2024年6月18日火曜日

堀之内式注口土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation record of Horinouchi-style spouted pottery (Chiba city,Kasori shell mounds)


I created a 3D model of the observation record of Horinouchi-style spouted pottery (Chiba city,Kasori shell mounds), which is exhibited at the Kasori shell mound museum's 2023 excavation survey report exhibition. From the scratches and chips that can be observed in the 3D model, I enjoyed imagining that a hand-held string was attached to it.


加曽利貝塚博物館の令和5年度発掘調査速報展に展示されている堀之内式注口土器(千葉市加曽利貝塚)の観察記録3Dモデルを作成しました。3Dモデルで観察できる傷・欠けの様子から、手持ち用弦がかけられていたという想像を楽しみました。

1 堀之内式注口土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

堀之内式注口土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

縄文時代後期中葉

北貝塚第4次調査区C区出土

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度発掘調査速報展

撮影月日:2024.05.28


展示の様子

ガラス面越し撮影

3DF Zephyr v7.529 processing 91 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 メモ

注口部(全部)と後部に付いている把手状の凸部の縁をよく見ると、水平方向に傷や欠けが目立ちます。紐で縛った跡のように観察できます。


傷や欠けが見られる把手状凸部の縁(前部)


傷や欠けが見られる把手状凸部の縁(後部)

この傷や欠けから、この把手状凸部に紐(乾いたつる植物など)を巻いて保護し、前後の把手状凸部を繋ぐ太い紐か曲がった木枝をくくり付け、手持ち部(弦)をかけたものと想像します。


弦が取り付けられた様子(想像)

この想像が的確である可能性があるのか、間違っているのか、関連する情報をwebで渉猟しましたが、特段の情報を見つけることができませんでした。


欧米考古学の新概念「物質性」の学習

 谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」学習 6


Learning about the new concept of “Materiality” in Western archaeology


Study 6 “DOGU & SEKIBOU: Rituals and the Domestication of Society in Prehistoric Jomon” by Yasuhiro Taniguchi


In “DOGU & SEKIBOU” by Yasuhiro Taniguchi, I learned about the new concept of “Materiality” in Western archaeology for the first time. It was confusing, difficult, and I had a strong feeling that I would become interested and passionate about it. “Materiality” is not the physical properties of an object, but the force that an object exerts on people. As a side trip, I learned about the outline of “The Materiality of Stone” by C. Tilley on ChatGPT.


谷口康浩著「土偶と石棒」の中で、欧米考古学の新概念「物質性」をはじめて学習しました。戸惑い、難解、そして強い興味と熱中しそうな予感。「物質性」とはモノの物質的特性ではなく、モノが人に働きかける作用力です。寄道学習として、ChatGPTでC.Tilley著「The Materiality of Stone」の概要を知りました。

序章 儀礼考古学の現代的意義

2 儀礼考古学の研究法一モノ・行為・コンテクストー

(2)モノと物質性

・この小節では「物質性」への研究視覚の大切さを述べています。「物質性」といっても「モノ自体に備わる物質的特性ではなく、モノが人・社会・文化に働きかける作用力に目を向ける考え方である。」という点で、私には、難解です。

・石棒と土偶について次のように「物質性」について説明しています。

「たとえば、「石棒」は縄文中期に盛行した大形の棒状石製品であるが、なぜそれが木や土ではなく石で作られなければならなかつたのか、なぜそこまで大きく作る必要があったのか、なぜ特定の色調の石にこだわつたのかは正面から問われたことがない。これまでの石棒研究では主に頭部の形態による分類と型式編年が進められてきたが、その性格については、男根からの連想のような飛躍的解釈が起こりがちであつた。こうした限界を克服するための一つの方法が物質性の分析である。同時代の人々の石に対する意識や態度を問題に組み入れることで、形態からではわからない意識を読み取れる可能性がある。縄文人が石に特別な意識・感情を抱ぃてぃたことは、中期以降に顕著となる環状列石や配石遺構の発達ぶりからも窺い知ることができる。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

「物質性の点で石棒と対照的な性格をもつのが土偶である。土偶は縄文土器と同じく土で造形されるのが普通である。第5章で詳しく取り上げるが、土偶と土器はしばしば造形上で融合する関係にある。これは土器と土偶の製作者が同一であった可能性を示すだけでなく、土偶の象徴性が「土」という物質性に合致していたことによるものと考えられる。土偶の造形を軟質の石に写した岩偶も一部にあるが、土偶に比べれば数はきわめて少ない。縄文人たちの土に対する意識や観念形態を考察しなければならない。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・つぎの記述が著者の「物質性」に関する概念を端的に述べているものと推察します。

「どのような素材を選び、それにどのような姿態を与えるのか。そこに人々の意識や観念が凝縮される。だからこそ、そのモノが人の心を動かす作用力をもつことになるのである。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・この小節の最後では、物質性の問題は欧米の現代考古学で主題化され研究対象になっている様子が記述されています。

「遺跡景観の現象学的な解釈を目指すC.テイリーは、巨石モニュメントなどの遺跡景観を単なる物理的空間としてではなく、それに関わった人々が身体を通して感じ取った経験や感情を物質化したものと捉え、巨石やある種の石材、あるいは特別な石斧などの「石」が人々の心にある知覚を喚起する力を内在させていたという見方を提示している(Tilly 2004)。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

(図書のTillyは誤で正はTilleyです。)

【Christopher Tilley著「The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology」(2004)の寄り道学習】

参考文献に出ているChristopher Tilley著「The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology」(2004)の寄道学習(というか基礎情報収集)をしてみました。

1 webにおける図書の確認


web画面

出版社の説明文(翻訳)

ウェイン・ベネットとの共著 石英メンヒルの表面の絹のようなワックスのような質感から、他のメンヒルの木目調の質感、マルタ島の金色の蜂の巣状の石灰岩、スウェーデン南東部のカンブリア紀砂岩の凍った波のように冷たい質感まで、この本は石の感覚的な材質特性を調査します。触覚、音響特性、色、視覚的印象はすべて、先史時代の記念碑が持つ風景との関係における力と重要性を理解する上で重要な役割を果たしていることが示されています。『The Materiality of Stone』で、クリストファー・ティリーは、先史時代のヨーロッパの風景における「文化的」石と「自然」石の両方の重要性を分析する根本的に新しい方法を提示しています。ティリーの画期的なアプローチは、人間の経験を抽象的な分析的視線ではなく、多次元的で感覚的な人間の方法で解釈することです。研究対象は、先史時代のブルターニュのメンヒルからマルタの新石器時代の寺院、そして南スウェーデンの青銅器時代の岩の彫刻やケルンまで多岐にわたります。ティリーは、内部空間や景観設定が、そこに住んでいた人々にとって深い意味を持ち、今日でも同様に刺激的な遺物、物質、および関連する場所との関係でどのように解釈されるかについても検討し、徹底的な調査を行っています。私たちの過去の具体的な岩や石を通して人間の経験を理解するという革新的なアプローチにおいて、『石の物質性』は、物質文化研究の分野とヨーロッパ先史研究への理論的かつ実質的な大きな貢献です。

2 ChatGPT-4oからの情報

[質問]

図書

The Materiality of Stone

Explorations in Landscape Phenomenology

By Christopher Tilley

の概要や論旨の特徴について教えてください。

[回答]

Christopher Tilleyによる『The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology』は、ランドスケープ・フェノメノロジー(景観現象学)の視点から石の物質性を探求する学術書です。この本は、石がどのようにして人間の経験や文化に深い影響を与えてきたかを考察しています。以下に、本書の概要や主要な論旨の特徴を紹介します。

●概要

『The Materiality of Stone』は、物質性と景観が人間の感覚や意識にどのように影響を与えるかを分析することを目的としています。Tilleyは、石が持つ物理的特性とその文化的・社会的意味を探ることで、人々がどのようにして景観を経験し、解釈したかを明らかにしようとしています。本書は、フィールドワークや理論的考察を交えて書かれており、石が単なる物理的な存在以上のものであることを示しています。

●論旨の特徴

・フェノメノロジーのアプローチ

Tilleyは、現象学的手法を用いて、石と人間の関係を探求しています。彼は、人間がどのようにして石を知覚し、その物質性をどのように経験するかに焦点を当てています。これにより、石が持つ象徴的・文化的な意味が浮き彫りになります。

・景観の物質性

本書は、景観を単なる背景としてではなく、能動的な要素として捉えています。Tilleyは、景観の中の石がどのようにして人間の行動や思考に影響を与えるかを考察し、景観が社会的・文化的実践において重要な役割を果たすことを示しています。

・石の象徴性と社会的役割

石は、様々な文化において象徴的な意味を持ちます。Tilleyは、メガリスや墓石、道標などの事例を通じて、石がどのようにして記憶、アイデンティティ、儀式などに関与しているかを分析しています。石の物質性は、個人や集団のアイデンティティ形成や社会的関係の構築において重要な役割を果たします。

・フィールドワークと事例研究

本書は、具体的なフィールドワークに基づいています。Tilleyは、ヨーロッパの先史時代遺跡や現代の景観における石の使われ方を詳しく調査し、それらの事例をもとに理論的な考察を展開しています。これにより、理論と実践が結びつけられています。

・物質性の再評価

Tilleyは、物質文化研究における物質性の再評価を提唱しています。彼は、物質が人間の経験に与える影響を軽視せず、むしろその中心に置くことで、新たな理解を促進しています。

●結論

『The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology』は、石の物質性と人間の経験の関係を深く掘り下げた重要な学術書です。Tilleyの現象学的アプローチは、石がどのようにして文化的・社会的意味を持つかを明らかにし、景観の物質性に対する理解を深化させています。考古学や人類学、文化地理学など、さまざまな分野で参考にされる重要な研究です。

【感想】

「物質性」という概念はここで文字通りはじめての学習となり、戸惑いを禁じ得ません。しかし、とても面白そうな、そして重要であり、さらに自分が熱中しそうな概念です。このような欧米考古学を紹介した著者に感謝します。

欧米の情報はChatGPTが得意とする分野であり、実際に『The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology』の概要を詳しく知ることができました。ChatGPT恐るべしです。

ChatGPTの回答で「物質性」概念が少し身近になり、咀嚼できそうな予感が産まれました。

この図書電子版を即座に購入する衝動にかられましたが、自分の英語力をかんがみてやめました。パソコン機能による翻訳でも十分学習できる可能性があるので、将来状況が変化してどうしても読みたくなれば、購入することにします。

【参考】

ChatGPT-3.5による同質問に対する回答は次の通りです。内容基本は似ていますが、ChatGPT-4oの方がより詳細でわかりやすく、差別化されているようです。

[回答]

Christopher Tilleyによる「The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology」は、風景の現象学における石の物質性を探る重要な著作です。Tilleyは、考古学や人類学の視点から、石がどのように先史時代の人々の生活や文化に影響を与えたかを考察しています。この本の概要や論旨の特徴について詳しく説明します。

●概要

この本は、石の物質性とその文化的および社会的な意味を探るものであり、特に風景の中での石の役割に焦点を当てています。Tilleyは、物質文化に関する現象学的アプローチを用いて、石がどのように人間の経験や認識に影響を与えたかを分析しています。

●主な論旨の特徴

・現象学的アプローチ

Tilleyは、現象学の哲学的枠組みを用いて、石の物質性がどのように人間の意識や経験に影響を与えるかを探求しています。彼は、石を単なる物質としてではなく、人間と自然の関係を理解するための媒体として考えます。

・風景と物質性の関係

風景の中での石の存在が、どのように人々の認識や行動に影響を与えたかを詳細に分析します。石の配置や形状、質感が、儀式や社会的行動にどのように影響を与えたかを考察しています。

・文化的および象徴的な意味

石の物質性が持つ象徴的な意味や文化的な役割についても深く掘り下げています。Tilleyは、石が単なるツールや建築材料としてだけでなく、信仰やアイデンティティの象徴として機能していたことを強調しています。

・具体的な事例研究

Tilleyは、ヨーロッパ各地の具体的な遺跡や風景を取り上げ、それぞれの場所における石の役割や意味を詳細に分析しています。これにより、一般的な理論を具体的な実例で裏付けています。

・時間の流れと石の役割

石が時間を超えてどのように機能し続けるか、つまり長い歴史の中でどのようにその重要性が変わってきたかを考察しています。古代から現代に至るまでの石の持つ意味の変遷を追跡しています。

・重要な結論

物質と人間の相互作用:

石は単なる受動的な存在ではなく、人間の行動や文化を形成する能動的な要素であるという結論に至ります。

風景の動的な性質:

風景は静的な背景ではなく、常に変化し、人間の活動と相互作用する動的な存在であると述べています。

象徴的な力:

石の物質性は、その物理的特性だけでなく、象徴的な力によっても人々の生活に影響を与えることを示しています。

●結論

Christopher Tilleyの「The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology」は、石の物質性が先史時代の人々の文化や社会に与えた影響を現象学的視点から深く探求したものであり、風景考古学や物質文化研究における重要な文献です。石が物質としてだけでなく、象徴的な存在としても重要な役割を果たしていることを明らかにし、現代の私たちが過去の文化を理解する上での新たな視点を提供しています。


石棒の展示 尖石縄文考古館

この写真は本文記事と関係ありません。


2024年6月17日月曜日

メモ 視認性の良い3D棒グラフの作成方法

 Memo: How to create a 3D bar graph with good visibility


I sometimes create 3D models with bar graphs on a grid using Blender's CUBE. I made a note of how to create them and how to improve their visibility. I use a BlenderPython script to create them, and Photoshop to improve visibility.


BlenderのCUBEを活用して、グリッドに棒グラフを立てる3Dモデルを時々作成しています。その作成方法と視認性向上策をメモしました。作成はBlenderPythonスクリプトで行い、視認性向上はPhotoshopを活用します。

1 3D棒グラフの作成方法

1-1 データの作成

次の順番で情報を並べたテキストファイルを作成します。

グリッド番号、グリッド中央X座標、グリッド中央Y座標、変数

【例】

Ⅲ-23,5,27,0.835,1.67

Ⅲ-24,5,29,0.01,0.02

Ⅲ-30,7,21,8.335,16.67

Ⅲ-31,7,23,7.28,14.56

Ⅲ-32,7,25,13.48,26.96

Ⅲ-33,7,27,2.995,5.99

Ⅲ-34,7,29,0.24,0.48

グリッド平面は2m×2mです。変数は遺物件数/100の値です。

1-2 BlenderPythonスクリプトによる3Dモデル作成

次のBlenderPythonスクリプトにデータテキストファイルを書き込んでBlenderテキストエディターで走らせると、テクスチャ無しの棒グラフ3Dモデルが造形されます。

# 正確完成版

import bpy

# ファイルからデータを読み込む
file_path = "E:/test/遺物件数分布.txt"
with open(file_path, "r") as file:
    lines = file.readlines()

# CUBEを配置する関数
def create_cube(name, x, y, z, height):
    bpy.ops.mesh.primitive_cube_add(size=1.8, location=(x, y, z))
    cube = bpy.context.object
    cube.name = name
    bpy.ops.transform.resize(value=(1, 1, height))

# データからCUBEを作成
for line in lines:
    data = line.strip().split(',')
    if len(data) == 5:
        name, x, y, z, height = data
        x, y, z, height = float(x), float(y), float(z), float(height)
        create_cube(name, x, y, z, height * 0.5555555555) 
棒グラフ作成のBlenderPythonスクリプト


造形されたテクスチャ無しの棒グラフ3Dモデル

2 3Dモデルの調整

3Dモデルを3DF Zephyr LiteやSketchfabで扱いやすくするために辺の細分化と面の三角化を行います。

オブジェクトモードで棒グラフ全部を指定して、編集モードで辺の細分化(例5)、面の三角化を行います。

3 視認性向上策

棒グラフにそのままテクスチャ画像を貼り付けると視認性が良くないので、UVEditing画面で得られるUV展開画面に合わせたテクスチャ画像をPhotoshopで作成します。今回作成棒グラフのUV展開画面は全て同じなので、1枚のテクスチャ画像を全ての棒に適用できます。


テクスチャ画像の元となる画像をスクリーンショットで作成する


視認性向上を目指したテクスチャ画像の作成(Photoshop作業)


3Dモデルの画像

3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層 遺物台帳の素入力完了

 Ariyoshikita Shell Mound North Slope Shell Layer: Artifact Register Basic Input Completed


The basic input of the artifact register for the Ariyoshikita Shell Mound North Slope Shell Layer has been completed. The manual input of approximately 64,000 items was a difficult task. Data on artifact type and altitude by grid has been created. For me, the next big hurdle is reading the planar coordinates from the artifact distribution map. I am one step closer to visualizing the 3D distribution of artifacts in the north slope shell layer.


有吉北貝塚北斜面貝層の遺物台帳素入力が完了しました。約64000件の手入力作業は難行苦行でした。グリッド別遺物種類・標高のデータができました。次の大きな山は遺物分布図から平面座標を読み取る作業です。北斜面貝層における遺物3D分布見える化に一歩近づきました。

1 グリッド別遺物件数


グリッド別遺物件数順位グラフ

グリッド別遺物件数(素入力件数)は64098件、グリッド数140、グリッド平均遺物件数458件、グリッド最大件数2696件、最小件数1件です。

なお、現状では素入力が完了した状況であり、次の調整を今後順次行う予定です。

ア 貝層サンプルの別枠化

遺物件数の中には遺物とは言えない貝層サンプル(200~300件程度)が含まれています。貝層サンプルは別枠にする必要があります。

イ はみ出し重複の調整

現場で当該グリッドに含めたグリッドはみ出し分を、後日本来のグリッドに移動して遺物台帳に重複記述しています。その重複分(200~300件程度)は調整して解消する必要があります。ただし、遺物分布図には当初のグリッドにそのグリッドの番号で記載されているので、遺物台帳利用実務的には一方を削除することはできません。

2 グリッド別遺物件数棒グラフ3Dモデル

3Dモデル作成技術向上の一環としてグリッド別遺物件数棒グラフ3Dモデルを作成しました。

有吉北貝塚北斜面貝層 グリッド別遺物件数棒グラフ3Dモデル

グリッド最大遺物件数:2696

グリッド最小遺物件数:1

グリッド数:140

遺物件数総数:64098

グリッドの大きさ:2m×2m


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

3 感想

2023年9月から始めた、遺物台帳約64000件の手入力は難行苦行でした。特に標高入力は苦痛でした。しかし、作業末期には右手によるテンキーブラインド入力が超高速化し、意識することなく見た数字を手が自動的に入力するようになりました。楽しい作業に変質しました。

遺物分布図の座標読み取り作業は遺物台帳入力作業より楽のようですから、北斜面貝層プロジェクトの最大の山場は過ぎたようです。まだまだ手作業がつづきますが、できるだけはやく手作業だけ活動から、少しは頭も活用する作業に移行したいものです。


2024年6月14日金曜日

儀礼考古学の方法論

 谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」学習 5


Methodology of ritual archaeology


Study 5 “DOGU & SEKIBOU: Rituals and the Domestication of Society in Prehistoric Jomon” by Yasuhiro Taniguchi


There are four methods of ritual archaeology, but Yasuhiro Taniguchi's “DOGU & SEKIBOU”places the greatest emphasis on the "method based on objects, actions, and context." This is because, although the consciousness of prehistoric people cannot be directly reconstructed, it is possible to understand actions and materials from archaeological materials.


儀礼考古学の方法は4つありますが、谷口康浩著「土偶と石棒」では「モノ・行為・コンテクストによる方法」を最も重視しています。先史時代人の意識は直接復元できないが、考古資料から行為と物質を把握することは可能であるからです。

序章 儀礼考古学の現代的意義

2 儀礼考古学の研究法一モノ・行為・コンテクストー

(1)儀礼考古学の方法論

・この小節では最初に「儀礼」と「祭祀」について定義し、次に儀礼考古学の方法論を4つ列挙し、著者は最後の「モノ・行為・コンテクストによる方法」の重視を述べています。最後に、俯瞰的視点の重要性について触れています。

●「儀礼」と「祭祀」の定義

「本論では広く儀礼を扱う考古学研究を「儀礼考古学」と定義する。

「儀礼」は社会的慣習・規範として形式化した礼儀を指し、儀礼の行為的側面を「儀礼行為」という。儀礼の目的は社会関係の維持・宥和あるいは危険回避にあるため、人間・自然・超自然的存在を含め、その社会にとつて重要なもの、精神的依存度の高いものはすべて儀礼の対象となり得る。「祭祀」は神霊や祖先を大切に祀り、宥和を図って畏怖の念を除き、また加護を願うことを意味する。祭祀は超自然的存在に対する宗教的観念とその絶対的な力への信仰を前提とし、それをおこなう人間の意識的側面を指すのが普通である。祭祀に伴う儀式や行事などは、神霊や祖先を対象とした儀礼行為と捉えることができる。「宗教」は体系化された世界像・神観念をもち、祭祀・儀礼の実践によって人々を精神的共同社会に組織化するもので、高度に純化された儀礼文化と捉えることができる。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

●儀礼考古学の4つの方法

「 ア)歴史的遡及法 現存する伝統的な宗教文化の知識、聖典や歴史記録などの文献をもとに、歴史をさかのぼつて起源や変遷、意味を明らかにする方法。神道考古学がその典型。

イ)民族学的類推法 類似の文化要素やその構造を、民族誌や民俗伝承などを用いて通文化的に比較し、儀礼や信仰の意味・機能を類推する方法。土偶と地母神信仰の比較研究などがその典型。

ウ)図像学・記号論的方法 シンボルの図像学的、記号論的な分析から、図像の意味や精神性を解釈しようとする方法。認知科学や心理学を援用して過去の人々の認知パターンや心理を探る研究法もある。

エ)モノ・行為・コンテクストによる方法 遺物と遺構に残された「モノ」「行為」「状況」を手がかりに、儀礼・信仰の行為的側面と物質的側面を明らかにする方法。(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

●筆者が重視する方法

「本書でもっとも重視するのはこのうちエ)の方法である。宗教や信仰には、意識的側面・行為的側面・物質的側面がある。先史時代の人々の意識的側面を考古資料から直接復元することは困難だが、考古資料の分析から行為的側面と物質的側面を把握することは可能である。

①多くの事例に共通する現象上のパターンから、

②儀礼的行為の型と認定できるものを捉え、

③その行為の背景にあつた観念形態を読み取り、

④遺跡に残されたコンテクストを解釈していく、

という研究手順が、筆者の基本的な接近法である。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

●俯瞰的視点

「人間の文化には個々の要素に還元できない全体的構造がある。縄文中期には土器の文様と造形の大きな変化、土偶と石棒の発達、環状集落の盛行、硬玉製大珠の製作流通といつたさまざまな変化が起こったが、シンボリズムの高揚を示すこうした文化変化が急にあふれ出したのはなぜなのか。また、後期・晩期にも、再葬の発達と葬制の複雑化、環状列石・大規模配石の築造、精製土器の発達、抜歯の盛行、土製耳飾の流行、御物石器・石冠・岩版など石製儀器類の発達といった諸々の変化が複合的に起こつている。個々の要素をばらばらに研究するだけでは、縄文時代後半期のこうした動向の意味を理解することはできないだろう。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

【感想】

・著者は現場発掘調査成果に立脚する考古学者であり、方法論エ)を重視する様子は当然です。同時に俯瞰的視点にもふれていて、狭い専門分野に固執していない思考はとても魅力的に感じます。

この図書をさらに読み進め、この方法論が現場でどのように展開するのか、楽しみです。


顔面付釣手形土器(伊那市御殿場遺跡)観察記録3Dモデル(2024年2月撮影版)の画像

顔面付釣手形土器(伊那市御殿場遺跡)観察記録3Dモデル(2024年2月撮影版)

この画像は記事内容と直接関係ありません。


堀之内式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation record of Horinouchi-style pottery (Chiba city,Kasori shell mounds)


I created a 3D model of the observation record of Horinouchi-style pottery (Chiba city,Kasori shell mounds) that is exhibited at the Kasori Shell Mound Museum's 2023 excavation survey report exhibition.  I enjoyed observing the 3D model, imagining that the wave pattern on the body represents a spiral and the protrusion on the rim represents the tip.


加曽利貝塚博物館の令和5年度発掘調査速報展に展示されている堀之内式土器(千葉市加曽利貝塚)の観察記録3Dモデルを作成しました。胴部の波模様が渦巻を、口縁部突起がその先端を表現していると想像して、3Dモデル観察を楽しみました。

1 堀之内式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

堀之内式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

縄文時代後期中葉

北貝塚第1次調査区Ⅰ区出土

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度発掘調査速報展

撮影月日:2024.05.28


展示の様子

ガラス面越し撮影

3DF Zephyr v7.529 processing 92 images


3Dモデル画像


3Dモデル動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 メモ

3Dモデルで口縁部の突起(把手)をよく見ると正三角形ではなく、しかもねじれているような印象を受ける造作になっています。3つの突起は何れも崩れた三角形でねじれを感じさせます。


突起(正面からオルソ投影)


突起(上から)

この突起から受ける印象をキッカケに、土器文様全体を総合的にみると、胴部波模様が渦巻(らせん)を表現していて、その先端(最上部)が突起であるとの想像を持つに至りました。


渦巻を表現している(想像)

もしこの想像が当たっているとすれば、加曽利E式土器でシンボルとして盛んに使われた渦巻が、後の堀之内式土器でも表現形式を変えて使われていたかもしれないことになり、面白い土器学習テーマとなります。


2024年6月11日火曜日

儀礼祭祀の発達が社会と経済を活性化させる原動力となる

 谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」学習 4


The development of rituals and rites is the driving force behind social and economic revitalization


Study 3 “DOGU & SEKIBOU: Rituals and the Domestication of Society in Prehistoric Jomon” by Yasuhiro Taniguchi


I learned that the extreme development of rituals and rites in the late and final Jomon periods should not be understood as "spreading magic and customs amidst social stagnation due to the cold climate," but as "a factor in the expansion of ritual consumption and the development of trade, which became the driving force behind social and economic revitalization."


縄文後期・晩期の儀礼祭祀の極度の発達が、「寒冷化による社会行き詰まりの中で蔓延した呪術と因習」ではなく、「儀礼的消費の拡大、交易発達の要因となり、社会と経済を活発化させる原動力となった」と、真逆に理解すべきであることを学びました。

序章 儀礼考古学の現代的意義

1 儀礼への問題関心

(3)儀礼考古学の現代的意義-本書のテーマと問題意識-

・この小節では著者の儀礼考古学に関する問題意識が明瞭にかつ簡潔に述べられています。とてもインパクトのある問題意識です。

・その問題意識を一言で表現すると、次のようになります。

「縄文後期・晩期の儀礼祭祀の極度の発達が、「寒冷化による社会行き詰まりの中で蔓延した呪術と因習」ではなく、「儀礼的消費の拡大、交易発達の要因となり、社会と経済を活発化させる原動力となった」と、真逆に理解すべきである。」

・私はこの著者の問題意識を読んで、「そういう問題提起を考古学者にはしてもらいたかったんだ」と膝に手を打って賛同し、この図書をじっくり学習してみようという気持が沸き上がりました。

・私はこの数年の間、「寒冷化による社会困難の増大→呪術の盛行」という論調に大いに疑問を持っていましたので、この図書に触れたことは、自分にとってとても時宜に適ったことです。

【著者が批判する儀礼祭祀のネガティブな評価】

「筆者が疑問視するのは、原始共同体論にみられる儀礼祭祀の偏った見方である。縄文時代における儀礼祭祀の発達の歴史的意味がネガテイブに評価され、生産力の発展に限界を抱える採集経済の停滞性がタブーゃ呪術の発達をもたらしたという歪んだ理解が広がり定着してしまった(藤間1951、坪井1962、岡本1975、稲田1975など)。特に、縄文後期・晩期における儀礼祭祀の極度の発達は、寒冷化による環境悪化に起因した狩猟採集経済の行き詰まり、あるいは社会的同様によりひき起こされた現象と考えられてきた。寒冷化による自然環境の悪化が中期までの順調な発展を行き詰まらせ、動揺した社会秩序を維持するために祭りと呪術が発達したという見解は、縄文時代史を総合的に叙述した近年の多くの著作にも示されている(今村1999・2002、勅使河原1998・2016、同月2000・2007など)。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

【著者の問題意識】

「儀礼祭祀の発達は、はたして採集経済の限界を克服できない原始社会に蔓延していた呪術と因襲の表れなのだろうか。

前著で筆者は、縄文時代における社会複雑化の視座から儀礼祭祀の意味や力を再評価する議論を提起した。筆者が着目するのは、儀礼祭祀の発達に付随した生産の特殊化と経済の活性化である。人口密度が高揚した前期から中期にかけて分節的な親族組織が現れ、葬制が発達し、祖先祭祀を中心とする儀礼祭祀が盛行したが、こうした動きに伴って、それに関連した物質文化が生み出され儀礼的消費の拡大が起こった。後期・晩期にはそれがエスカレートし、土器製塩や朱の生産、漆器製作にみられるように高級品・工芸品を求める生産の特殊化と交換経済の発達が導かれた。東北地方・晩期の亀ヶ岡文化がそうした動向をよく体現しており、華麗な漆器や亀ヶ岡式土器が盛んに生産され、長距離交易を通じてヒスイや南海産貝製品などの希少品が遠隔地から人手されていた。次第にエスカレートするこうした動きが、奢修品を作り出す特殊生産と、製品を遠隔地に配給する長距離交易を発達させる社会的要因となり、延いてはその動きがコメの受容にもつながった。つまり、宗教的儀式や祭宴に伴う儀礼的消費の拡大が生産の特殊化を招き、社会と経済を活発化させる原動力になったと理解するのである。コメも当初は縄文人にとって魅力のある贅沢品であり、珍しいものを遠方から入手し、その作り方を知ること自体に、社会的な意味と価値があつた。東日本・北日本地域の縄文社会が、コメの入手に動いた能動的な理由がそこにあつたと筆者は考えている(谷口2017b)。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)


中空土偶(君津市三直貝塚)

縄文後期~晩期

千葉県教育委員会所蔵

撮影場所:加曽利貝塚博物館 ミニ企画展示「県内縄文遺跡展」-千葉県の縄文時代研究を彩った遺跡たち- 君津市三直貝塚編

撮影月日:2020.07.14

ガラス面越し撮影

中空土偶の画像は本文とは関係ありません。


2024年6月10日月曜日

加曽利E式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation record of Kasori E-type pottery (Chiba city,Kasori shell mounds)


I created a 3D model of the observation record of Kasori E-type pottery (Chiba city,Kasori shell mounds) that is exhibited at the Kasori Shell Mound Museum's 2023 excavation survey report exhibition. The spiral pattern drawn on the rim is a symbol shared by the Jomon people in the Kasori E-type pottery area. I would like to know the meaning of the spiral pattern. Has anyone figured it out?


加曽利貝塚博物館の令和5年度発掘調査速報展に展示されている加曽利E式土器(千葉市加曽利貝塚)の観察記録3Dモデルを作成しました。口縁部に描かれる渦巻文は加曽利E式土器圏縄文人が共有するシンボルです。渦巻文の意味を知りたいです。どなたかが解明しているのでしょうか?


1 加曽利E式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利E式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

縄文時代中期後葉

北貝塚38号土坑出土

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度発掘調査速報展

撮影月日:2024.05.28


展示の様子

ガラス面越し撮影

3DF Zephyr v7.529 processing 93 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 メモ・感想

3-1 加曽利貝塚北貝塚における土器型式例出土位置

展示では北貝塚における主要土器型式例の出土地図が表示されていて、北貝塚の発達史、利用史に対する興味が掻き立てられる仕掛けになっています。


加曽利貝塚北貝塚における土器型式例出土位置

3-2 渦巻文の意味


渦巻文

口縁部に描かれる渦巻文は加曽利E式土器圏縄文人が共有するシンボルです。渦巻文の意味を知りたいです。どなたかが解明しているのでしょうか?


2024年6月8日土曜日

儀礼の実践と物質文化

 谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」学習 3


Ritual Practice and Material Culture


Study 3 “DOGU & SEKIBOU: Rituals and the Domestication of Society in Prehistoric Jomon” by Yasuhiro Taniguchi


I learned that in a non-literate society, it is only possible for people to share concepts such as divine spirits by creating objects (shapes) like dogu. I also learned that the demand for treasures and food and drink necessary for rituals is a major factor that drives society, such as promoting trade.


無文字社会では、神霊のような概念を人々が共有するには、土偶のようなモノ(形)にすることによってはじめて可能であることを学びました。また、儀礼に必要な宝器や飲食需要が交易を促進するなど社会を動かす大きな要因であることを学びました。

序章 儀礼考古学の現代的意義

1 儀礼への問題関心

(2) 儀礼の実践と物質文化

・この小節では文化人類学における儀礼研究(儀礼が社会統合の維持と再生産に重要な機能をはたしているという視点からの研究)とモノをメインに扱う考古学における儀礼研究の違いに触れています。

・考古学は文化人類学の視点を共有すべきであるが、考古学の立場には「儀礼と社会の間に介在する物質文化への視点」を加えたいと著者は述べています。

・最初に「儀礼と社会の間に介在する物質文化への視点」を例示しています。

「結婚式・成人式・葬儀などの人生儀礼や宗教的祭儀なども、さまざまなシンボル・道具・装束・飲食などのモノが介在することで成り立っている。また、神霊のような超越的存在への信仰があったとしても、ある物質の上に形を与えてそれを物象化しなければ、社会の全員が不可視のそれを一定の観念形態として共有することはできず、そうした異界の超越的存在に働きかけたり礼拝したりしようとするにも、行為の対象を物質化する必要がある。土偶や仏像のような偶像、四神や曼茶羅のような図像、十字架のようなシンボルは、形式はさまざまだが心象世界を可視化し表現している点は同じである。ことに無文字社会では、文化を構成する概念や観念はモノを通してはじめて人々に共有化される。モノという媒体がなければ、人々は世界を認知することも世界像を創り出すこともできまい。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・次に北海道アイヌの物質文化と経済、社会組織、儀礼体系が不可分の構造的関係で結びついていることを明らかにした渡辺仁(1972)の研究を紹介しています。

「渡辺は、アイヌ文化の中核にある価値体系としてクマ祭(イオマンテ)とそれに機能的に関連する要素群を挙げ、「クマ祭文化複合体」として概念化している。クマ祭は、クマとなって恵みをもたらしてくれたカムイに感謝し、饗宴と贈り物で懇ろにもてなした後にカムイの国に送り返す儀式であり、アイヌ社会最大の集団祭儀となっている。この祭自体は、アイヌ固有の神観念や生物不死の信仰に基づく宗教的活動といえるが、社会。経済・技術にまたがる多くの文化要素がそれと結びついて一体構造を形成している。この祭儀がもつ社会的側面として注目されるのは、クマのカムイに捧げるイナウに、シネ・イトㇰパ集団と称する父系血縁集団の共有するエカシ・イトㇰパ(祖印)が刻まれ、共同祭儀の挙行が、個々のコタンを超えて広がるシネ・イトㇰパ集団の統合と連帯を維持する機制にもなっていた事実である。また、アイヌがシャモ(和人)社会との間に毛皮交易などの関係を保ったのも、多くの祭儀に不可欠な酒器として用いる漆器や、男が儀式の時に帯びる刀剣を入手することが大きな目的であった。クマのイオマンテをはじめとする集団的祭儀や神々に対する多様な儀礼(カムイノミ)が、特別な宝器や飲食の需要を生み、それが交易を含めた経済活動を動機づける要因となっていた。カムイの信仰と世界観こそがアイヌ文化の神髄であり、それがアイヌの生活と経済活動を成り立たせていたと渡辺は考察している。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・著者はこのアイヌモデルが縄文社会研究においても参考になると述べています。

・渡辺仁(1972)「アイヌ文化の成立-民族・歴史・考古諸学の合流点-」(考古学雑誌、58-(3)、47-64p)は入手して読むことにします。

・さらに縄文時代の儀礼と装身具需要とその生産特殊化促進が例示されています。

「儀式祭礼に参加する者は正装し威儀を正すのが通例である。縄文時代には儀礼・祭祀の盛行とともに装身具が発達した。装身具の製作にはその時代の最高級の素材と技術の粋が投じられているが、高品質の装身具が求められた理由の一つは、儀礼用の正装にあったと考えられる。縄文時代には、高級装身具を生産する特殊生産が開始し、また製品を流通・交換する交易組織が発達した。前期に盛行した瑛状耳飾、中期に本格的生産が開始した硬玉製玉類、後期・晩期に盛行した土製耳飾や漆塗り竪櫛などは、希少品を入手できる者の存在感を引き立て、威信を高めたであろう。後期・晩期に個人が侃用する刀剣形石製品や叉状鹿角製品が盛行したのも、儀礼の正装に関係していたと考えられる。こうした装身具への需要もまた、生産の特殊化を促進する要因となっていた。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・儀礼にかかわるモノ情報から縄文時代の文化・生活・経済活動の様子を少しでもあぶりだす(可視化する)ことが儀礼考古学の目的であると理解します。

【余談】

・アイヌモデルの紹介の中で、イナウの刻印の話しが出てきますが、千葉県印西市の西根遺跡から出土した縄文時代後期「杭」にも刻印と呼べる加工跡があります。縄文時代のイナウが近代アイヌのイナウの祖形かもしれません。


西根遺跡出土イナウ似木製品

縄文後期イナウ似木製品

【飛躍した感想】

エジプトのピラミッド建設は国家規模の儀礼活動の一環の活動であると言えます。そのピラミッド建設という活動は国家規模での経済活動の活性化の中で行われました。儀礼活動が社会運営の中軸となっています。秦の始皇帝の皇帝陵と兵馬俑建設も同じような儀礼活動の一環であり、国家の経済社会運営の中軸となってたと考えます。

ウクライナのスキタイ古墳発掘では、豪華な4.5kgの金製品や盛大な葬儀宴会の跡(3000人分の肉消費跡)、多人数の女、子ども、使用人の殉死者が出土しています。紀元前4世紀スキタイ社会では葬儀という儀礼が社会の富と人材を大規模に消費する活動でした。

2024.06.07記事「趣味の考古学切手 スキタイの胸飾り (ウクライナ2013年小型シート)

これらの断片的な事例を思い出すだけで、縄文社会の儀礼と社会運営の関連について「自分の問題意識がこれまでなんと希薄であったことか」と深く反省の念にかられます。

これまでの自分縄文学習は祭祀は祭祀、生業は生業と区別して学習してきました。その区別して学習するスタイルが間違いであることに気が付きました。

その時期の縄文社会運営を貫いている儀礼活動を発見しなければならないのです。


ミミズク土偶

安行系ミミズク土偶 下ヶ戸貝塚 観察記録3Dモデルのオルソ投影画像(我孫子市教育委員会1階ロビー展示)

ミミズク土偶画像は記事内容とは関係ありません。

曽利式系土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation records of Sori-type pottery (Chiba city, Kasori shell mounds)


I created a 3D model of the observation records of Sori-type pottery (Chiba city, Kasori shell mounds) exhibited at the Kasori shell mounds museum's 2023 excavation survey report exhibition. The rough sunken line pattern makes me imagine the rough touch of the hand when I lifted this pottery.


加曽利貝塚博物館の令和5年度発掘調査速報展に展示されている曽利式系土器(千葉市加曽利貝塚)の観察記録3Dモデルを作成しました。粗々しい沈線文の様子から、この土器を持ち上げた時のザラザラした手の触覚が脳裏に生起してしまいます。

1 曽利式系土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

曽利式系土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

縄文時代中期後葉

北貝塚第4次調査区土坑出土

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度発掘調査速報展

撮影月日:2024.05.28


展示の様子

ガラス面越し撮影

3DF Zephyr v7.529 processing 120 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 メモ・感想

3-1 加曽利貝塚北貝塚における土器型式例出土位置

展示では北貝塚における主要土器型式例の出土地図が表示されていて、北貝塚の発達史、利用史に対する興味が掻き立てられる仕掛けになっています。


加曽利貝塚北貝塚における土器型式例出土位置

3-2 触覚的感覚

この大きな曽利式系土器の粗々しい沈線文の様子から、この土器を持ち上げた時のザラザラした手の触覚が脳裏に生起してしまいます。