2015年8月3日月曜日

萱田遺跡群の鉄製品出土物 その5 枢鉤(くるるかぎ)

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.180 萱田遺跡群の鉄製品出土物 その5 枢鉤(くるるかぎ)

萱田遺跡群では棒状の鉄製品が多出していますが、ほとんど全て用途不詳となっています。
しかし、枢鉤(くるるかぎ)とその差し込み口金具(鉤穴金具)が多数含まれていると考えられますので、白幡前遺跡を例に紙上検討してその可能性が濃厚な鉄製品をピックアップしてみました。

ピックアップした結果を次に示します。

白幡前遺跡出土鉄製品 枢鉤(くるるかぎ)及び差し込み口金具の可能性の高いもの

上記のうち1Bゾーンの4点の棒状鉄製品については、発掘調査報告書では次のように記述がありますので、それを参考にしています。
「1・2・4・5は“コ”字状の金具の先端が直角に曲がるもので、製品に対して直行して木質が付着している。山口直樹氏からかんぬき棒の差し込み金具ではないかとの御教示を得た。」という記述があります。

3ゾーンの大きく湾曲した棒状製品については次の類似出土品の情報を参考に抽出しました。

参考情報1 錠と鍵の部材
佐倉市史考古編(本編)より引用
1(湾曲した鉄製品)は「枢鍵(くるるかぎ)」として「扉の下に木製の桟(さん)を取り付けて、扉を閉めると孔に落ちて施錠される。開けるときはL字の金具を引っ掛けて、桟を持ち上げる仕組みのものである」と説明しています。

参考情報2 鍵とキーホルダー木簡
なら平城京展‘98(発行奈良市)から引用

枢鉤の利用方法は次のようなものであったとイメージしました。

枢鉤(くるるかぎ)利用方法のイメージ

このイメージは1例であって、落とし桟構造の他、閂(かんぬき)構造等を開けるものもあったようです。

白幡前遺跡から多数の枢鉤と鉤穴金具が出土していることから、各ゾーンの掘立柱建物の防犯機能が充実していて、それだけ重要機能を果たしていたことがわかります。軍事兵站・輸送基地ならではの出土物であると考えます。

近隣遺跡の枢鉤出土状況と比較することによって、白幡前遺跡の意義をより深く理解することが可能となると考えます。

なお、鉄製鍵と鉄製錠前をセットにして使う製品(海老錠)は白幡前遺跡では見つかりません。

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参考 『精選版 日本国語大辞典』(小学館)のかぎ【鍵・鉤】の項に掲載されている鍵紋

鍵紋
『精選版 日本国語大辞典』(小学館)から引用

右上を除く3つ鍵紋は枢鉤を図案化したものです。

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