縄文土器学習 496
千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」で展示されている縄文早期土偶(袖ヶ浦市打越岱遺跡)の3Dモデルを作成し、観察しました。予期に反して重たい思考が伴いました。草創期後半石偶(上黒岩岩陰遺跡)との関連が念頭に浮かぶ重要な遺物です。
1 縄文早期土偶(袖ヶ浦市打越岱遺跡) 観察記録3Dモデル
縄文早期土偶(袖ヶ浦市打越岱遺跡) 観察記録3Dモデル撮影場所:千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」
撮影月日:2020.11.13
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.009 processing 43 images
展示の様子
展示の様子
3Dモデルの動画
2 観察と考察
3Dモデルを観察して、その展示正面が土偶正面として認識することができないので、袖ヶ浦市ホームページから展示裏面写真を入手してみたところ、展示裏面がこの土偶の正面(顔や陰部のある面)であることがわかりました。
この土偶(縄文早期中葉沈線文期)は縄文草創期後半(隆線文期)石偶(上黒岩岩陰遺跡)の流れで見ることができるビーナス像であると想像しました。上黒岩岩陰遺跡の石偶は後期旧石器時代後半のビーナス像の流れの中で位置付けられていますから、この土偶も後期旧石器時代後半から伝わるビーナス像の一つであると想像できます。
縄文早期土偶(袖ヶ浦市打越岱遺跡)に関する想像
・土偶体形は頭、手、胴部、腰から下が表現されています。
・展示正面はビーナス像の背面であると考えます。
・後頭部の髪が斜め線で表現されていて、女性性を表現しています。
・曲線的にカーブしてT字状に連続する刺突文は女性体形のしなやかさを表現する模様であると想像します。
・展示裏面の写真(袖ヶ浦市ホームページから引用)をみると腰から下部分に縦方向の沈線が刻まれ、陰毛をイメージしていると考えられることから、この面が土偶正面(顔のある面)です。
・土偶に顔や乳房は省略されています。
・この土偶は出産時に妊婦が手に握って安産を祈願する道具、いわば実用道具として使われたものと想像します。
参考 上黒岩岩陰遺跡出土石偶(線刻礫) 国立歴史民俗博物館研究報告154集から引用
参考 後期旧石器時代後半のヴィーナスの型式変遷
国立歴史民俗博物館研究報告第154集(2009)から引用
参考 2020.04.23記事「産小屋としての上黒岩岩陰遺跡」
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