2018年5月8日火曜日

送り場等として再利用された貯蔵土坑の分布特性

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 38

貯蔵土坑のうち再利用(二次利用)されているものは24基あり土坑全部63基の38%にあたります。再利用の内訳は廃土坑墓・送り場1基、送り場22基、巨大柱穴1基となります。
詳しくはすでに2018.04.30記事「貯蔵土坑の二次利用 廃土坑墓・送り場・巨大柱穴」で分析しています。
この記事では再利用された貯蔵土坑の分布特性について検討します。
次の図は再利用土坑を図示したものです。

貯蔵土坑の二次用途
この図から二次用途のある貯蔵土坑だけを抽出していみます。

二次用途のある貯蔵土坑
二用途のある貯蔵土坑の分布が漆喰貝層あり竪穴住居の分布と相関するように環状分布として観察できます。
この環状分布に似ている遺構として動物食関連送り場土坑(貝や獣骨等が出土する送り場と推定した土坑)をあげることができます。
その動物食関連送り場土坑を分布図に一緒に書き込んでみました。

二次用途のある貯蔵土坑及び動物食関連送り場土坑
送り場等として再利用された土坑、動物食関連送り場土坑、漆喰貝層あり竪穴住居の分布が似ているのは偶然ではなく、その環状の空間が祭祀空間であったために必然的に分布する空間が重なったのだと考えます。
この環状分布と無関係と考えられる遺構として植物食関連送り場土坑(貝や獣骨等が出土しない送り場土坑…主食残飯や灰の送り場(捨て場))があります。またトイレ又は植物食関連土坑があります。送り場等として再利用された土坑の分布特性を浮き彫りにするために、これらの分布を重ねてみました。

二次用途のある貯蔵土坑及び動物食関連送り場土坑と植物食関連送り場土坑

二次用途のある貯蔵土坑及び動物食関連送り場土坑とトイレ又は植物食関連送り場土坑

これらの図から分布という観点から遺構種類をみると貝層分布をベースとする環状に分布するものと、環状とは無関係に集落全体に分布するものの2つがあることが判ります。
二次用途のある貯蔵土坑は環状に分布し、その環状空間は縄文人が祭祀空間としてイメージしていた場所であると考えます。

祭祀性が濃い遺構を分布図として集成すると次のようになり、個々遺構分布では観察できない明瞭な環状空間が出現します。

主要祭祀性関連遺構集成
貝層
地点貝層
廃屋墓
漆喰貝層出土竪穴住居
単独人骨
土坑墓
単独埋甕
小児棺
貯蔵土坑(二次用途送り場)
貯蔵土坑(二次用途廃土坑墓等)
動物食関連送り場土坑

一方祭祀性が薄い遺構分布を例示すると次のようになり、集落空間に一様の分布するように観察できます。

貝層分布と相関しない遺構の例
漆喰貝層が出土しない竪穴住居
植物食関連土坑
トイレ又は植物食関連土坑
貯蔵土坑(二次用途のないもの)
特殊土坑

上の「主要祭祀性関連遺構集成」図を下の「貝層分布と相関しない遺構の例」図と比較していろいろなことが判明しますが、この記事では次の4点をメモします。

1 集落住人が代々共通してイメージを引き継いだゾーニングとしての祭祀環状空間の存在が判ります。

2 竪穴住居、貯蔵土坑などは必ずしも祭祀環状空間に合わせて建設していないけれども、祭祀環状空間に存在する竪穴住居、貯蔵土坑はその廃絶後送り場、廃屋墓など祭祀の場として使われたものが多かったと考えられます。

3 竪穴住居の漆喰貝層あり、なし区分は祭祀環状空間との関わりで廃絶後に生まれる事象であることから、その区分は集団等の別とは関係しない可能性が強いと考えます。(これまで逆に集団等の違いがあると疑っていました。) 
打ち消しの理由は2018.05.12記事「疑問 竪穴住居漆喰貝層有無の意義」参照

4 同じ送り場土坑でも動物食関連土坑と植物食関連土坑の分布特性が全く異なることから動物食(貝・魚介類・獣)がご馳走であり、口にする回数が少ないのであり、それだけ祭祀の場にふさわしい食事であったことが判ります。

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