花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.146 墨書土器指標を用いた遺跡評価思考実験
八千代市井戸向遺跡と八千代市白幡前遺跡のゾーン別墨書土器統計、建物統計が揃いましたので、その統計資料を活用して遺跡評価に関する思考実験をしてみました。
1 「竪/掘」値(T)の把握、分級、分布
次に「竪/掘」値(タテホリチと呼ぶことにします。)の値とその分級基準を示します。
「竪/掘」値(T)の値、分級基準
竪穴住居跡及び掘立柱建物跡の数値は各発掘調査報告書掲載の数値を用いています。
分級基準の設定の仕方の厳密な裏付けはありませんが、ここではデータを3分割することに意義があると考えておきます。
このゾーン別分級結果を分布図にすると次のようになります。
ゾーン別「竪/掘」値(T)分級図
分級は次のようなイメージでとらえることができます。
分級c………分級b………分級a
居住イメージ←→業務イメージ
2 墨書土器対竪穴住居出土率(S)の把握、分級、分布
墨書土器対竪穴住居出土率(S)の値とその分級基準を示します。
墨書土器対竪穴住居出土率(S)の値、分級基準
墨書土器出土数の値はwebサイト明治大学日本古代学研究所で公表している千葉県墨書土器データベースファイルを用いました。(2015.06.11記事「墨書土器に関する新しい統計指標を考案する」掲載の白幡前遺跡のデータは別の資料によるもので、この記事のデータと異なります。この記事のデータが最も正確です。)
分級基準の設定の仕方の厳密な裏付けはありませんが、ここではデータを3分割することに意義があると考えておきます。
このゾーン別分級結果を分布図にすると次のようになります。
ゾーン別墨書土器対竪穴住居出土率(S)分級図
分級は次のようなイメージでとらえることができます。
分級a…………………分級b…………………分級c
組織活動活発イメージ←→組織活動虚弱イメージ
3 TとSのクロスによるゾーン評価
TとSのクロスによるゾーン評価を次の評価基準により行いました。
TとSのクロスによるゾーン評価基準(試案)と評価結果
TとSをクロスさせることにより、評価結果として業務地区、特殊地区1、特殊地区2、一般集落地区の4領域を設定することができました。
評価結果を分布図にすると次のようになります。
TとSのクロスによるゾーン特性の検討
業務地区として評価した領域は、竪穴住居(居住用建物)に対して掘立柱建物(業務用建物)が多く、また単位竪穴住居当り墨書土器出土量が多い領域です。
具体的には井戸向遺跡Ⅲ、Ⅰゾーン、白幡前遺跡3、1A、1B、2D、2E、2Fゾーンが該当します。
特殊地区1として評価した領域は、竪穴住居(居住用建物)に対して掘立柱建物(業務用建物)がある程度多いのですが、単位竪穴住居当り墨書土器出土量が少ない領域です。
具体的には寺院と接待施設(支配機能施設)がある白幡前遺跡2Aゾーンが該当します。
特殊地区2として評価した領域は、竪穴住居(居住用建物)に対して掘立柱建物(業務用建物)が少なく、単位竪穴住居当り墨書土器出土量がある程度多い領域です。
具体的には陰陽師活動域であると考えた白幡前遺跡2Cゾーンと井戸向遺跡Ⅱゾーンです。
井戸向遺跡Ⅱゾーンは掘立柱建物がゼロで不自然であり、たまたま掘立柱建物が発掘調査域外にある可能性もあり、業務地区に評価される可能性もあります。
一般集落地区として評価した領域は、竪穴住居(居住用建物)に対して掘立柱建物(業務用建物)が少なく、また単位竪穴住居当り墨書土器出土量が少ない領域です。
具体的には井戸向遺跡Ⅳゾーン、白幡前遺跡2Bゾーンが該当します。いわゆる一般農業集落として捉えることができるゾーンです。
ただし、井戸向遺跡Ⅳゾーンは一般農業集落ですが官人や僧侶の指導監督により開拓事業が進んでいたゾーンであると考えます。
4 思考実験結果の考察
思考実験として、TとSという統計指標を使って遺跡ゾーンの分級評価をしてみました。
分級評価結果は遺跡ゾーンの特性をクリアーにあぶりだすことができたと考えます。
今後隣接する北海道遺跡、権現後遺跡も含めてこの思考実験を拡大してみたいと思います。
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