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2026年6月23日火曜日

第1断面谷頭部の遺物分布ヒートマップ

 Heat Map of Artifact Distribution at the Head of the Valley (Section 1)


I created a heat map showing the distribution of pottery, stone tools, and bone/tooth artifacts at the head of the valley in Section 1 of the shell midden located on the northern slope of the Ariyoshi-Kita Shell Midden. The map reveals a concentration of artifacts near the area of ​​the shell layer situated in the middle section of the stratigraphy. This distribution map provides valuable information suggesting that shells, pottery, stone tools, and bone/tooth artifacts were all discarded from the edge of the plateau down to the same location at the base of the cliff.


有吉北貝塚北斜面貝層の第1断面谷頭部の土器、石器、骨歯の分布ヒートマップを作成しました。層序中段の貝層分布域付近に遺物分布が集中しているように観察できます。この分布図は、貝殻と土器・石器・骨歯が台地面縁から崖下の同じ場所に投げ込まれたと推測できる貴重な情報です。

1 第1断面谷頭部の遺物分布ヒートマップ


第1断面谷頭部土器分布ヒートマップ


第1断面谷頭部石器分布ヒートマップ


第1断面谷頭部骨歯分布ヒートマップ


第1断面谷頭部土器石器骨歯分布ヒートマップ


参考 第1断面谷頭部貝層区分(区分は発掘調査報告書による)

2 メモ

2-1 層序中段の混土貝層付近に遺物が集中

層序中段の混土貝層分布域付近に遺物分布が集中しているように観察できます。これらの分布図は、貝殻と土器・石器・骨歯が台地面縁から崖下の同じ場所に投げ込まれたと推測できる貴重な情報です。

2-2 基底混土貝層付近に遺物がない

基底混土貝層付近に遺物がほとんど分布しません。谷頭部ができた直後は貝殻の投棄はしたけれども土器、石器、骨歯の投棄はほとんどなかったことになります。なぜそうなのか、その理由に興味が深まります。

2026年6月18日木曜日

第1断面谷頭部の混貝土層母材の供給源

 Source of the Mixed Shell Soil Layer at the Head of the Valley in Section 1


At the head of the valley in Section 1, there are no landslides or collapsed layers. Nevertheless, the steep cliff is completely filled with a mixed shell soil layer. I have long wondered where this parent material came from. However, by examining the cross-section in a 3D topographic model, I was able to estimate the topography of the parent material's source.


第1断面谷頭部では崖崩れがなく、崩落層がありません。にもかかわらず急崖は混貝土層で埋めつくされています。その母材がどこからきたものか以前から疑問でした。しかし地形3Dモデルのなかで断面を見ると母材供給源の地形を推定できました。

1 第1断面谷頭部貝層区分


第1断面谷頭部貝層区分

この貝層区分図は発掘調査報告書区分をセクション図にトレースしたものです。

第1断面谷頭部はガリー侵食による急崖となっています。この急崖には崖崩れがありません。従って急崖下には崩落層がありません。

急崖頂部から投棄された貝殻が急崖直下と混貝土層の途中に混土貝層として分布しています。

この貝層発達を見て、混貝土層と土層の母材の起源がどこであるのか、以前から疑問として残っていました。

下流の斜面貝層が発達する断面では崩落層の存在から急崖の頂部に崖崩れを想定できて、崖崩れが崩落層や混貝土層母材の供給源として推定できました。


参考 第30断面(剥取断面)崩落層の母層(崩落母層)の推定

2 第1断面谷頭部 母材供給源の推定


第1断面谷頭部 母材供給源の推定

地形モデルの中で第1断面をみると、第1断面と台地平面部との間に小崖と言えるような急斜面部が存在しています。この小崖から第1断面急崖を埋める混貝土層、土層の母材が供給されていたと推定します。

この小崖はその分布からガリー侵食とは無関係な地形と判断できます。


2022年10月9日日曜日

阿玉台式・中峠式土器の谷頭部3D分布

 3D distribution of Atamadai-style and Nakabyo-style pottery in valley head


Observing the 3D distribution of Atamadai-style and Nakabyo-style pottery on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. In this article, I observed the state of the valley head. Nakabyo-style pottery was dumped from the upper part of the valley head towards the bottom of the valley, and the action remains physically on the steep slope.


有吉北貝塚北斜面貝層の阿玉台式・中峠式土器の3D分布を観察しています。この記事では谷頭部の様子を観察しました。中峠式土器が谷頭上部から谷底に向かって投棄され、その行為が急斜面に物的に残っています。

1 谷頭部の位置

谷頭部の位置は次図に示す通りであり、ガリー侵食の急崖が台地面に立地する竪穴住居群に迫っています。


谷頭部の位置

2 中峠式土器61(赤)と141(青)の3D分布

中峠式土器61(赤)と141(青)の3D分布

赤立方体:61土器(中峠式)の破片

青立方体:141土器(中峠式)の破片

白立方体:阿玉台式土器及び中峠式土器の破片

立方体の大きさは0.3m×0.3m×0.3m

白線は谷頭部縁取線及び貝層断面図基底線


61土器と141土器分布の立面投影

3D distribution of Nakabyo pottery 61 (red) and 141 (blue)

Red cube: Fragment of 61 pottery (Nakabyo-style)

Blue cube: Fragment of 141 pottery (Nakabyo-style)

White Cube: Fragment of Atamadai-style and Nakabyo-style pottery

The size of the cube is 0.3m x 0.3m x 0.3m

The white line is the border line of the valley head and the base line of the cross section of the shell layer.


「中峠式土器61(赤)と141(青)の3D分布」画像

3 メモ(観察と考察)

3-1 61土器は谷頭上部から谷底に向かった投棄された

61土器は谷頭部急斜面に堆積破片が7点直線状に分布し、その延長約9m、比高4.5mになります。水平面に対する角度は34度です。傾斜34度の急斜面の崖の上から61土器が投げ込まれ、砕けながら散らばった様子として観察することができます。


Blender3D空間で角度を計測している様子

3-2 中峠式期には谷頭上部から貝が投棄され、斜面に混貝土層が形成されていた

最上位の破片は貝層(混貝土層)が堆積する範囲外の急斜面部土層から、それ以外は急斜面を埋めて堆積する貝層(混貝土層)から出土します。この事象から、中峠式期にはすでに谷頭最上部から投棄される貝によって急斜面に広範囲に貝と崩れ落ちる土が混じった混貝土層が生成していたことが判ります。

3-3 ガリー侵食による谷頭急斜面後退は緩やかだった

中峠式期土器と混貝土層が急斜面で出土することは、この急斜面(ガリー侵食による急斜面)がすくなくとも中峠式期以降には侵食されていないことを証明します。つまり、61土器出土付近の斜面は、中峠式期以降「ガリー侵食が発達して急崖が後退した」という現象を否定します。

谷頭急斜面において最も侵食が激しい付近は、地形の様子から61土器破片が並ぶ付近と一致するように観察できます。従ってガリーによる谷頭浸食は中峠式期以降は低調であったと考えることができます。この考えは下流貝層断面に谷頭浸食に起因する土砂層がほとんど見られないこととも整合します。

3-4 仮説 谷頭からの貝投棄による混貝土層生成がガリー侵食を抑制した

「ガリー侵食による谷頭急斜面後退は緩やかだった」という事象は混貝土層がガリー侵食を抑制したからであると捉えることが出来る可能性があります。貝片を混ぜた土材料は現代土木でも難侵食材料として使われます。縄文人による長期にわたる貝投棄が結果としてガリー侵食拡大防止に役立った可能性に着目する必要があります。

3-5 谷頭から投棄された土器は流水で下流に運ばれた

141土器は急斜面に堆積する混貝土層から1点の破片が、12m程下流に別の1点の破片が出土します。なお、下流の1点はガリー流路堆積層のかなり上部(混土貝層)から出土していて、加曽利EⅡ式土器がその層位より下位から出土しています。この事象から、下流1点は加曽利EⅡ式期以降に流水により運ばれたものであることが確認できます。つまり、141土器破片分布は人の手でばら撒かれたもので無いことが証明されます。


141土器(中峠式)と227土器(加曽利EⅡ式)の出土層位(貝層断面6)

【解説】加曽利EⅡ式土器が集中投棄された直後以降に純貝層(ピンク)が堆積したと想定しています。その想定と断面図6付近の227土器出土層位は矛盾しないように観察できます。しかし加曽利EⅡ式土器よりおよそ350年前の土器型式である中峠式土器141土器が層位最上層付近に出土します。これは、141土器が最初に投棄されて堆積してから以降の350年間にガリー流路で侵食と堆積の繰返しがあり、つまり流水による撹乱が継続して行われ、一見すると矛盾するような事象が生み出されたと考えます。

3-6 過去記事における想定(仮説)「土器破片はばら撒かれた」は間違い

過去記事(例 2022.09.29記事「土器破片出土場所推測結果の検証と推測方法の改良」など)において、土器破片は現場で破壊されてその破片は意図して広域にばら撒かれたとの想定を仮説して検討してきました。しかしこの想定(仮説)は詳細データ観察のなかで間違いであることが判明しました。従って想定(仮説)「土器破片はばら撒かれた」の役割は終わりましたので、棄却します。



2021年7月2日金曜日

有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構

縄文時代社会消長分析学習 107 

有吉北貝塚北斜面貝層の各種分析と写真カラー化による観察のなかで、思考のための材料が揃い、北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構であるという見立てを裏付け材料を整えて設定することができました。この記事ではその見立てをメモします。詳細解説資料は追って作成することにします。

1 有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構(見立て)


有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構(見立て)


見立ての裏付けとなる主な材料

2 メモ

断面図データから標高を拾い作成した基底地形を発掘状況写真、完掘写真で直接確認することができました。分析的データだけではなく、現場写真という直接データで確認できました。この情報からガリー浸食地形の実態が明白になりました。

また断面図情報からこのガリー浸食地形(遷急点を内蔵するV字谷)を下から順番に大形土器片、混土貝層・混貝土層、純貝層、混土貝層・混貝土層が覆って埋め尽くしている(地形を充填している)ことも明らかとなりました。

谷頭部にこのような人工充填作業を行うことは一般的廃棄作業では不可能です、意識的組織的活動によりつくられたと考えられます。状況からこの充填作業は集落中央部にせまる地形崩壊危機を回避するための土木工事、災害防止工事であると見立てました。

大形土器片層設置は流路の下方浸食防止のために設置されたと考えます。現代工法でいえば床固工です。混土貝層・混貝土層、純貝層の充填は難浸食材を使うことによる浸食防止です。現代工法でいえば土嚢による埋め立て、あるいはセメントを利用した埋め立てです。

なお現代土木工事でも貝殻を砕いて舗装材と混ぜて締め固めたり、コンクリート用骨材として利用しますから、貝殻を砕いて土と混ぜ、一段と締固められた土木空間を創造した縄文人の知恵の深さに感動します。混土貝層・混貝土層とは縄文人が意図して作成した土木空間埋め立て工事用材料です。