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2026年5月13日水曜日

有吉北貝塚と加曽利貝塚の土器破片出土姿勢の比較 ファブリック分析(テスト分析7)

 Comparison of the Orientation of Pottery Fragments Excavated from Ariyoshi Kita Shell Mound and Kasori Shell Mound: Fabric Analysis (Test Analysis 7)


I compared the orientation of pottery fragments excavated from Ariyoshi Kita Shell Mound and Kasori Shell Mound. Significant differences were found between the two, increasing the likelihood of the high-concentration flow mechanism considered in the shell layer on the northern slope of Ariyoshi Kita Shell Mound.


有吉北貝塚と加曽利貝塚の土器破片出土姿勢を比較してみました。両者には顕著な違いがあり、有吉北貝塚北斜面貝層で考える高濃度流メカニズムの蓋然性が高まります。

1 加曽利貝塚南貝塚剥取断面における土器破片出土姿勢


加曽利貝塚南貝塚剥取断面における土器破片出土姿勢

土器破片出土姿勢を上凸姿勢(青)と下凸姿勢(赤)に二分して、その分布を表現しました。姿勢の観察は3Dモデルで行いました。

上凸姿勢が14、下凸姿勢が12となります。下凸姿勢率は46.2%になります。

2 有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面における土器破片出土姿勢


土器破片出土姿勢調査範囲


有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面における土器破片出土姿勢

上凸姿勢が3、下凸姿勢が20、不明が6となります。姿勢の観察は3Dモデルで行いました。不明を除いて集計すると、下凸姿勢率は87.0%になります。

2026.03.09記事「有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面 土器破片凸面方向分布図

3 有吉北貝塚北斜面貝層の土器集中ゾーン露頭断面における土器破片出土姿勢


有吉北貝塚北斜面貝層の土器集中ゾーン露頭断面における土器破片出土姿勢

80%の土器が下凸出土姿勢を見せています。下凸姿勢率は80%です。

2026.02.26記事「土器集中ゾーンにおけるファブリック観察

4 有吉北貝塚北斜面貝層の土器集中ゾーン平面図から読み取れる土器破片出土姿勢


有吉北貝塚北斜面貝層の土器集中ゾーン平面図から読み取れる土器破片出土姿勢

平面図の色別面積を計測すると、上凸姿勢が23%、下凸姿勢が77%となります。下凸姿勢率は77%です。

2026.02.26記事「土器集中ゾーンにおけるファブリック観察

5 下凸姿勢率の比較


下凸姿勢率の比較

加曽利貝塚剥取断面の下凸姿勢率は46.2%であり、下凸姿勢と上凸姿勢の差はあまりありません。加曽利貝塚は平坦面に貝塚がつくられたので、そこに投棄された土器破片は投棄された時の状況がそのまま表現されていると考えられます。投棄された土器破片は移動や回転などの変化に見舞われることはほとんどない状況で堆積したものと考えられます。縄文人が投棄した土器破片は下凸姿勢と上凸姿勢がほぼ半々で堆積したと考えます。

一方、有吉北貝塚の下凸姿勢率は剥取断面で87%、土器集中ゾーン露頭で80%、土器集中ゾーン平面図で77%になります。加曽利貝塚のデータとは全く異なります。

有吉北貝塚の下凸姿勢率が高いのは縄文人が投棄した時の状況ではなく、投棄された土器破片が高濃度流で運ばれ、その過程で土器破片が回転して安定的な姿勢(下凸姿勢)のものが増えたからと考えることができます。

加曽利貝塚と有吉北貝塚の土器破片下凸姿勢率の比較から、有吉北貝塚北斜面貝層が高濃度流メカニズムで形成されたとする予備解釈の蓋然性が高まりました。


2026年5月12日火曜日

有吉北貝塚と加曽利貝塚との比較 ファブリック分析(テスト分析6)

 Comparison of Ariyoshi Kita Shell Mound and Kasori Shell Mound: Fabric Analysis (Test Analysis 6)


This paper compares the fabric analysis (test analysis) of exfoliated sections from the Ariyoshi Kita Shell Mound and the Kasori Shell Mound, summarizing the results and noting down observations. The goal of fabric analysis is to infer the behavior of shells immediately before final deposition from indicators such as shell posture.


有吉北貝塚と加曽利貝塚の剥取断面ファブリック分析(テスト分析)を比較して、その結果をまとめるとともに感想をメモしました。ファブリック分析の目標は貝殻最終堆積直前の挙動を貝殻姿勢等の指標から推察することです。

1 剥取断面におけるテスト空間の場所

1-1 有吉北貝塚北斜面貝層


剥取断面の平面位置


ファブリック分析テスト空間の場所

test2、test1の2ヶ所(各24㎝×24㎝)

加曽利EⅡ式古段階土器出土層(縄文時代中期)

1-2 加曽利貝塚南貝塚


剥取断面の平面位置

剥取断面観覧施設通路西側断面から剥ぎ取った断面(反転した断面を通路東側に設置)


ファブリック分析テスト空間の場所

test1の1ヶ所(24㎝×24㎝)

test1は貝層のブロック1に該当(縄文時代後期)

2 テスト空間の剥取断面3Dモデル画像


テスト空間の剥取断面3Dモデル画像

3枚の画像を並べて観察したところ、次の思考が生まれましたので、メモします。

2-1 二枚貝の大きさ

有吉北貝塚test2<有吉北貝塚test1<加曽利貝塚test1の関係で二枚貝形状が大きくなっています。今回テスト分析では二枚貝の大きさを計測していませんが、次回からは次の方法で計測することにします。

二枚貝大きさの計測方法…画像ではなく、剥取断面3Dモデル(3DF Zephyr Lite)から二枚貝長軸方向長さを直接計測する。(3Dモデルは実寸法を付与してあります。)

2-2 貝種

今回テスト分析では貝種について検討していません。3Dモデルから貝種を特定できるよう取組むことにします。

2-3 二枚貝の完形貝比率

有吉北貝塚北斜面貝層test2、test1は斜面上方から移動してきたもので、test1の方がtest2より移動量が大きいと考えられます。この移動量を反映して、二枚貝の完形貝比率が違うかどうか、今後詳しく調査することにします。予備解釈では高濃度流堆積の特徴として、斜面上方(test2)では二枚貝完形貝比率が小さく、斜面下部(test1)では二枚貝完形貝比率が大きくなると想定します。

有吉北貝塚と加曽利貝塚を較べると、加曽利貝塚の方が二枚貝完形貝比率が圧倒的に大きくなっています。

今後データを再集計して分析することにします。

2-4 イボキサゴ純貝層について

加曽利貝塚ではテスト空間中央部にイボキサゴ純貝層のような状況が観察できます。これはこの場所にイボキサゴだけを「ジャラジャラ」と籠から捨てて堆積し、それを観察しているのだと考えます。

一方、有吉北貝塚では剥取断面の枠外のはるか上方の台地面からイボキサゴが投棄され、それが斜面をほかの投棄物と一緒に移動するので、イボキサゴ純貝層のような状況はほとんど観察されないようです。貝層を巻き込む高濃度流は大きなものを選別して先頭部に集中させる特性があるので、二枚貝の純貝層は斜面最下部に形成されます。

3 二枚貝の分布


二枚貝の分布 上段はヒートマップ

別途検討されている貝層分層と二枚貝殻の分布(ヒートマップ)は相関すると考えられますが、今回テスト空間(24㎝×24㎝のコドラート)は狭いのでその検討意義は大きくありません。コドラートの特性を示す指標として、密集二枚貝率(密集している二枚貝殻(例 ヒートマップの赤域にある二枚貝殻)の全貝殻に対する割合)などの指標を開発することは考えられます。

4 二枚貝偏位角


二枚貝偏位角

二枚貝偏位角データはテスト空間の二枚貝堆積環境の特徴をよく表現しています。

有吉北貝塚test2は斜面途中の貝層の空間で偏位角は斜面傾斜に近い角度が多くなっています。有吉北貝塚test1は斜面貝層が地面にぶつかって移動停止した貝層の空間ですが、ここの偏位角は様々な角度のものが混ざっています。このデータは斜面を下ってきた二枚貝殻が衝突により撹乱されて停止した様子を表現していると考えます。

加曽利貝塚test1は台地平面の貝殻投棄場所に二枚貝殻が投棄された様子を表現していて、偏位角は水平に近いものが多くなっています。

5 二枚貝殻位(上凸・下凸)


二枚貝殻位(上凸・下凸)

上凸殻位より下凸殻位の方が安定するので、二枚貝殻が流動から停止する場面(回転をともなう混合現象の場面)では下凸殻位が増えると想定します。従って、下凸殻位率はその場所の二枚貝殻堆積状況の一つの指標になると考えられます。調査区(コドラート)単位でみると下凸殻位率は次の通りです。

調査区、下凸殻位率

有吉北貝塚北斜面貝層test2、53.3%

有吉北貝塚北斜面貝層test1、63.5%

加曽利貝塚南貝塚test1、55.6%

下凸殻位密集(赤)と上凸殻位密集(青)分布図は二枚貝殻が最終堆積する直前の挙動を表現している可能性があります。有望な指標として今後詳しく検討することにします。

6 二枚貝配向(偏位角・殻位・密集ヒートマップ)


二枚貝配向(偏位角・殻位・密集ヒートマップ)

加曽利貝塚test1では密集ヒートマップの赤色部分と下凸殻位が対応するように観察できます。二枚貝殻の堆積直前の二枚貝殻の挙動を表現しているものと推察します。

有吉北貝塚では二枚貝殻が最終堆積する直前の挙動パターンが幾つかあり、それをこの配向図から読み取ることが可能であると考えますが、その検討はデータをもっと増やしてから行うことにします。

7 メモ

有吉北貝塚北斜面貝層二ヶ所と加曽利貝塚南貝塚一ヶ所合計三ヶ所だけの極限定空間のファブリック分析テスト分析を行いまいしたが、手ごたえを感じる活動となりました。

特に加曽利貝塚南と比較することによって、本命である有吉北貝塚北斜面貝層の貝層最終堆積直前の貝殻挙動を推察することが可能であるという感触を得ました。

次の指標に着目してファブリック分析の本分析を行うことにします。

・二枚貝密集性

・二枚貝偏位角

・二枚貝殻位


2026年5月10日日曜日

貝層断面のファブリック分析(テスト分析5)加曽利貝塚南貝塚

 Fabric Analysis of Shell Layer Cross-Sections (Test Analysis 5): South Shell Mound of Kasori Shell Mound


I am currently testing fabric analysis on a 3D model of a stripped cross-section of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi North Shell Mound. To compare the data from the north slope shell layer with shell layers that are not slope shell layers, I have also started fabric analysis testing on a 3D model of a stripped cross-section of the South Shell Mound of the Kasori Shell Mound.


有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面3Dモデルを対象にファブリック分析のテストをしています。北斜面貝層データと斜面貝層ではない貝層との比較をするために、加曽利貝塚南貝塚剥取断面3Dモデルを対象としたファブリック分析テストも始めました。

この記事は2026.05.07記事「貝層断面のファブリック分析(テスト分析4)」の続きです。

1 加曽利貝塚南貝層観察記録3Dモデルにおけるテスト空間


加曽利貝塚南貝塚観察記録3Dモデルの場所

加曽利貝塚南貝塚には貝層断面観覧施設が設置されています。この施設には通路両側に剥取断面が設置されています。このうち、通路東側に設置されている剥取断面の一部(4m弱)の観察記録3Dモデルを作成しました。この剥取断面は通路西側断面から剥ぎ取られたものです。

上図で引用した「加曽利南貝塚(貝層断面観覧施設)における貝層断面(西断面)の全体図」は剥取断面製作前に観察されたものです。


テスト空間の位置

赤枠が今回テスト空間(24㎝×24㎝)です。(有吉北貝塚北斜面貝層のテスト空間と同じ大きさにしてあります。)


テスト空間画像

有吉北貝塚北斜面貝層の画像と比べると次の点が異なり、今後詳しく検討する予定です。

・イボキサゴ密集域が観察できる。

・二枚貝殻が大きい

・上下二枚の貝殻が閉じたように見えるものがある。(上下二枚で貝殻が閉じたように見えるのは単純に偶然に見られる現象であるが、有吉北貝塚北斜面貝層ではなぜか見られなかった。)

・場所によって貝殻の汚れの程度が異なる。

2 加曽利貝塚南貝塚テスト空間のファブリック分析

2-1 二枚貝の分布


二枚貝の分布

イボキサゴ密集域、二枚貝密集域、二枚貝非密集域に分解して捉えることが出来るかもしれません。


ヒートマップ

2-2 二枚貝の配向

2-2-1 二枚貝偏位角


二枚貝偏位角の空間分布

イボキサゴ密集域より上では右上の角度が多く、その部分の貝殻の汚れが共通しているので、人為的影響(貝層に穴を掘って、そこに食料残滓などと一緒に廃棄された)があるのかもしれません。


二枚貝偏位角の頻度分布

水平に近い角度が多く、斜面貝層(有吉北貝塚北斜面貝層)とは明らかに異なります。

2-2-2 二枚貝殻位(上凸・下凸)


二枚貝殻位(上凸・下凸) 青…上凸、赤…下凸

上凸殻位は45%、下凸殻位は55%です。

殻位の空間分布には特徴があり、ランダムとはなっていません。

2-2-3 二枚貝の配向(偏位角・殻位)


二枚貝の配向(偏位角・殻位)


二枚貝の配向(偏位角・殻位・ヒートマップ)

テスト空間左上の二枚貝密集域の殻位に下凸が多くなっています。また、右下の密集域でも下凸が優勢のように見えます。

3 メモ

殻位について、次のような思考をしました。

貝層形成時代に貝殻を棄てる時の棄て方が殻位情報に隠されているかもしれないと想像します。

例 籠に入れた二枚貝を平面にジャラジャラと単純に棄てる場合(A)と穴を掘ってその穴に上から連続的に二枚貝を棄てて穴を埋めようと意識した場合(B)を設定します。

Bの方が下凸殻位が増えると考えます。

理由 二枚貝殻は下凸殻位の方が安定するので、穴に棄てられるなど二枚貝殻が混ぜられる要素が生まれると下凸殻位が増えると考えます。

これは実験で実証可能と考えます。

この考えによれば、貝層断面で下凸殻位集中場所が見つかると、その場所は何らかの理由で二枚貝が流動して堆積した場所であることが推察できることになります。


2026年5月7日木曜日

貝層断面のファブリック分析(テスト分析4)

 Fabric Analysis of Shell Layer Cross-Sections (Test Analysis 4)


In two test spaces of shell layer cross-sections, the relationship between shell attitude and deviation angle of bivalve shells was represented using a semicircular rose diagram. In the test space on the middle slope of the shell layer, there are many shells with deviation angles close to the shell layer slope angle, but the difference in shell attitude is small. On the other hand, in the test space at the bottom of the shell layer, the deviation angles are more varied, and there are many shells with a convex-down attitude.


貝層断面の2つのテスト空間で、二枚貝殻の殻位と偏位角の関係を半円形ローズダイヤグラムで表現しました。斜面貝層中腹テスト空間では貝層斜面角度に近い偏位角の貝殻が多いですが、殻位の差は少ないです。一方斜面貝層最下部テスト空間では偏位角がばらけるとともに下凸殻位の貝殻が多くなります。

この記事は2026.05.06記事「貝層断面のファブリック分析(テスト分析3)」の続きです。

1 二枚貝殻 殻位と偏位角の関係


二枚貝殻 殻位と偏位角の関係

test2空間とtest1空間及びtest2+test1について、二枚貝殻の殻位と偏位角の関係を半円形ローズダイヤグラムで表現しました。グラフには参考として貝層傾斜線を点線で記入してあります。

test2空間(斜面中腹)では斜面方向偏位角の貝殻が多くなっています。偏位角のばらつきがありません。また、殻位の差(上凸殻位の数と下凸殻位の数の差)は少ないです。下凸殻位率は53%です。

一方test1空間(斜面貝層最下部で貝層が地面と衝突している)では偏位角がばらけるとともに下凸殻位の貝殻が多くなります。下凸殻位率は64%になります。

test1空間とtest2空間の殻位と偏位角関係の差は斜面を高濃度流(貝殻泥流)が流下し、地面と衝突し、堆積する様子に対応している可能性があります。つまり、斜面貝層の構造を把握するための情報である可能性があります。

2 参考情報


test2空間とtest1空間


前記事で作成した二枚貝方向(殻位)と傾斜(偏位角)の関係(test2+test1)

3 メモ

偏位角の分布状況表現手段として半円形ローズダイヤグラムが有効であることを確認しました。

test1空間で下凸殻位が63%と優勢になることは意味があることだと想定します。今後、下凸殻位率という指標をつかって貝層断面を見ていくことにします。また、偏位角が集中するかばらけるかという指標の開発も意味がありそうです。


2026年5月6日水曜日

貝層断面のファブリック分析(テスト分析3)

 Fabric Analysis of Shell Layer Cross Sections (Test Analysis 3)


I am conducting a fabric analysis test using a stripped cross section of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound as a case study. This time, I examined the inclination and direction (upward convex/downward convex) of bivalves by representing them with frequency graphs. Characteristics of slope shell layers can be observed in the inclination and direction of bivalves.


有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面を事例としてファブリック分析のテストを行っています。今回は二枚貝の傾斜や方向(上凸・下凸)を頻度グラフなどで表現して検討しました。二枚貝の傾斜や方向に斜面貝層の特徴が見られます。

この記事は2026.05.02記事「貝層断面のファブリック分析(テスト分析2)」の続きです。

1 テスト対象空間


テスト対象空間

test1とtest2が今回のテスト対象空間です。ともに、24㎝×24㎝の範囲です。

2 二枚貝数


二枚貝数

test2が90、test1が103となります。密度は15.6個/100㎠、17.9個/100㎠となります。


分層別二枚貝数

C(2)層のデータが多くなっています。

3 二枚貝傾斜

3-1 C(2)層の略傾斜

傾斜は鉛直線から右回りで角度を計測しています。

C(2)層の略傾斜は次図のとおり、114.6°となります。


C(2)層の略傾斜

3-2 二枚貝傾斜頻度分布


test2とtest1の二枚貝傾斜頻度分布

test2は貝層分層が斜面途中に位置する観察範囲であり、傾斜頻度分布は100°~120°が最も多くなっています。一方、test1は貝層分層が下の層に衝突する斜面最下部に位置する観察範囲であり、傾斜頻度分布は突出した傾斜区分がありません。test2とtest1の違いは高濃度流の挙動に対応した二枚貝の反応が表現されている可能性があります。(test2は斜面を流れる挙動の状況、test1は流れが地面に衝突して堆積する挙動の様子。)


C(2)層の二枚貝傾斜頻度分布

test2とtest1のC(2)層だけの情報を抽出して作成した二枚貝傾斜頻度分布です。斜面に存在する貝層分層の二枚貝傾斜頻度分布はこのような形状になるのではないかと考えます。

4 二枚貝方向

4-1 二枚貝方向区分

二枚貝方向は次のような区分をしています。


二枚貝方向区分

4-2 二枚貝方向分布


二枚貝方向

斜面途中のtest2では上凸・下凸の差はほとんどありませんが、斜面下部のtest1では下凸が多くなります。

これまでに検討した予備解釈では高濃度流が停止する際に土器や貝殻が安定形状に回転して流体の中を沈下すると考えていますので、この予備解釈とtest1で下凸が多くなることは整合します。

4-3 二枚貝方向と傾斜との関係


二枚貝方向と傾斜との関係

傾斜が80-100、100-120、120-140で下凸の割合が大きくなっています。高濃度流の斜面流下に伴う事象と考えて矛盾はありません。

5 メモ

test1とtest2だけの分析ですが、二枚貝傾斜と方向の2指標から高濃度流の特徴を整理できる可能性を感得することができました。これにより、剥取断面が詳しく検討する価値のある対象であることと、現在の分析方法から有用情報を汲み取ることができることを実感できました。

今後、分析対象面積を拡大します。同時に斜面貝層でない剥取断面(加曽利貝塚南貝塚)の分析も比較のために行うこととします。



2026年5月2日土曜日

貝層断面のファブリック分析(テスト分析2)

 Fabric Analysis of Shell Layer Cross Section (Test Analysis 2)


Test analysis 2 of fabric analysis was conducted using a stripped cross section of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound as a case study. Fabric analysis is a method for analyzing the arrangement patterns and structures of unit components in a geological cross section. I hope to obtain clues about the high-concentration flow that formed the slope shell layer through fabric analysis.


有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面を事例としてファブリック分析のテスト分析2を行いました。ファブリック分析とは地層断面における単位構成要素の配列パターンや構造の分析手法です。ファブリック分析により斜面貝層を形成した高濃度流の手がかりを得ようと期待しています。

この記事は2026.04.26記事「貝層断面のファブリック分析(テスト分析)」の続きです。

1 テスト対象空間


テスト対象空間


テスト対象空間

左赤枠が今回テスト空間、右赤枠が2026.04.26記事テスト空間。

赤枠は約24㎝×24㎝の大きさです。

記号は貝層分層記号です。(分層記号の解説は発掘調査資料には掲載されていません。)


テスト対象空間


テスト対象空間(テスト分析2)

2 二枚貝の分布

2-1 二枚貝の分布

・分布


二枚貝の分布


二枚貝の分布

C(2)層はハマグリをメインとする貝層、CD層はイボキサゴをメインとする貝層です。

・ヒートマップ


二枚貝分布ヒートマップ

二枚貝分布が密なところ(赤いところ)は主にC(2)層に存在しますが、このテスト空間ではCD層にも分布します。

2-2 二枚貝の配向

2-2-1 二枚貝の傾斜


二枚貝の傾斜


C(2)層で分層線傾斜と異なる傾斜(+成分の傾斜)

詳細な分析は追っておこないますが、C(2)層では分層線傾斜と明らかに異なる傾斜(+成分の傾斜)の貝殻のまとまった分布を観察することができます。この分布はでたらめではなく、何か意味があると考えます。

2-2-2 二枚貝の方向(上凸・下凸)


二枚貝の方向(上凸・下凸) 青…上凸、赤…下凸


二枚貝の方向(上凸・下凸) 青…上凸、赤…下凸

このテスト空間では二枚貝の方向(青・赤区分)について直観的にその特徴を説明できません。追って定量的な分析を行います。

2-2-3 二枚貝の配向(傾斜・方向)


二枚貝の配向(傾斜・方向)


二枚貝の配向(傾斜・方向・ヒートマップ)

2026.04.26記事テスト空間の分析では「二枚貝方向が下凸(赤色)のものとヒートマップ密集域(赤色)が対応するところが多いことが観察できます。二枚貝下凸は安定している形状であり、高濃度流で多数の二枚貝が運ばれ停止する時に一斉に回転して沈下堆積したと予察します。」とメモしました。

ところが、このテスト空間ではこのような対応(下凸(赤色)と密集域(赤色)の対応)がありません。これはテスト空間の斜面における位置(斜面の中間か、それとも最下部か)という違いに対応している可能性があり、とても興味が湧きます。

3 メモ

まだ極狭い範囲のデータですが、ファブリック分析データの価値が大きい予感がしてきました。さらに分析を続けることにします。

次の記事ではデータを定量的に扱ってみることにします。