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2019年6月6日木曜日

加曽利B2式土器 西根遺跡 粗製6単位波状口縁深鉢

縄文土器学習 148

西根遺跡出土加曽利B2式土器の観察を行っています。この記事では粗製6単位波状口縁深鉢を観察して、西根遺跡出土物観察を一旦区切ります。なお、今後の西根遺跡加曽利B式土器学習を展望しました。

1 504番土器

504番土器 粗製6単位波状口縁深鉢 (千葉県教育委員会所蔵)

504番土器 粗製6単位波状口縁深鉢 (千葉県教育委員会所蔵)

504番土器 粗製6単位波状口縁深鉢 内面 (千葉県教育委員会所蔵)

504番土器 報告書掲載写真
西根遺跡発掘調査報告書から引用

504番土器 挿図
西根遺跡発掘調査報告書から引用

504番土器 観察表
西根遺跡発掘調査報告書から引用

2 発掘調査報告書における504番土器の記載
「504は6単位の波状口縁で、紐線文間に半載竹管でやや長めの短線文が入り、胴部には集合斜線文が施される」
西根遺跡発掘調査報告書から引用

3 メモ
・第4集中地点出土の粗製深鉢で、口径24.6cm、底径9.2cm、器高36.3cm、容量8.2リットル、残存率90%です。
・粗製深鉢で波状のものは比較的少なくなっています。
・西根遺跡出土粗製深鉢の平均容量が17.3リットルですからこの土器は小ぶりであるといえます。特大土器がいわば業務用(集団用)であるのに対して、このような小ぶり土器は家庭用と、自分は捉えています。

4 西根遺跡土器学習の展望
西根遺跡出土縄文土器を観察してその多様な様相に驚きました。同時に西根遺跡発掘調査報告書を読むと第1・第2集中地点が加曽利B1式、第3・第4集中地点が加曽利B2式、第5・第6・第7集中地点が加曽利B3式であることを知りました。さらに次のような分析が事細かく実施され記録されています。
・土器形式の詳しい分析(器種変遷)と粗製土器・精製土器セットの把握。
・地点別詳細分析
・土器量の把握分析
・土器遺存度の分析
・補修孔に関する土器の分析
・整形技法(底部・内面)、表面処理に関する分析
・網代痕に関する分析
・土器容量に関する分析
・土器使用痕(コゲ、被熱痕)に関する分析
・土器集中地点の復元(グリッド単位復元)
・漆に関する分析
・年代測定
以前西根遺跡について学習した時は木製品をメインとし、土器に関する興味はなかったのですが、土器に興味を持って西根遺跡発掘調査報告書を読むと、加曽利B式土器の変遷と実像を詳しく知ることが出来る最良の資料であることが判りました。
そこで土器学習の一環として西根遺跡土器学習を一つの学習プロジェクトとして今年度後半に他のプロジェクトとともに取り組むこととします。
学習イメージは次の640土器観察表を統計処理したり、分布図を作成したりして、発掘調査報告書記載事項をデータレベルで追体験しさらに課題発見することです。

西根遺跡土器観察表 部分
なお、幸いなことに木製品学習でグリッド(2m×2m)をすでにQGISに展開してあり、一部データ(土器片量、土器重量、焼骨重量)は立体分布図等を作成していますから、土器詳細学習はスムーズに着手できると楽観します。

QGISに展開した西根遺跡グリッド(色は土器重量の区分表示)

西根遺跡土器のデータレベル学習は、加曽利B式土器の変遷や土器利用について学習を深めるだけでなく、縄文土器全体の理解促進に資すると考えます。



2019年6月4日火曜日

加曽利B2式土器 西根遺跡 漆パレット再利用品

縄文土器学習 145

西根遺跡出土加曽利B2式土器の観察を行っています。この記事では漆パレット再利用品を観察します。

1 352番土器 漆パレット再利用品

352番土器 漆パレット再利用品 (千葉県教育委員会所蔵)

352番土器 報告書掲載写真
西根遺跡発掘調査報告書から引用

352番土器 挿図
西根遺跡発掘調査報告書から引用

352番土器 観察表
西根遺跡発掘調査報告書から引用

2 発掘調査報告書における352番土器の記載
「352は粗製深鉢形土器の底部と考えられる破片である。内面に漆が付着しており、漆液容器として使用された遺物である。漆は部分的に濃淡がある。内面の底面中央に器面の剥離が認められる。」
西根遺跡発掘調査報告書から引用

3 漆付着の様子

352番土器 内面 (千葉県教育委員会所蔵)
観察土器は放射性炭素測定資料採取のためにあらかたの漆が除去されています。

352番土器漆付着の様子
西根遺跡発掘調査報告書から引用
出土した時の漆付着の様子写真です。

漆パレットは別にもう1点出土しています。
漆パレットの出土は生業としての漆製品づくりが行われていた証拠となります。それは漆木の管理が伴っていたことも指し示します。

4 西根遺跡出土ベンガラ漆塗り飾り弓
西根遺跡から加曽利B2式土器とともに赤漆が塗られた飾り弓が出土しています。
赤色成分はベンガラ(赤色酸化鉄)と分析されています。
漆パレットが出土していること、漆塗り土器が多数出土していることから、西根遺跡付近でこの飾り弓がつくられた可能性が高まります。

西根遺跡出土飾り弓 (千葉県教育委員会所蔵)

西根遺跡出土飾り弓 拡大 (千葉県教育委員会所蔵)

5 参考 西根遺跡出土 古代漆パレットと漆製品
西根遺跡の古墳時代後期~奈良・平安時代流路から漆パレット(土師器)と漆製品が、漆関連墨書土器が出土しています。
西根遺跡出土 古代漆パレット(土師器) (千葉県教育委員会所蔵)

西根遺跡出土 古代漆製品 (千葉県教育委員会所蔵)

西根遺跡出土 墨書文字「息」(千葉県教育委員会所蔵)
墨書文字「息」は発音「ソク」であり乾漆を表していて、麻を材料とした漆製品製造の発展を祈願していると考えられます。
2016.04.11記事「西根遺跡の漆関連出土物

6 メモ
6-1 生業としての漆製品製作
・漆パレットの出土により加曽利B2式期頃西根遺跡付近の下総地方で漆栽培管理、漆液の各種利用、漆製品の製作が行われていたことが判ります。
・漆パレット付着漆の放射性炭素年代測定結果は3400±50calBPという結果になっています。
・漆による黒色処理土器は観察表掲載640土器中28(4.4%)を数えます。
・参考 炭素吸着による黒色処理土器は79(12.3%)を数えます。

6-2 古代における漆産業
乾漆を表す「息」(ソク)が墨書土器として同じ西根遺跡から出土していることから、縄文時代後期以降古代までこの付近で漆製品作成が継続して行われていたと推察できます。


2019年6月2日日曜日

加曽利B2式土器 西根遺跡 内面炭素吸着精製鉢

縄文土器学習 142

西根遺跡出土加曽利B2式土器の観察を行っています。この記事では内面炭素吸着精製鉢を観察します。

1 412番土器

412番土器 (千葉県教育委員会所蔵)
・口縁部が強く屈折して内傾し、胴部はやや浅身となる土器です。

412番土器 報告書掲載写真
西根遺跡発掘調査報告書から引用

412番土器 挿図
西根遺跡発掘調査報告書から引用

412番土器 観察表
西根遺跡発掘調査報告書から引用

2 発掘調査報告書における412番土器の記載
「412は口縁部に2条の平行沈線が入り、連続した刻み目がみられる。肩部には磨消縄文帯があり、逆錨状の沈線区画の中に縄文が残る。この縄文は粒が非常に小さく、或いは撚糸文の可能性も認められる。屈曲部には連続した刻み目が入り、胴部上半は斜線文が鋸歯状に施され、胴部下半はミガキがなされる。」
西根遺跡発掘調査報告書から引用

3 412番土器内面

412番土器 内面 (千葉県教育委員会所蔵)
・土器内面は全面が炭素吸着による黒色処理がなされています。外面は黒色になっていない部分があります。

4 メモ
・第4集中地点出土精製鉢で、口径27.4cm、底径8.4cm、器高14.1cm、容量6.3リットル、残存度80%です。
・被熱痕は観察されません。
・内面は炭素吸着による黒色処理がなされています。

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参考 西根遺跡出土土器閲覧記事リスト
2019.05.26記事「加曽利B2式土器 西根遺跡 その1
2019.05.27記事「加曽利B2式土器 容量約70リットルの巨大壺
2019.05.28記事「加曽利B2式土器 西根遺跡 オコゲべったり土器
2019.05.29記事「加曽利B2式土器 西根遺跡 漆塗り算盤珠形土器
2019.05.31記事「加曽利B2式土器 西根遺跡 補修孔付き5単位波状口縁土器

2019年5月31日金曜日

加曽利B2式土器 西根遺跡 補修孔付き5単位波状口縁土器

縄文土器学習 140

西根遺跡出土加曽利B2式土器の観察を行っています。この記事では補修孔付き5単位波状口縁土器を観察します。

1 377番土器

377番土器 (千葉県教育委員会所蔵)
・5単位の波状口縁土器です。

377番土器 部分拡大 (千葉県教育委員会所蔵)
・横走沈線で区画視された部分に沈線で矢羽状線文が描かれています。

377番土器報告書掲載写真
西根遺跡発掘調査報告書から引用

377番土器挿図
西根遺跡発掘調査報告書から引用

377番土器観察表
西根遺跡発掘調査報告書から引用

2 発掘調査報告書における377番土器の記載
「377は5単位の波状口縁で、胴部中位の横走の沈線区画内に矢羽状線文を充填する。施文は下位から上位に向かって行われている。無文部は丁寧なミガキがなされる。口縁部に補修孔がみられる。」
西根遺跡発掘調査報告書から引用

3 377番土器内部

377番土器内部 (千葉県教育委員会所蔵)

補修孔
・波状口縁の凹んだ付近に補修孔1点が観察できます。土器内面から孔を丁寧に掘っています。孔は正円に近い形状です。
・波状口縁の凹んだ付近は力学的に弱い部分で、この部分に入ったヒビが拡大しないように2つの補修孔を開け紐で結んだものと想像します。

4 メモ
・第4集中地点出土、口径29.0cm、底径10.4cm、器高29.0cm、容量3.9リットルの5単位波状口縁精製深鉢です。残存率は70%です。
・被熱を受けています。
・補修孔があることからヒビが入ってからも丁寧に扱われたことがわかります。またヒビが入ってからは、少なくとも補修孔より上まで液体を満たしたことはないと想像します。

2019年5月29日水曜日

加曽利B2式土器 西根遺跡 漆塗り算盤珠形土器

縄文土器学習 139

西根遺跡出土加曽利B2式土器の観察を行っています。この記事では漆塗り算盤珠形土器を観察します。

1 446番土器

446番土器 (千葉県教育委員会所蔵)
・算盤珠形土器といわれる器形をしています。土器下部には被熱痕が観察できます。
・土器全体が黒色です。

446番土器部分拡大 (千葉県教育委員会所蔵)

446番土器報告書掲載写真
西根遺跡発掘調査報告書から引用

446番土器挿図
西根遺跡発掘調査報告書から引用

446番土器観察表
西根遺跡発掘調査報告書から引用

2 発掘調査報告書における446番土器の記載
「446~462は算盤珠形の精製鉢形土器L類であり、肩部に磨消縄文帯がある。446は肩部の文様は5単位で、対弧文と円形文があり、円形文中央に縦に区画する貼付文を垂下し、その上側に連続した刻みを加え、垂下文の両側に沈線を配している。この部分の縄文のみ沈線の後で縦方向施文する。屈折部に連続した刻み、胴部上半に円形竹管文を垂下沈線と横走沈線の切れ目にほぼ2列に入れる。文様帯部分の地文に細かいLRの縄文を施している。施文順位は縄文、沈線、円形竹管の順である。胴部中位以下はミガキが施される。」
西根遺跡発掘調査報告書から引用

3 446番土器内部

446番土器内部 (千葉県教育委員会所蔵)

漆残存部分
・土器内面の一部に明瞭な漆残存を観察できます。この土器は漆塗りの鮮やかな黒色土器であったと考えられます。
・漆はC14年代測定が行われその較正歴年代は3270±60calBPという結果が出ています。

4 メモ
・第4集中地点出土、口径21.1cm、底径6.8cm、器高24.8cm、容量6.2リットルの精製鉢(算盤珠形土器)です。残存度は75%です。
・被熱を受けています。
・漆による黒色処理が行われています。低地遺跡であることから漆が残存したと想定できます。
・漆のC14年代測定は3270±60calBPという結果が出ています。

2019年5月28日火曜日

加曽利B2式土器 西根遺跡 オコゲべったり土器

縄文土器学習 137

西根遺跡出土加曽利B2式土器の観察を行います。この記事ではオコゲがべったりつく容量46リットルの大きな粗製深鉢を観察します。

1 64番土器

64番土器 A面 (千葉県教育委員会所蔵)

64番土器 B面 (千葉県教育委員会所蔵)

64番土器挿図
西根遺跡発掘調査報告書から引用

64番土器観察表
西根遺跡発掘調査報告書から引用

2 64番土器写真拡大

64番土器A面1 (千葉県教育委員会所蔵)

・上部はススで真黒くなっています。

64番土器A面2 (千葉県教育委員会所蔵)

・下部は被熱で白くなっています。土器の底付近まで白くなっているので、土器の底付近から焔を受けていたと考えられます。

64番土器B面1 (千葉県教育委員会所蔵)

・土器上部はススで完全に真っ黒になっています。

64番土器B面2 (千葉県教育委員会所蔵)

・土器下部の焔で白くなった部分の途中に黒い帯があります。その黒い帯は炉の土器固定具の跡であると想定します。炉の土器固定具は廃用土器リサイクル品であったのではないだろうかと想像します。

3 64番土器内部写真

64番土器内部写真 (千葉県教育委員会所蔵)

・土器内側口縁部直下に太い2本の沈線が刻み込まれています。

64番土器内部写真 拡大 (千葉県教育委員会所蔵)

・土器内部底付近にオコゲが分厚くこびり付いています。

4 メモ
・第1集中地点出土、口径49cm、底径13.2cm、器高55.2cm、容量46.2リットルの粗製深鉢です。残存度は全体で90%です。
・被熱の跡が顕著です。内部底部に分厚くオコゲが付着しています。大量堅果類の煮沸に使われたと想定できます。
・ほとんど完形の姿を残す巨大廃用土器をわざわざ丸木舟で西根遺跡まで運び、そこで破壊したと想定できます。

5 空想
この土器を破壊する時の様子を以前次のように空想しました。

土器破壊の空想



2019年5月27日月曜日

加曽利B2式土器 容量約70リットルの巨大壺

縄文土器学習 136

西根遺跡出土加曽利B2式土器の観察を行います。この記事では容量約70リットルの巨大壺を観察します。

1 437番土器

437番土器 A面 (千葉県教育委員会所蔵)

437番土器 B面 (千葉県教育委員会所蔵)

437番土器挿図
西根遺跡発掘調査報告書から引用

437番土器観察表
西根遺跡発掘調査報告書から引用

2 437番土器写真拡大

437番土器A面1 写真倒立 (千葉県教育委員会所蔵)

437番土器A面2 写真倒立 (千葉県教育委員会所蔵)

437番土器B面1 写真倒立 (千葉県教育委員会所蔵)

437番土器B面2 写真倒立 (千葉県教育委員会所蔵)

3 メモ
・第4集中地点出土、口径35.7cm、底径8.8cm、器高74.1cm、容量69.7リットルの粗製壺で西根遺跡出土土器の最大級のものです。残存度は90%で底部外側下端が摩滅しています。
・強く被熱していて大量堅果類の煮沸に使われたと想定できます。
・ほとんど完形の姿を残す巨大廃用土器をわざわざ丸木舟で西根遺跡まで運び、そこで破壊したと想定できます。