2018年5月14日月曜日

特殊用途土坑(屋根付き土坑)の機能考察

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 42

大膳野南貝塚後期集落の土坑一次用途を次のように分類して考察を進めています。
・貯蔵土坑
・特殊用途土坑(屋根付き土坑)
・動物食関連送り場土坑
・植物食関連送り場土坑
・トイレあるいは植物食関連土坑
・土坑墓
・柱穴

この記事では特殊用途土坑(屋根付き土坑)について考察します。

1 特殊用途土坑(屋根付き土坑)の分布

特殊用途土坑(屋根付き土坑)
特殊用途土坑(屋根付き土坑)は3基観察できます。

2 北貝層の特殊用途土坑(屋根付き土坑)

特殊用途土坑(屋根付き土坑)と屋外漆喰炉関係図
特殊用途土坑(屋根付き土坑)と屋外漆喰炉の直線距離は5m程で近接しています。
屋外漆喰炉では漆喰炉に埋め込んだ甕に漁で得た貝を入れ、火で加熱してハマグリなどは貝の蓋を開けて実を固め、イボキサゴなどは実を固め、食用部分の取り出しを容易にするとともに保存に適した状態に加工していたと考えられます。

参考 屋外漆喰炉の様子 1号屋外漆喰炉 発掘調査報告書から引用
埋め込んだ甕に、底があるものと無いものがあり、底があるものならスープも採れますが底の無いものはスープは採れません。最初から底のない甕を設置している例があることから屋外炉で貝を加熱する主目的が二枚貝の蓋開けと二枚貝・巻貝の実の固め・保存用加工にあったことが判ります。

屋外漆喰炉で加熱して実を固めて取り出した食用部分は天日干しにして保存食品にしたものと考えられます。

天日干しする際には突然の雨に際して製品を避難させる施設が必要ですが、それが特殊用途土坑(屋根付き土坑)の一つの機能であったと考えられます。干し貝をしている最中に雨があった場合、貝の実を特殊用途土坑の軒下に避難させたと考えます。

また、完成した干し貝の貯蔵は通常の貯蔵土坑では雨に濡れて製品の品質が落ちますから特殊用途土坑(屋根付き土坑)に貯蔵したものと考えられます。干し貝完成品の一時貯蔵が特殊用途土坑(屋根付き土坑)のメイン機能であったと考えます。

干し貝専用の一時的貯蔵土坑があるということから、生活の場である竪穴住居には貯蔵しきれないだけの多量の干し貝を作っていたことが明らかになります。

なお、特殊用途土坑(屋根付き土坑)は魚介類加工場に存在するのですから、単純な干し貝一時貯蔵だけでなく、クサヤ・塩辛などの発酵食品をつくっていた多機能施設であると考える方が合理的です。

2 西貝層の特殊用途土坑(屋根付き土坑)

特殊用途土坑(屋根付き土坑)
特殊用途土坑(屋根付き土坑)の周辺には屋外漆喰炉や魚介類加工を暗示する燃焼にかかわる土坑はみつかりませんでした。

3 参考 南貝層の屋外漆喰炉付近の様子

南貝層屋外漆喰炉付近
南貝層屋外漆喰炉付近に特殊用途土坑(屋根付き土坑)をイメージできるような土坑が存在するか調べましたが、該当するような土坑はみつかりませんでした。

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