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2024年2月17日土曜日

イボキサゴ出汁(だし)給食が行われたことを知る

 I learned that Ibokusago dashi school lunch was held.


The main shellfish species at the Jomon shell midden in Chiba Prefecture is the Ibokisago[Umbonium moniliferum (Lamarck,1822)]. It is believed that Ibokisago was used as a soup stock. I learned that the Ibokisago dashi school lunch program was implemented at Kimitsu City elementary and junior high schools in early February. It is groundbreaking that Jomon dashi has been reproduced socially after several thousand years.


千葉県にある縄文貝塚のメイン貝種はイボキサゴです。イボキサゴは出汁(だし)として利用されていたと考えられています。そのイボキサゴ出汁給食が2月はじめに君津市立小中学校で実現したことを知りました。縄文出汁が数千年の時を経て社会的に再現したことは画期的です。

1 西野雅人さんからの情報

西野雅人さん(千葉市埋蔵文化財調査センター所長)から次の情報をBCCでいただきました。

◆君津市内の小中学校給食でイボキサゴ出汁を利用

学校給食に活用することは当所の目標の一つでした。とても高いハードルと感じていましたが、君津市教育センターの田仲永和さんらのご尽力によって君津市内の小中学校全校で「縄文出汁」を活かしたキムチスープが提供されました。

漁師の石川金衛さん、縄文グルメ推進委員会のみなさんも、ありがとうございます。とても大きな一歩だと思います。

各社が報道してくれました。

・チバテレ:全国初!縄文時代の味が給食に 千葉県君津市

https://news.yahoo.co.jp/articles/209a68fee486fe9248fdee3605bf0f31c02cbb0e

・朝日:縄文グルメを口いっぱい 君津市で給食にイボキサゴだしスープ提供

https://www.asahi.com/articles/ASS277755S27UDCB002.html

・千葉日報:給食に縄文グルメ登場! 君津の小中校未利用貝だしでスープ

https://www.chibanippo.co.jp/news/local/1162441


当日配布資料

◆映画「掘る女 縄文人の落とし物」上映会

加曽利貝塚博物館友の会のみなさんによって、ついに千葉でも上映することになりました。

3/18千葉市生涯学習センター2Fホール

13:00開場、13:00-16:20。当日受付200名

https://chiba-gakushu.jp/event/25-29-08-01/

遺跡発掘に関わる人の表情や掘る音など、発掘の面白さを伝える初めての映画です。ぜひ多くの方に見ていただきたいです。

映画「掘る女」の内容は以下

https://horuonna.com/#

なお、上映後に松本貴子監督と西野雅人の対談もあります。

次に紹介する「縄文の旅」は、松本監督と高橋伸征さんが企画・制作を担当してくださいました。

◆「新日本風土記 縄文の旅」再放送

イボキサゴ採取会とはじめての至高の縄文鍋を収録していただきました。見ていない方はぜひご覧ください。

【BSP4K】

2024年3月5日(火)21:00~21:59

2024年3月10日(日)6:00~6:59

2024年3月15日(金)8:00~8:59

【BS】

2024年3月12日(火)21:00~21:59

2024年3月17日(日)6:00~6:59

2024年3月22日(金)9:30~10:29

2 参考 イボキサゴの殻径頻度分布の比較

イボキサゴ出汁給食とは直接かかわらないのですが、以前イボキサゴ殻径頻度分布を調べたことがあることを連想的に思い出したので、メモしておきます。


イボキサゴ殻径の比較

出土破砕貝・出土完形イボキサゴ・現生イボキサゴの殻径を比較すると顕著な差が出現して、色々な思考が生まれます。

私の思考

縄文時代にイボキサゴはいくらでも採れたが、その採取圧で幼貝が多かった。幼貝の殻は薄く割れやすい。そのような、割れるような殻の薄い小さい幼貝を採取したときは、効率性から破砕して使った。割れないような大きさの成貝は一つ一つ殻から身を取り出した。しかし成貝も採取圧で大きさが(現生と比べると)小さかった。


2021.07.10イボキサゴ採取会の様子


イボキサゴ殻径測定に使ったイボキサゴ


イボキサゴ3Dモデル


2023年3月1日水曜日

もういちど、日本「千葉・縄文の味を現代へ」の視聴

 Once again, watch Japan "Taste of Chiba and Jomon to the present age"


I watched "One more time, Japan 'Chiba Jomon taste to the present age'" on NHK+.

In Chiba City, the "Jomon Gourmet Promotion Committee", which is made up of 15 restaurants, is making a move to make it a new specialty of Chiba as "Jomon Gourmet" using Ibokisago soup stock. Ibokisago is a small snail that accounts for 90% of the shellfish unearthed at Kasori shell mounds.


NHK+で2/27(月)午前4:00-午前4:05放送の「もういちど、日本「千葉・縄文の味を現代へ」」を視聴しました。

千葉市では15の飲食店が加盟する「縄文グルメ推進委員会」がイボキサゴの出汁を使って多様なメニューを開発して、「縄文グルメ」として千葉の新名物にする動きがあり、その様子を紹介した番組です。イボキサゴは加曽利貝塚などで出土する貝の9割を占めている小さな巻貝です。


もういちど、日本「千葉・縄文の味を現代へ」の番組画面(NHK+によるパソコン視聴画面)


もういちど、日本「千葉・縄文の味を現代へ」の番組画面(NHK+によるパソコン視聴画面)

この番組は3/6(月)午前4:05までNHK+で視聴できます。

縄文時代の大型貝塚が多数存在する千葉から、和食の味の原点である「縄文の味」「イボキサゴの味」復活ののろしがあがりました。

番組には次の説明が書いてあります。

「千葉市にある日本最大級の貝塚、加曽利貝塚。出土する貝の9割近くは「イボキサゴ」という小さな巻貝だ。縄文人が愛したこの貝。しかし今は木更津沖で大量繁殖し他の貝を駆逐している厄介者。千葉市の15の飲食店が加盟する「縄文グルメ推進委員会」では、このイボキサゴの出汁を使ってさまざまなメニューを開発。「縄文グルメ」として千葉の新名物にしようと動き出している。縄文の味を現代によみがえらせる取り組みを紹介する。」

……………………………………………………………………

NHK+は次のサイトから申し込みできます。(受信契約者本人が申し込み、5つまでのpc、スマホ、インターネット接続テレビなどで視聴可。無料。総合・Eテレの番組を放送後1週間配信)

NHK+



2022年9月16日金曜日

破砕イボキサゴと現生イボキサゴ 観察記録3Dモデル

 Observation record 3D model of the crushed and modern sprial shell


I created a 3D model of observation records of crushed and modern sprial shell displayed in the Kasori Shell Mound Museum Permanent Exhibition. I imagined that crushing the sprial shell was a way to extract the meat from a small, underdeveloped shell.


加曽利貝塚博物館常設展に展示されている破砕イボキサゴと現生イボキサゴの観察記録3Dモデルを作成しました。イボキサゴを破砕するのは、育ち切らない小さい貝から身を取り出す方法であると想像しました。

1 破砕イボキサゴと現生イボキサゴ 観察記録3Dモデル

破砕イボキサゴと現生イボキサゴ 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館常設展

撮影月日:2022.09.11

ガラスショーケース越しに撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.509 processing 91 images

Observation record 3D model of the crushed and modern sprial shell

Location: Kasori Shell Mound Museum

Shooting date: 2022.09.11

3D model Generated with photogrammetry software 3DF Zephyr v6.509 processing 91 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 メモ

イボキサゴの殻径は次の図のように現生イボキサゴ>縄文出土イボキサゴ>縄文出土破砕イボキサゴになります。


イボキサゴ殻径頻度分布の比較

現生イボキサゴは採集圧がない状況と考えてよいと思います。殻径は1.7㎝ほどになります。殻のまま出土する縄文イボキサゴの殻径は1.4㎝ほどになります。現生イボキサゴとくらべると少し8割程度の大きさであり、採集圧がかかった状況を示しているのだと思います。また、この大きさで破砕されていないということは、この大きさで殻から楊枝のような道具を使って身を取り出すことが可能だった(作業効率的に受容出来た)のだと想像します。縄文破砕イボキサゴの殻径は1.0㎝程度です。この殻径はイボキサゴに育つ時間を与えないような強い採集圧を示しているのだと思います。また、この大きさでは一つ一つの殻から身を直接取り出すことが難しく(作業効率的に受容できなく)なり、一括破砕して身を選別とりだしていたのだと想像します。

なお、展示破砕イボキサゴについて、以前にも3Dモデルを作成し、その3Dモデルから5点の大型破片について殻径を計測したところ、平均が9.7㎜となり、既存資料の値と整合することを確認しました。(2021.10.13記事「破砕イボキサゴ 観察記録3Dモデル」

取り出したイボキサゴの身は天日干しして乾物にし、保存しつつ塩味旨味成分として消費したり、交易に使ったりしたのだと想像します。


2021年10月13日水曜日

破砕イボキサゴ 観察記録3Dモデル

 加曽利貝塚博物館常設展に展示されている破砕イボキサゴについて観察記録3Dモデルを作成し、破砕片にふくまれる大形破片から殻径を計測推定してみました。

1 破砕イボキサゴ 観察記録3Dモデル

破砕イボキサゴ 観察記録3Dモデル


破砕イボキサゴ展示の様子

撮影場所:加曽利貝塚博物館常設展

撮影月日:2021.10.07

ガラスショーケース越しに撮影

実寸法付与

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.009 processing 55 images


3Dモデルの動画

2 展示説明

「破砕イボキサゴ 貝層中に堆積していたこのイボキサゴは、細かく砕かれた状態で発見され、分析の結果、通常のものに比べて小さく、幼貝を選んで破砕していたことが判明しました。ここまで細かく破砕した理由はなんだったのか、縄文人の貝利用を知る手がかりになりそうです。」

3 大形破片による殻径の推定

破砕イボキサゴの中には殻径を測ることができるような大形破片があります。そこで3Dモデルから殻径測定可能と考えられる5つの大形破片から殻径を測定したところ、その平均値が9.7㎜となりました。

この値は史跡加曽利貝塚総括報告書に掲載されている破砕イボキサゴ推定殻径値の中央値に近い値です。現物測定でこれまでの知見(通常イボキサゴより破砕イボキサゴは4㎜ほど小さい)を直接確認することができました。


イボキサゴ殻径頻度分布の比較
通常のイボキサゴより小さい幼貝が取れた時(幼貝しか取れなかった時)、殻が割れる程度に弱いので、割って実をとりだしたのだと思います。効率的に実をとりだすことができます。成貝では殻が固く割ることはできません。


2021年10月10日日曜日

加曽利貝塚南貝塚剥ぎ取り断面(部分) 観察記録3Dモデル

 加曽利貝塚博物館に展示されている加曽利貝塚南貝塚剥ぎ取り断面の部分について観察記録3Dモデルを作成し、イボキサゴの殻径を計測してみました。

1 加曽利貝塚南貝塚剥ぎ取り断面(部分) 観察記録3Dモデル

加曽利貝塚南貝塚剥ぎ取り断面(部分) 観察記録3Dモデル


剥ぎ取り断面全体の様子


剥ぎ取り断面 撮影個所付近


説明パネル

撮影場所:加曽利貝塚博物館

撮影月日:2021.10.07

ガラスショーケース越しに撮影

実寸法付与

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.009 processing 63 images


加曽利貝塚南貝塚剥ぎ取り断面(部分) 観察記録3Dモデルの動画

2 殻径の計測

3Dモデルに実寸法を付与して、無作為にイボキサゴサンプル50を抽出して、その殻径を3Dモデルソフトの計測機能を利用して測定しました。


加曽利貝塚南貝塚剥ぎ取り断面(部分)イボキサゴ殻径50サンプル

グラフパターンは次の既存資料パターンととてもよく一致することを確認できました。


イボキサゴ殻径頻度分布の比較

これにより、ペーパー資料上の数値ではなく、現物計測的・現物体感的に縄文後期イボキサゴの殻径が現生イボキサゴより3㎜ほど小さいことを確認できました。現生イボキサゴは採集圧力がないことから、縄文後期イボキサゴは採集圧により殻径が現代より3㎜小さかったと考えることができます。

展示物からフォトグラメトリーという写真測量技術を利用して展示遺物の非接触計測が正確にできることは、市民学習者としては大変便利です。発掘専門家や展示関係者からみると児戯に見えるかもしれませんが。


2021年10月8日金曜日

祇園原貝塚貝層断面(部分) 観察記録3Dモデル

 加曽利貝塚博物館特別展「祇園原貝塚」(2021.10.02~12.05)で展示されている剥ぎ取り断面「祇園原貝塚貝層断面」をよくみると破砕されているように見えるイボキサゴを観察できるのですが、その様子がいかにも中途半端にみえるのでとても興味を持ちました。そこで観察記録3Dモデルを作成してじっくり観察し、同時にイボキサゴの大きさを3Dモデルから計測してみました。

1 祇園原貝塚貝層断面(部分) 観察記録3Dモデル

祇園原貝塚貝層断面(部分) 観察記録3Dモデル


祇園原貝塚貝層断面の全体

撮影場所:加曽利貝塚博物館特別展「-市原市史跡指定-祇園原貝塚 千年続いた縄文のムラ」

撮影月日:2021.10.07

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.009 processing 63 images


3Dモデルのカメラ配置


3Dモデルの動画

2 イボキサゴは破砕されているか


イボキサゴ拡大写真

イボキサゴはいずれも貝殻の概形を残し、その一部がなくなっています。まるでイボキサゴを真二つに切ってその断面を見せているようなものもあります。そこで観察記録3Dモデルで拡大してそれらを観察しました。3Dモデルを動かしながらよく観察すると、剥ぎ取り断面の微細な凹凸断面のそれぞれに対応してイボキサゴが切断されている様子を確認できます。つまり、イボキサゴは剥ぎ取り断面作成時に人工的に生じた断面に対応して切断されたものであることが確認できます。もともと貝層にふくまれていたイボキサゴは完形であったと推定できます。そのためと考えられますが、イボキサゴの断面が白くなっていて新鮮です。他の貝も白く新鮮な断面が多数みつかります。この貝層の貝殻は柔らかかった(「腐っていた」)ようです。

3 イボキサゴ殻径の計測

3Dモデルからイボキサゴ殻径を計測してみました。


イボキサゴ殻径測定結果


殻径

土に埋まっている部分もありますからあくまでも簡易的な数値になりますが、平均殻径は1.28㎝になります。加曽利貝塚出土破砕イボキサゴと完形イボキサゴの中間的大きさになります。現生イボキサゴ平均殻径と較べると4.2㎜ほど小さく、小ぶりです。採集圧ゼロの現代とくらべると縄文後期中葉(約3500年前)市原の海のイボキサゴには採集圧がかかっていたと推定します。


参考 イボキサゴ殻径頻度分布の比較


2021年9月19日日曜日

イボキサゴ取組の中間とりまとめ

 2021.07.10イボキサゴ採取会参加を契機として始めた趣味活動イボキサゴ取組の中間とりまとめします。

1 イボキサゴ取組の主な経緯

ア 2021.07.10イボキサゴ採取会参加


イボキサゴ採取会の様子


イボキサゴ採取の様子

この採取会に参加させていただき、房総縄文貝塚のメイン貝種であるイボキサゴに対する興味が急速に深まりました。

イ イボキサゴ3Dモデル作成チャレンジ開始


最初のイボキサゴ3Dモデル

イボキサゴ3Dモデル作成にチャレンジし、なかなか思うようにできないので、逆にチャレンジの気持ちが生まれました。

ウ イボキサゴ破砕実験


イボキサゴ破砕実験

イボキサゴを実際に自分で破砕してみました。知識のない自分にとっては有益な情報を得ることができました。採取したイボキサゴを破砕することは縄文人であろうと通常ではできないレベルの固さであることが判りました。その後、破砕イボキサゴの殻径は採取イボキサゴの6割未満であり、つまり殻の薄い幼貝であるらしいことが判りました(千葉市埋蔵文化財センター所長の西野雅人先生の見立て)。

こんなに固いイボキサゴをどのようにして割ったのだろうという疑問が、割れるような殻の薄いイボキサゴを採取したときには一つ一つ身をとるのではなく、一気につぶして効率的に身を取り出したという思考に変化しました。

エ 西野雅人著イボキサゴ論説「和食のルーツをさぐる」学習


西野雅人著イボキサゴ論説「和食のルーツをさぐる」

和食のルーツをさぐるを読んで、考古学のみならず和食文化におけるイボキサゴの重大な意義を理解し、ますますイボキサゴに対する興味が深まりました。

オ イボキサゴの殻径計測


イボキサゴ殻径の比較

出土破砕貝・出土完形イボキサゴ・現生イボキサゴの殻径を比較すると顕著な差が出現して、色々な思考が生まれました。一つは上で述べた、割れるような殻の薄い小さい幼貝を採取したときは、効率性から破砕して使った。割れないような大きさの成貝は一つ一つ殻から身を取り出した。そして成貝は採取圧で大きさが(現生と比べると)小さかった。

カ イボキサゴ3Dモデル作成技術習得感想メモ

2021.09.19記事「イボキサゴ3Dモデル作成スキルの橋頭保を築く」参照

2 イボキサゴに関連して生まれた学習興味

・イボキサゴ破砕理由の検証

縄文貝塚のイボキサゴ破砕の理由について興味をもちます。破砕できる程度の殻の薄い小さなイボキサゴを採取した時、つまり大きなイボキサゴが生息していない時、労働効率性の観点からイボキサゴを破砕して身を取り出したと考えますが、その見立てについて検証するような学習を進めたいと思います。

・イボキサゴ調理の推測

イボキサゴ破砕とも関連しますが、貝塚のメイン貝種であるイボキサゴがどのように食生活で利用されていたか、西野雅人著イボキサゴ論説「和食のルーツをさぐる」を読んでますます学習を深めたくなりました。

・イボキサゴを詳しく観察するために、3Dモデルにする技術習得に励みました。小さいモノを3Dモデルにするにはそれなりの独自の技術が必要であること、つまりそこには独自の深い技術世界があることを理解しました。小さいモノの3Dモデル化技術の橋頭保を確保することができました。

3 今後の活動

次のステップとして、縄文貝塚から出土したイボキサゴやその破砕物について資料閲覧を行い、分析の真似事や3Dモデル作成を行い、学習問題意識をさらに深めていくことにします。

また、小さいモノの3Dモデル作成スキル向上の取組を継続することにします。

イボキサゴ3Dモデル作成スキルの橋頭保を築く

 お誘いのあった2021.07.10イボキサゴ採取会に参加してから2ヵ月が経ちました。この間考古学的興味対象としてのイボキサゴについて、その3Dモデル作成スキル向上に明け暮れてきました。次のような目標を立てました。

・完全体3Dモデルを作成する。(360度どこからみても完全な3Dモデル)

・精細な3Dモデルを作成する。

取組当初は一定のパワーを集中投入すれば出来るに違いないとタカをくくっていました。しかし気が付くと、縄文土器など通常の大きさのモノの3Dモデル作成技術と、径17mm程度の小さいモノの3Dモデル作成技術はほとんど別世界のものであることを理解しました。その後悪戦苦闘して当初の目標を完全にクリアするための橋頭保は築けましたので、その状況をメモします。

1 多数の撮影写真が必要

通常オブジェクトの回りを3つの高さで廻りながらそれぞれ24枚撮影すれば、3Dモデルが作成できることは経験的に知られています。展示縄文土器などの3Dモデルではこの程度以上の撮影密度なら3DF Zephyr Liteで結像できないことはあり得ません。

しかし、小さいモノであるイボキサゴでは、今回の自分の経験では3つの高さで各50枚撮影したものはほとんど結像できませんでした。3つの高さで各90枚撮影したところ、劇的に改善し、円満な結像を得ました。回転テーブルを4度回転につき1枚の割合で撮影し、それを上から、中から、下から撮影しました。


152枚撮影から47枚採用で結像した不十分な3Dモデル


290枚撮影から290枚採用で結像した円満な3Dモデル

2 一筆書きの写真順番が必要

何回かに撮影を分割して行い、不用意にそれをそのままフォトグラメトリーに使ったところ、ほどんど結像できませんでした。写真ブロック毎にファイル名に順番を示す番号を追記して写真順番を一筆書きになるように調整したところ、劇的に改善した3Dモデルが結像しました。


画像順番が乱れている場合の不十分な結像


画像順番を整序した場合の円満な結像

3 マスクが必要

イボキサゴ撮影は内面が白の撮影ボックスにターンテーブルを置いて行っています。撮影写真にはイボキサゴ以外には不明瞭な影が一部しか写りませんが、その影はすべてマスクする必要があります。(マスクしなくても結像する場合があります。)300枚近くの写真マスクは3DF Zephyr Liteマスカレード機能で行いました。Photoshopなどで行う場合よりも効率的にできますが、それでも時間がかかります。

4 写真ボヤケの除去

通常カメラ(深度合成機能のないカメラ)で小さいモノを近接撮影するとピントがあった部分と合わない部分が必ず生まれます。F値を大きくすればピントが合う部分を増やせますが、ボヤケが無くなるわけではありません。3Dモデルテクスチャにボヤケが反映してしまう場合もあります。

このような事情から深度合成機能のあるカメラ(OLYMPUS TG-6)を利用するようになりました。ただし深度合成するには多数回シャッターが切られますので、カメラ固定が必須となります。

ブログ「花見川流域を歩く 番外編」2021.09.18記事「OLYMPUSカメラTG-6 顕微鏡モードの効果」参照

5 イボキサゴの固定方法

細い針金で台(輪)を作りその上に乗せたり、細い針金を開口部に刺して固定するなどの方法を試行錯誤しました。台の上にイボキサゴを乗せると、その台をマスクするのに手間取ることと、必ず台の上でイボキサゴを置き換える必要がありことなどからよい結果を得ることが出来ませんでした。開口部に針金を差し込んで固定し、3Dモデル作成後Blenderでその針金部分を除去するのが一番現実的です。


台(輪)によるイボキサゴ固定


針金を開口部に刺して固定

6 カメラの固定方法

撮影ボックスの中にカメラを差し込むように入れて、それを固定することはかなり困難です。フレキシブルなカメラ固定器具は入手しましたが、書斎空間における作業可能空間限定状況の中で、このカメラ固定器具を使いこなすのは課題となっています。

7 感想

径が17㎜程度しかないイボキサゴの完全体で精細な3Dモデル作成技術獲得の橋頭保は築くことができました。今後この技術を出発点にして小さいモノの3Dモデル作成技術を発展させたいと思います。その技術を縄文早期土偶とか、遠隔地にまで運ばれたコハク玉とか、縄文草創期有舌尖頭器などに適用して縄文学習をより楽しむことにします。

イボキサゴ 観察記録3Dモデル(試作4)

2021.07.10木更津市盤洲干潟で採取

2021.08.19撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.006 processing 275 images

2021年8月31日火曜日

サイト イボキサゴの開設

 サイト イボキサゴを開設しました。ブログ「花見川流域を歩く」記事のうちイボキサゴに関連する記事を今後継続して集成していくサイトです。


サイト イボキサゴの表紙画面


サイト イボキサゴの記事画面例

サイト開設の直接の目的は今後イボキサゴ関連記事が増えていった時、自分自身がふりかえることを容易にするためです。長期的にはイボキサゴに関する私の取り組みや思考について興味を持つかもしれない未来の数少ない好事家に、検索により見つけてもらいやすくするための一つのしかけです。

イボキサゴという特定切り口を持つことによって、縄文貝塚社会に深く切り込み、学習を加速したいという夢想をしていて、当面は次のような活動ができれば面白いと考えています。

1 微小なモノであるイボキサゴの完全で精細な3Dモデル作成技術を獲得して、多数イボキサゴの3Dモデルを作成して、宝石のように並べて楽しむ。(微小土偶とか、微小コハク製品などの顕微鏡的で完全な3Dモデル作成活動に発展させる)

2 縄文貝塚出土イボキサゴと現生イボキサゴの3Dモデルをつかった比較検討を行う。(出土イボキサゴの閲覧、計測、3Dモデル作成など)

3 縄文貝塚イボキサゴ破砕層の意義学習を深める。(破砕による利用方法の検討、破砕方法の検討(実験的検討)…)

4 縄文イボキサゴ出土地層断面観察の機会到来を待つ。

5 イボキサゴ料理を楽しむ。

6 イボキサゴあるいは類縁種を図案とした海外切手を探し、あれば入手して自己満足する。(イボキサゴの海外分布は、利用は?)


2021年8月21日土曜日

破砕イボキサゴの殻径

 有吉北貝塚を始め東京湾岸貝塚から破砕イボキサゴ貝層が出土していて、なぜ破砕したのか興味が湧きますが、破砕イボキサゴと通常出土イボキサゴの殻径データが「史跡加曽利貝塚総括報告書」(2017、千葉市教育委員会)に掲載されていることを西野雅人先生から教えていただきました。破砕の意味が判るかもしれない貴重なデータであり、最初の検討をメモします。

1 イボキサゴの復元殻径と比較


イボキサゴの復元殻径と比較

「史跡加曽利貝塚総括報告書」(2017、千葉市教育委員会)から引用

破砕イボキサゴ貝層に含まれる破片の中から軸高計測可能なものを見つけて軸高を計測し、軸高と殻径の間には関係があるので、その関係式にもとづいて破砕イボキサゴ殻径を復元しています。

このグラフをみると破砕イボキサゴは通常出土イボキサゴ(破砕されていないイボキサゴ)より4㎜程小さいイボキサゴになっています。つまり小さいイボキサゴ(殻径中央値-10㎜)については破砕しているということです。一方大きいイボキサゴ(通常のイボキサゴ)(殻径中央値-14㎜)は破砕していないということです。

このグラフの解釈として、身を取り出すことが可能な大きさのイボキサゴはそのまま取り出し、身を取り出すことが困難なイボキサゴは殻ごと潰して、殻と身がぐちゃぐちゃになったなかから身や内蔵エキスを何らかの方法で選別採集していたことを考えることができます。

なお、小さいイボキサゴほど貝殻の強度は低いと考えられますから、身を一つ一つの貝から取り出す膨大な手間を回避するために、つまり一挙に身を取り出す方法を適用するために、わざと小さなイボキサゴを選択して採取したという捉え方も成り立つかもしれません。

このデータは有吉北貝塚北斜面貝層の成り立ちを考える上でも大変貴重な情報になると思います。

2 2021.07.10木更津盤洲干潟採取イボキサゴ殻径頻度分布

2021.07.10木更津盤洲干潟採取イボキサゴのなかから無作為に50個を選び、殻径、軸高、殻高を電子ノギスで計測しました。


殻径、軸高、殻高を計測したイボキサゴ50個

この計測のうち殻径の頻度分布をグラフにすると次のようになります。


2021.07.10木更津盤洲干潟採取イボキサゴ殻径頻度分布

-17㎜(16.1~17.0㎜)に全体の54%が集中します。殻径は加曽利貝塚出土通常イボキサゴより3㎜大きく、破砕イボキサゴより7㎜も大きくなります。

このグラフを1の加曽利貝塚グラフに追記すると次のような資料になります。


イボキサゴ殻径頻度分布の比較

盤洲干潟採取イボキサゴのサンプル数はたったの50ですから、データの重みが異なりますが、予察の予察であるとする立場にたてば、興味ある事象が空想できそうです。

【空想】 現生イボキサゴの殻径の方が加曽利貝塚出土イボキサゴより大きい可能性がある…………………現在はイボキサゴを食用として採集していませんから、自由にすくすく育っていてイボキサゴが本来の大きさに育っています。一方縄文時代は採集圧でイボキサゴの育ちはわるく、小さいイボキサゴが多かったと考えます。特段に小さいものまでも大量に採集し、それは破砕しなければ利用できないほどだったのです。

3 感想

現在のイボキサゴよりはるかに小さなイボキサゴを大量に利用していたという事実は、イボキサゴの利用においてタンパク源としての身(肉)の利用がメインではなく、旨味としての利用がメインであるという考え方の確からしさをより確固としたものにするような印象を持ちます。


2021年8月20日金曜日

イボキサゴ 観察記録3Dモデル モデルの改良2

 2021.07.29記事「イボキサゴ 観察記録3Dモデル(試作)」で最初のイボキサゴ3Dモデルを試作し、2021.08.13記事「イボキサゴ 観察記録3Dモデル モデルの改良」で3Dモデルを改良しました。しかし撮影でつかった「針」が3Dモデルの中に残ってしまい、及第点レベルを下げるにしても及第することができませんでした。

その後再度モデル改良に取り組み、「針」を除いて3Dモデルを作成できましたので、メモします。

1 イボキサゴ 観察記録3Dモデル(試作4)

イボキサゴ 観察記録3Dモデル(試作4)

2021.07.10木更津市盤洲干潟で採取

2021.08.19撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.006 processing 275 images


スケールとイボキサゴ


イボキサゴ撮影の様子


カメラ配置

2 撮影方法

細い針金で台をつくり、その台の上にイボキサゴを乗せ、ターンテーブルで回しながら撮影しました。

3 写真のマスク

全ての撮影写真から「針金の台」部分をPhotoshopブラシで背景色を塗ることにより消しました。

4 3Dモデルの出来ばえ

完全体3Dモデルをつくるという最低限の目的は達成することができました。

・イボキサゴ全体の3Dモデルが結像している。

・精細なテクスチャが表現されている。


試作4 3Dモデルの様子


参考 試作3の3Dモデルの様子

同時に次の課題が浮かびあがりました。

ア 開口部の内部の形状が正確に結像していません。その部分の写真が不足しているようです。

イ テクスチャの精細さが試作4は試作3より少しですが劣るように観察できます。試作3撮影ではイボキサゴとカメラレンズの距離が長く、試作4撮影ではその距離が短かったためであると考えます。対象物とレンズ距離を短くすると対象物の画面上での大きさは大きくなるですが、ピントが合う部分が極限されてしまい、その周囲はピンボケになるためです。結果として判ったことですが、接写すればするほど対象物全体のピントを合わせることは、通常カメラではできないということです。

5 感想

ア イボキサゴを色々な方向で安定して置ける台の自作が撮影に不可欠であることがようやく判りました。対象物が小さいため通常のありもの流用では対応できません。対象物が大きければこのような課題は発生しません。

イ 撮影写真のマスクに多大な労力がかかることも逃れることはできないようです。

ウ 特殊なカメラでは接写撮影で深度合成ができる(奥行のある対象物でも全部にピントがあった撮影ができる)ので、次のステップでこのカメラを試してみることにします。

6 参考 イボキサゴの計測

イボキサゴの軸高、殻高、殻径をノギスで計測しました。


軸高、殻高、殻径


軸高、殻高、殻径の計測値


2021年8月16日月曜日

「和食のルーツを探る」(料理天国連載記事)を読む

 1 5記事からなる立派な論説

2021.08.15「「巨大貝塚をつくった小さな貝」(「料理天国」記事)を読む」で読んだ料理天国記事は大変参考になるものでしたが、この記事が実は連載記事の1つであり、全部で5記事からなる立派な論説であること知りました。著者は千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人先生です。

料理天国連載「和食のルーツをさぐる」5記事は次の通りです。

1 肉食の時代

2 二つの画期-雑食化と定住化-

3 定住を支えた食-雑食化と定住化-

4 巨大貝塚をつくった小さな貝

5 至高の縄文鍋プロジェクト


webサイト料理天国の連載「和食のルーツを探る」画面

2 感想

全部を読むと、旧石器時代の肉食から縄文時代に雑食化・定住化したことと、縄文土器を使った鍋料理が行われ、貝塚ではイボキサゴがうま味として使われ、和食のルーツになったことが良くわかります。

さらに加曽利E式土器は火炎型土器・勝坂式土器・曽利式土器などとくらべさっぱりしている意味として、土鍋(縄文土器)を飾るより房総の豊富な素材に裏打ちされた中身にこだわり、美味しい鍋が開発されたからではないかという興味深い考えも述べられています。

この論説は房総縄文の食文化特徴を詳しく解説しています。房総貝塚研究の最先端を歩む専門家でなければ書くことができないコンテンツがびっしりと詰まっているという印象を受けました。


2021年8月15日日曜日

「巨大貝塚をつくった小さな貝」(「料理天国」記事)を読む

 Twitter安房坊 弁慶さんのツイートでイボキサゴの記事「巨大貝塚をつくった小さな貝」を知りました。早速webサイト「料理天国」でよみました。


webサイト 食の未来が見えるウェブマガジン「料理天国」

【連載】和食のルーツをさぐる④ 『巨大貝塚をつくった小さな貝』 の画面

なんと千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人先生の執筆です。

次の項目だてで、イボキサゴ初心者の自分にとってはとてもありがたい情報源です。

・大型貝塚のイボキサゴ

・東京湾のイボキサゴ

・食材としての魅力

・うま味文化のルーツ

・イボキサゴプロジェクト

大型貝塚の主要貝種であるイボキサゴは戦後の埋め立てで一時絶滅しかけました。しかし近年蘇りつつあります。一方考古学研究から縄文人がうま味として利用したことが判りつつあります。そして現在、イボキサゴプロジェクトがはじまり食材としてのイボキサゴが復活しつつあることがよくわかりました。


千葉市中央区のイタリア料理店で提供しているイボキサゴコース

コロナが一段落したらぜひともイボキサゴフルコースを堪能してみたいです。