2018年7月18日水曜日

住居壁の有る竪穴住居と無い竪穴住居

2018.07.17記事「住居壁が最初から無い竪穴住居存在の可能性」で台地平面上の住居壁のない竪穴住居は、発掘調査報告書が記述するように「後世の削平」で住居壁が失われたものではなく、最初から住居壁が無かったものであるとの仮説を持つことができました。
この記事で例として検討したJ57竪穴住居(住居壁あり)とJ100竪穴住居(住居壁なし)についてより具体的にデータを観察して、住居壁がある場合とない場合の条件の違いを考えてみました。

J57竪穴住居とJ100他の位置 素地図は大膳野南貝塚発掘調査報告書による

1 J57竪穴住居

J57竪穴住居 大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用・加筆
建物敷地(幅約6m)に比高30㎝の土地高低差があり、その高低差を全部利用して竪穴住居を建設しています。土地傾斜(東北東-西南西)の方向と張出部方向が一致しているように考えられます。張出部付近では高さが確保できないので住居壁は消失します。
住居壁を設けることによって家内温度変化が緩和され夏涼しく冬暖かくなると考えられます。また屋根の高さを低めることができますから風に強い、つまり災害に強い家にすることができます。
この竪穴住居は土地高低差を全部住居壁に使ってしまったため、床面傾斜を確保できていません。従って雨天の際の水はけは悪かったことが考えられます。

2 J100竪穴住居

J100竪穴住居 大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用・加筆
建物敷地(幅約5.5m)に比高20㎝の土地高低差があり、その高低差を住居壁には全く使わず全て床面傾斜に使った住居であると考えます。雨天時の水はけ機能は確保できますが、住居壁がないので家内温度変化が激しく、また屋根が地面から全部立ち上がるので風に弱い家だったと考えられます。張出部方向は土地傾斜方向と略一致するように等高線との関係から想定できます。

3 考察
3-1 住居壁有無の条件
J57竪穴住居では家敷地にある30㎝の高低差を利用して竪穴(住居壁)を掘っています。一方J100竪穴住居では家敷地にある20㎝の高低差を床面傾斜に使い竪穴(住居壁)を掘っていません。家敷地における土地高低差が少なくとも30㎝はないと竪穴(住居壁)を掘る意味はないと縄文人は考えていたのかもしれません。
土地の高低差を住居壁高さと床面傾斜にどのように配分したか、発掘調査報告書のデータを詳しく分析することが可能ですから、住居壁有無と土地傾斜の関係や縄文人が最も好んだ土地傾斜と住居壁高さ・床面傾斜の関係などを今後知ることができそうです。

3-2 張出部方向の意味
J57竪穴住居、J100竪穴住居ともに張出部方向は土地傾斜の方向であり、かつ床面傾斜の方向であると考えられます。張出部方向が祭祀信仰・社会関係との関係ではなく、住居立地条件としての土地傾斜(=床面傾斜=排水方向)として捉えるべき指標である可能性が強まりました。発掘調査報告書のデータを詳しく分析すれば、張出部方向の意味が詳しく分る可能性が濃厚です。また逆に張出部方向から縄文時代微地形復元ができる可能性も浮上します。

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