花見川地峡の自然史と船越の記憶 4
千葉市花見川区、八千代市、印西市、佐倉市、酒々井町、成田市、栄町を対象に、角川日本地名大辞典12千葉県から戸地名をピックアップしたところ、大字は11、小字は202の戸地名を確認できました。(2013.05.12記事「花見川-印旛沼筋の戸地名リスト」)
このうち大字地名について、角川日本地名大辞典からその地名由来について抜書きしてみました。
戸地名(所在市町)
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地名由来
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備考
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天戸(千葉市花見川区)
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花見川中流右岸の台地に位置する。地名の由来は、鎮守天照皇大神の伝説に基づくとも(千葉郡誌)、古東海道の脇街道の川渡場にちなむとも(千葉市の町名考)、余部(あまるべ)によるとも(地理志料)いう。
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検討2
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横戸(千葉市花見川区)
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花見川上流域の台地上に位置する。地名は、大宝令の余部(あまるべ)によるともいう(地理志料)。小金原の一部。
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検討3
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平戸(八千代市)
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印旛放水路(新川)右岸に位置する。地名の由来は戸が津の転訛といわれることから印旛沼の津であったことによるものか。
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検討1
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戸神(印西市)
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神崎川支流戸神川上流右岸に位置する。
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検討5
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瀬戸(印西市)
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印旛沼に南面する台地上に位置する。
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検討5
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師戸(印西市)
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諸戸とも書く。印旛沼に南面する台地上に位置し、西部を師戸川が流れる。臼井城の支城師戸城は千葉氏庶族師戸四郎の居城であったと伝え(佐倉風土記)、城址から永正6年銘の板碑が発見されている。
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検討3
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長門屋(印西市)
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印旛沼北部、長門川西部の低平地に位置する。地名は、新田開発を請け負った町人の屋号によるものか。
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検討4
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米戸(佐倉市)
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印旛沼南部、南部川流域の丘陵地上に位置する。
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検討5
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坂戸(佐倉市)
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下総台地中央部、鹿島川中流左岸に位置する。西福寺に隣接して坂戸砦跡があり、空壕の一部が残る。また、尾牛に尾牛砦跡があり、遺構が台地斜面の神社境内に存在する。西福寺の踊念仏は近在に有名。
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検討3
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関戸(成田市)
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根子名川中流右岸に位置する。
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検討5
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この表の情報から次の検討をおこないました。
検討1 平戸
平戸の説明に戸が津(みなと)であるということが書かれていて、戸地名が海や舟と関わりがあるという私の見立て通りになっています。
ただ平戸だけにこのような記述があるので、おそらく平戸に関しては以前どなたかがそのような正しい見立てをもって調べたことがあるのだと思います。
平戸は八千代市ですから、八千代市の資料を詳しく調べて、さらに奥深い検討に進むための糸口を見つけられるか検討します。
しかし、「戸が津の転訛といわれる」という記述は訂正を要する誤りだと思います
岩波古語辞典には「津」の項で次のような説明をしています。
つ【津】<ト(戸)の母音交替形>①舟の着く所。船着場。港。②渡し場。わたり。
岩波古語辞典のつ【津】の項
ちなみに「戸」は同辞典で次のようになっています。
と【戸・門】<ノミト(喉)・セト(瀬戸)・ミナト(港)のトに同じ。両側から迫っている狭い通路。また、入口を狭くし、ふさいで内と外を隔てるもの>①出入口。②狭い通り道。出入りの道。③水の出入り口。瀬戸。④家の出入り口や窓などに立てて、内と外とを隔てるもの。
正確には「戸ということばが転訛して津が生まれた」ことからわかるように、戸という地名は船着場を意味していた。というような説明になると思います。
戸のほうが古い言葉でより根源的な意味を表現し、津は新しい言葉でより具象的意味を表現するということだと思います。
以上の検討から、戸地名は津という言葉が日本語に発生する前に付けられた、より古い地名であるという重要情報を引き出すことができます。
なお、「ト(戸)→ツ(津)母音交替形説」が定説であるのか、機会をみつけて検討する予定です。
検討2 天戸
天戸の地名の由来が古いものであることが判ります。
(おそらく戸のイメージから)川渡場であったかもしれないという説がありますが、本当の地名由来の近辺まで到達した説であると思います。戸とは、渡(わたし)という特定施設ではなく、船着場のある一つの集落を意味していたものと考えます。
検討3 横戸、師戸、坂戸
いずれも地名の場所の歴史が古いことを示しています。
検討4 長門屋
長門屋という地名が新田開発を請け負った町人名に由来するという説明が正しいと考えますので、今後戸地名検討からこの長門屋という地名は除きます。
検討5 戸神、瀬戸、米戸、関戸
地名由来の記述はありません。
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角川日本地名大辞典のdvd版があることを知りました。
パソコンでこの辞典を利用できれば素晴らしいと一瞬夢が膨らんだのですが、その値段を見て夢はしぼみました。定価294000円です。(2011年10月発売)書籍版の全49巻を収録しています。
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つづく
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