2015年11月19日木曜日

古代船着き場を示す「かし」

小字地名データベース作成活用プロジェクト 35

千葉県北部34市町の小字データベースの試用として、「かし」について予備的な検討をしてみます。

「かし」を含む小字について表記別にカウントすると次のようになります。

千葉県北部 表記別「かし」を含む小字名数

この分布図をアドレスマッチングで作成すると次のようになります。

「かし」をふくむ小字分布

この小字分布の多くが古代「杵(かし)…舟をつなぐもやい杭」起源で、船着き場を意味すると想定します。

近世になって「河岸」と書いて「かし」と読ませるようになったので、近世起源の「かし」と古代起源の「かし」が混ざっていますから分別する必要があります。

海面低下等により古代内陸水運が衰退して船着き場の存在が忘れられてしまうと、「かし」の音の意味が判らなくなり、柏の字をあてる場合が多くなったと考えます。

大字で柏井(かしわい)が2か所出てきます。

大字柏井の分布

いづれも杵隈(かしわい)、つまり杵(かし…舟をつなぐもやい杭)+隈(わい…いりこんだところ)であり、船着き場の意味です。

千葉市花見川区柏井町の柏井(杵隈)は東京湾から花見川を遡上してたどり着く最上流の船着き場で、そこから陸路(直線道路を含む)で平戸川水系の舟運路につながります。

市川市柏井町も東京湾から大柏川を遡上したところにあり、そこから陸路を通って手賀沼水系や印旛沼水系に通じていたと考えます。

自治体名である柏市の名称も古代に起源を有する「かし」地名であると考えます。

柏市の行政域

手賀沼付近の杵場(かしば)つまり船着き場が転じて柏(かしわ)になったのだと考えます。

漢字「柏」は当て字ですから、植物の柏などとは全く関係がありません。

杵場→柏、杵隈→柏井など、その意味が忘れられた船着き場の音「かし」の当て字の多くが、一斉に「柏」になる様子は、地名当て字に一定の法則性(流行)があることを示していると考えます。

この予備検討でも、小字データベースの利用価値が極めて高いことを確認できました。

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