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2026年6月16日火曜日

第1断面谷頭部における出土土器の型式

 Pottery Types from the Valley Head of Section 1


I have extracted pottery with a determined type from the valley head of Section 1. Within the ±0.5m box, there is only one piece, which is a Kasori EII type, mid-to-late stage pottery. The excavation site is directly below a gully erosion cliff. This indicates that gully erosion in this section was active during the Kasori EII type, mid-to-late stage. This is very valuable information for considering the development history of shell beds.


第1断面谷頭部における型式判明土器を抽出しました。±0.5mボックス内では1件だけで、加曽利EⅡ式中~新段階土器です。出土位置はガリー侵食崖直下です。この状況からこの断面のガリー侵食は加曽利EⅡ式中~新段階期にアクティブであったことが判ります。貝層発達史を考える上でとても貴重な情報です。

1 第1断面谷頭部 ±0.5m幅ボックス内土器片の投影図


第1断面谷頭部 ±0.5m幅ボックス内土器片の投影図

±0.5mボックス内では1件だけで、加曽利EⅡ式中~新段階土器です。出土位置はガリー侵食崖直下です。

ボックス幅を±1mにひろげると崖頂部近くに阿玉台式土器1件が出現します。


参考 第1断面谷頭部 発掘調査報告書貝層区分

2 考察

2-1 加曽利EⅡ式中~新段階期前後の状況

加曽利EⅡ式中~新段階土器がガリー侵食急崖直下から出土しているので、この急崖がアクティブであった状況下で、急崖上の台地縁から貝殻や土器片投棄があったと考えられます。この情報からこの付近は加曽利EⅡ式中~新段階期にもガリー侵食が進行していたことを確認できます。同時に加曽利EⅡ式中~新段階期から加曽利EⅡ式新段階期までに崖がほぼ完全に埋め立てられたことも確認できます。土器北斜面貝層の貝層発達史を考える上でとても貴重な情報です。

2-2 阿玉台式土器出土の意義

断面から±1mまでボックスの幅を広げると急崖の上の方に阿玉台式土器が出土します。この情報から次の状況を推察します。

阿玉台土器が加曽利EⅡ式中~新段階期に台地縁から投棄された可能性もゼロではないと考えます。しかし、各土器型式はその型式が使われていた時期に投棄されたと想定して検討し、つぎのように考えます。

阿玉台式期にこの当たりは既にガリー侵食が進み急崖ができていた。阿玉台期には阿玉台式土器が投棄され、その一部は崖の途中に引っかかるようにして堆積した。ガリー侵食はその後も続き、加曽利EⅡ式中~新段階期の崖は阿玉台式期の崖から50㎝ほど離れた場所に発達していた。加曽利EⅡ式中~新段階期以降急崖は急激に投棄貝殻で埋め立てられた。

2-3 第30断面との比較


参考 第30断面(剥取断面)±0.5m幅ボックス内土器片の投影図

ガリー侵食谷の下流に位置する第30断面では斜面貝層の年代は中峠式期に遡ります。従って、第30断面では遅くとも中峠式期にはガリー侵食活動は終了しています。それと較べると第1断面谷頭部は大変新しい時期(加曽利EⅡ式中~新段階期)までガリー侵食活動が継続していたことになります。ガリー侵食活動のアクティブな状況が下流から上流に向かって移動してい様子を推察することができます。


2026年6月8日月曜日

第30断面(剥取断面)出土土器の型式

 Types of Pottery Excavated from Section 30 (Exfoliated Section)


I have examined the types of pottery excavated from Section 30 (exfoliated section). The number of pottery fragments whose types can be identified is limited, so only limited information can be obtained. It is clear that the sloping shell layer in this section dates back at least to the Nakabyo period, and that the channel-type shell layer was formed during the Kasori EII new stage. If the types of pottery fragments excavated from the collapsed layer can be identified, the age of the cliff formation (i.e., the start of shell mound utilization) can be estimated.


第30断面(剥取断面)出土土器の型式を概観してみました。型式が判る土器片の数が限られ限定的な情報しか得られません。この断面の斜面性貝層が少なくとも中峠式期まで遡ることと、流路性貝層が加曽利EⅡ式新段階期に形成されたことは判ります。崩落層中から出土した土器片の型式が判れば、急崖形成年代(=貝塚利用開始時期)が推定出来ます。

1 第30断面(剥取断面)±0.5m幅ボックス内土器片の検討


第30断面(剥取断面)±0.5m幅ボックス内土器片の投影図


第30断面(剥取断面)±0.5m幅ボックス内土器片の投影図


参考 第30断面(剥取断面)の貝層区分(案)

1-1 型式判明土器片

型式が判る土器片の数17、型式が調べられていない土器片の数883です。型式が判った出土土器片が存在していること自体大変素晴らしい発掘成果ですが、その数はこの断面では1.93%に過ぎません。(北斜面貝層全体で3D座標を備える型式判明土器片数は647、全土器片数は17481で、型式判明土器片数率は3.7%です。)

1-2 斜面性貝層

斜面性貝層で型式が判っている土器片は3つです。この情報から次のことが判明します。

この斜面での土器片投棄(=貝殻投棄)は少なくとも中峠式期に遡ることが確認できます。

R1層から中峠式土器が出土していますが、この情報から言えることは「R1層は中峠式期かそれ以降の時期に堆積した」ということです。斜面性貝層では斜面上部で各時期の土器片が混じる可能性があるので、出土土器片の情報だけからその貝層堆積の時期をドンピシャ確定することは困難です。多数土器片の型式が判れば、ある程度絞って堆積時期を推定することができます。

R3層から中峠式土器が出土しています。この貝層は別の検討でもっと新しい時期と推定しています。また同じ中峠式土器が出土したR1層より堆積時期が新しい貝層です。従って、R3層堆積時期推定に中峠式土器片出土を使うことはできません。

S3層から加曽利EⅡ式中~新段階土器が出土しています。この情報だけから言えることは「S3層は加曽利EⅡ式中~新段階期かそれよりも新しい時期に堆積した」ということです。しかし、S3層の下層のX層からより新しい加曽利EⅡ式新段階土器が出土しているので、他のS3層出土土器片を調べれば加曽利EⅡ式新段階土器が含まれていることが想定できます。

1-3 流路性貝層

X層とD4層から型式判明土器片14が出土しています。最も新しいのは加曽利EⅡ式新段階土器です。

流路性貝層は斜面性貝層が高濃度流(土石流類似事象)で運ばれてきて堆積したもので、母層は各時期斜面性貝層です。従って、複数の土器型式が含まれていて、その堆積時期は最も新しい型式の時期かそれより新しい時期です。北斜面貝層における貝層発達は加曽利EⅡ式新段階期で終了しますので、X層とD4層の堆積時期は加曽利EⅡ式新段階期と特定できます。

2 崩落層出土土器片


崩落層中の貝殻含有層と出土土器片

崩落層中から土器片が出土しています。また崩落層の基底層は貝殻を含有しています。この事実から次の事柄を確認することができます。

・ガリー侵食でフレッシュな急崖(比高8m)が出来た直後から貝殻・土器片投棄が行われた。

・その後急崖上部の崩壊(崖崩れ)が生起したが、この崩壊現象が生じた期間にも土器片投棄が行われた。

・急崖上部が崩壊して急崖全体が安定してから貝殻投棄(及び遺物投棄)が本格化した。

以上の事実から、崩落層中土器片の型式が判明すれば、第30断面における急崖形成時期=貝殻投棄開始時期が判明します。