2015年8月24日月曜日

萱田遺跡群の土器器種別変動係数

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.192 萱田遺跡群の土器器種別変動係数

2015.08.22記事「萱田遺跡群出土土器の器種内訳」で次のような予想を立てました。
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甕類は飲料水を蓄え、またカマドでの調理道具であり、生活に不可欠であり、生活レベルの高低に関わらず竪穴住居ごとに基本セットが必ず常備されていたと考えます。また大型であるため予備品を備えることも少なかったと考えます。
一方他の器種は生活レベルの高低によって所持されたりされなかったり、予備品の所持があったりなかったりする製品であったと考えます。
ですから、生活レベルの低い遺跡(北海道遺跡)では全体の土器数が少ないため、竪穴住居毎に必ず装備される甕類の割合が他遺跡と比べて最も高くなった(31.0%)と考えます。
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甕類は不可欠用品であるとともに個人単位ではなく建物単位で備えるものですから、分布のばらつきが少ないと考えたのです。

器種別統計をゾーン別に編集して、そのデータからこの予想の確からしさを次に検討しました。

次の表は器種別竪穴住居1軒あたり出土数の変動係数を示しています。

器種別竪穴住居1軒あたり出土数の変動係数(表)

変動係数は標準偏差/平均値でもとめた係数です。

平均値が小さくなるにしたがって標準偏差も小さくなりますから、標準偏差/平均値を求めることによって標準偏差を相対化して比較可能にしたのです。

この結果をグラフ化すると次のようになります。

器種別竪穴住居1軒あたり出土数の変動係数(グラフ)

甕類の変動係数が最も低いことが確認できます。

変動係数が大きくなるに従って竪穴住居1軒あたり出土数のばらつきが大きくなることを示しています。

この情報から上記予想が確からしいことを統計的に確認しました。

甕類が他の土器器種と比べると、ゾーン別竪穴住居1軒あたり出土数のばらつきが最も小さいということは、竪穴住居1軒あたり出土土器数が増えれば、つまり個人利用の坏類や高級品・高機能品に位置する皿類、鉢類、蓋、甑、壺、椀類が増えれば甕類の割合が減少し、逆に竪穴住居1軒あたり出土土器数が減れば、つまり坏類、皿類…等が減れば甕類の割合が増加することになります。

このことからゾーン別の甕類の割合はその数値が大きければ、そのゾーンは土器数とその器種構成が貧弱であり、逆に数値が小さければ土器数と器種構成が豊かであることを示しています。

従って、甕類の割合がゾーン毎の経済的豊かさとか権力関係における優劣を示す指標になると考えます。

次の図はゾーン別に甕類以外土器の割合を示したものです。

甕類以外土器の割合

白幡前遺跡2Aゾーンを除いて、一般論として次のように考えます。
甕類以外土器の割合が高いゾーン(赤色)は経済的に豊かであり、権力関係の中で優位なポジションにあったと考えます。
甕類以外土器の割合が低いゾーン(青色)は経済的に貧しく、権力関係の中で劣位なポジションにあったと考えます。
この結果はこれまでの他の指標による検討と概略符合します。

白幡前遺跡2Aゾーンは甕類以外土器の割合が中位のゾーン(緑色)になっていますが、このゾーンには寺院や中央貴族接待施設が存在しています。
このゾーンは、生活実体の跡が弱く(土器や金属器の出土数が少ない)、「甕類以外土器の割合」という指標を使って経済的豊かさや権力関係を見立てることはできません。

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