ぜて、植物が繁茂した場所である可能性を仮説することが出来そうです。

4 メモと感想

1~3の思考結果を画像にメモすると次のようになります。


画像メモ

これまで破砕貝と土と混ぜると土が締まり、ガリー侵食防止効果が生まれます。そうした防災上の観点から貝層が形成されたと仮説しています。同時に、黒色土が混土貝層・混貝土層に含まれているということは貝層形成時に、その場所に植物が繁茂していたことを指し示しているといえます。植物が地表をカバーすれば、ガリー侵食は治まりますから、さらに防災上の機能が増します。

同時に、貝塚で繁茂した植物の中に栽培植物があったのか、なかったのか大いに気になるところです。

5 参考

貝層分類別に混土率、混貝率の平均値をもとめると次のようになります。


貝層分類別の混土率・破砕率の平均値

今後の作業で、貝層分類別の情報だけの断面図から混土率や破砕率を使って作業する場合の原単位として使うことにします。


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