2017年5月11日木曜日

西根遺跡 土器集中域詳細把握と問題意識

現在、大膳野南貝塚の学習と西根遺跡に学習を平行して実施しています。
この記事は西根遺跡学習に関するものです。

1 発掘調査報告書における西根遺跡土器集中域情報
発掘調査報告書では土器集中域に関して次の詳細図を掲載しています。とても詳しく内容が豊富な情報です。

土器集中地点検出状況・土層断面図1
「印西市西根遺跡」(2005)より引用

土器集中地点検出状況・土層断面図2
「印西市西根遺跡」(2005)より引用

土器集中地点検出状況・土層断面図3
「印西市西根遺跡」(2005)より引用

土器集中域の平面分布を見ると大変変化に富んでいます。
点線のように分布していて、それが円環状になっていたり、線上になっているものもあります。
直角がみられる分布域もあります。
さらに水域に孤立して分布しているものあります。
河川ですから洪水で土器が流されたとも考えますがあまりに不自然です。

2 情報整理
平面分布形だけからでは理解が深まりませんので、土層断面図を詳細に検討してみました。
上記図面では断面図が二つに分断されていたり、断面位置と断面図のページがことなっていたり、土層断面図とその凡例の場所がずれています。
そのため、私の頭脳容量では全体像を直観的に把握できないので、情報を一目でわかるように図面を整理しました。

情報整理図1

情報整理図2

情報整理図3

この情報整理図を熟読して、さらに発掘調査報告書文章記述を熟読して、同時に過去のさまざま河道との位置関係との対応を子細に検討しました。

その結果、判ったことや問題意識が芽生えたので、とりあえずそれをメモとして次に生でまとめました。

3 土器集中域に関する問題意識

私の「問題意識」図1
2017.05.11

私の「問題意識」図2
2017.05.11

私の「問題意識」図3
2017.05.11

図の番号について説明します。
1 水路「流出」は間違い
発掘調査報告書では流路1(縄文時代河道)に存在する土器は全て陸域からの「流出」として記述しています。
この記述は次の理由から間違いであることに気が付きました。
・この付近の戸神川は緩勾配で普段は水量が少なく、水流は土器を流せない。
・洪水時には印旛沼と同じ水位になり、流れがなく、土器を動かせない。
・発掘調査報告書では、流水中に土器を置いて「送る」という行為の存在に気が付いていない。
奈良平安時代の墨書土器もその時代の流路内に(復元すれば)ほぼ完形(になる姿)で沢山置かれています。
2016.06.10記事「西根遺跡 出土物から見る空間特性 その2」参照

水路内の土器集中はほとんど全て流水中に土器を置いて送ったものと考えます。
今後詳しく検討します。

2 円形境界線
土器を円形に置いて、その範囲内を土器送り場とするプロジェクトがあって、順次土器を持ち込んだ跡であるように想像しています。
円形が完成する前にプロジェクトは消滅したのだと思います。
円形境界線は発掘調査報告書では触れられていません。

3 直線境界線
土器を直線状において、土器送り場の境界を示したものであると想像します。
線状に並んだ土器が流水によってもたらされたという考えは完全に否定できると考えます。
直線境界線は発掘調査報告書では触れられていません。

4 四辺形
四辺形の存在は発掘調査報告書で着目しています。
なぜ四辺形になるのか興味が深まります。
四辺形は2円形境界線の下流に位置しています。
土器送り場の空間設計が、時代の流れの中で円形から四辺形に変化したことが想定できます。
社会の激しい変化を象徴しているように感得できます。
また円形は完成していないのに、四辺形は完成しているものもあり、さらに勢いが感じられます。
さらに四辺形は右岸(西岸)だけで、両岸ペアになっていません。
右岸(西岸)の土器送り場を担当した母集落がどこであるか、興味が湧きます。

5 散漫分布
土器集中が塊になるのではなく、散漫に分布することの意味について今後検討を深めていきます。
端から土器を隙間なく並べる方法と、好き勝手にあちらこちらに並べる方法の違いの背後にあるものに興味が湧きます。

6 両岸ペア
7 片岸偏在
上流域では両岸ペア、中下流域では片岸偏在のようになっていて、最初は仲良く両岸で土器送り場を作っていたのが、途中から右岸と左岸の土器送り場の場所を一緒にしなくなったように感じられます。
右岸側(西岸側)の土器送り場は印旛沼右岸(南岸)に位置する集落が、左岸側(東岸側)の土器送り場は印旛沼左岸(北岸)に位置する集落が担当していたと空想すると、印旛沼圏社会統制の時代変化があったのかもしれません。
印旛沼圏社会における集落間力関係の変化があったのかもしれません。

8 北北西方向
直線境界線と土器集中域の離れた二つの方向が北北西を向いていて一致します。
何か意味があるものと考えます。

これらの問題意識は今後土器形式等の学習を踏まえて、順次詳しく検討します。




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