2026年5月12日火曜日

有吉北貝塚と加曽利貝塚との比較 ファブリック分析(テスト分析6)

 Comparison of Ariyoshi Kita Shell Mound and Kasori Shell Mound: Fabric Analysis (Test Analysis 6)


This paper compares the fabric analysis (test analysis) of exfoliated sections from the Ariyoshi Kita Shell Mound and the Kasori Shell Mound, summarizing the results and noting down observations. The goal of fabric analysis is to infer the behavior of shells immediately before final deposition from indicators such as shell posture.


有吉北貝塚と加曽利貝塚の剥取断面ファブリック分析(テスト分析)を比較して、その結果をまとめるとともに感想をメモしました。ファブリック分析の目標は貝殻最終堆積直前の挙動を貝殻姿勢等の指標から推察することです。

1 剥取断面におけるテスト空間の場所

1-1 有吉北貝塚北斜面貝層


剥取断面の平面位置


ファブリック分析テスト空間の場所

test2、test1の2ヶ所(各24㎝×24㎝)

加曽利EⅡ式古段階土器出土層(縄文時代中期)

1-2 加曽利貝塚南貝塚


剥取断面の平面位置

剥取断面観覧施設通路西側断面から剥ぎ取った断面(反転した断面を通路東側に設置)


ファブリック分析テスト空間の場所

test1の1ヶ所(24㎝×24㎝)

test1は貝層のブロック1に該当(縄文時代後期)

2 テスト空間の剥取断面3Dモデル画像


テスト空間の剥取断面3Dモデル画像

3枚の画像を並べて観察したところ、次の思考が生まれましたので、メモします。

2-1 二枚貝の大きさ

有吉北貝塚test2<有吉北貝塚test1<加曽利貝塚test1の関係で二枚貝形状が大きくなっています。今回テスト分析では二枚貝の大きさを計測していませんが、次回からは次の方法で計測することにします。

二枚貝大きさの計測方法…画像ではなく、剥取断面3Dモデル(3DF Zephyr Lite)から二枚貝長軸方向長さを直接計測する。(3Dモデルは実寸法を付与してあります。)

2-2 貝種

今回テスト分析では貝種について検討していません。3Dモデルから貝種を特定できるよう取組むことにします。

2-3 二枚貝の完形貝比率

有吉北貝塚北斜面貝層test2、test1は斜面上方から移動してきたもので、test1の方がtest2より移動量が大きいと考えられます。この移動量を反映して、二枚貝の完形貝比率が違うかどうか、今後詳しく調査することにします。予備解釈では高濃度流堆積の特徴として、斜面上方(test2)では二枚貝完形貝比率が小さく、斜面下部(test1)では二枚貝完形貝比率が大きくなると想定します。

有吉北貝塚と加曽利貝塚を較べると、加曽利貝塚の方が二枚貝完形貝比率が圧倒的に大きくなっています。

今後データを再集計して分析することにします。

2-4 イボキサゴ純貝層について

加曽利貝塚ではテスト空間中央部にイボキサゴ純貝層のような状況が観察できます。これはこの場所にイボキサゴだけを「ジャラジャラ」と籠から捨てて堆積し、それを観察しているのだと考えます。

一方、有吉北貝塚では剥取断面の枠外のはるか上方の台地面からイボキサゴが投棄され、それが斜面をほかの投棄物と一緒に移動するので、イボキサゴ純貝層のような状況はほとんど観察されないようです。貝層を巻き込む高濃度流は大きなものを選別して先頭部に集中させる特性があるので、二枚貝の純貝層は斜面最下部に形成されます。

3 二枚貝の分布


二枚貝の分布 上段はヒートマップ

別途検討されている貝層分層と二枚貝殻の分布(ヒートマップ)は相関すると考えられますが、今回テスト空間(24㎝×24㎝のコドラート)は狭いのでその検討意義は大きくありません。コドラートの特性を示す指標として、密集二枚貝率(密集している二枚貝殻(例 ヒートマップの赤域にある二枚貝殻)の全貝殻に対する割合)などの指標を開発することは考えられます。

4 二枚貝偏位角


二枚貝偏位角

二枚貝偏位角データはテスト空間の二枚貝堆積環境の特徴をよく表現しています。

有吉北貝塚test2は斜面途中の貝層の空間で偏位角は斜面傾斜に近い角度が多くなっています。有吉北貝塚test1は斜面貝層が地面にぶつかって移動停止した貝層の空間ですが、ここの偏位角は様々な角度のものが混ざっています。このデータは斜面を下ってきた二枚貝殻が衝突により撹乱されて停止した様子を表現していると考えます。

加曽利貝塚test1は台地平面の貝殻投棄場所に二枚貝殻が投棄された様子を表現していて、偏位角は水平に近いものが多くなっています。

5 二枚貝殻位(上凸・下凸)


二枚貝殻位(上凸・下凸)

上凸殻位より下凸殻位の方が安定するので、二枚貝殻が流動から停止する場面(回転をともなう混合現象の場面)では下凸殻位が増えると想定します。従って、下凸殻位率はその場所の二枚貝殻堆積状況の一つの指標になると考えられます。調査区(コドラート)単位でみると下凸殻位率は次の通りです。

調査区、下凸殻位率

有吉北貝塚北斜面貝層test2、53.3%

有吉北貝塚北斜面貝層test1、63.5%

加曽利貝塚南貝塚test1、55.6%

下凸殻位密集(赤)と上凸殻位密集(青)分布図は二枚貝殻が最終堆積する直前の挙動を表現している可能性があります。有望な指標として今後詳しく検討することにします。

6 二枚貝配向(偏位角・殻位・密集ヒートマップ)


二枚貝配向(偏位角・殻位・密集ヒートマップ)

加曽利貝塚test1では密集ヒートマップの赤色部分と下凸殻位が対応するように観察できます。二枚貝殻の堆積直前の二枚貝殻の挙動を表現しているものと推察します。

有吉北貝塚では二枚貝殻が最終堆積する直前の挙動パターンが幾つかあり、それをこの配向図から読み取ることが可能であると考えますが、その検討はデータをもっと増やしてから行うことにします。

7 メモ

有吉北貝塚北斜面貝層二ヶ所と加曽利貝塚南貝塚一ヶ所合計三ヶ所だけの極限定空間のファブリック分析テスト分析を行いまいしたが、手ごたえを感じる活動となりました。

特に加曽利貝塚南と比較することによって、本命である有吉北貝塚北斜面貝層の貝層最終堆積直前の貝殻挙動を推察することが可能であるという感触を得ました。

次の指標に着目してファブリック分析の本分析を行うことにします。

・二枚貝密集性

・二枚貝偏位角

・二枚貝殻位


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