2018年5月11日金曜日

疑問 環状集落中空ゾーンの意義

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 39

2018.05.08記事「送り場等として再利用された貯蔵土坑の分布特性」を書いて次の2つの大きな疑問を意識しました。

1 大膳野南貝塚という環状集落の中央部分の広場はどのような意義を持つか?
2 竪穴住居の漆喰貝層あり、なしの区分は本当に集団と関係がないか?

2つの疑問ともに大膳野南貝塚学習を進める上で根本的な課題であると感じますので、土坑学習に没頭して忘れてしまっては元も子もないので、取り急ぎメモします。
この記事では1についてメモします。

1 中空ゾーンの存在
廃屋墓、土坑墓等の葬祭関連遺構の分布は環状になっていて、その中央部分は中空になっています。この領域を中空ゾーンと呼ぶことにします。

廃屋墓・土坑墓等
環状集落によってはこのゾーンに土坑墓が集中している例があり、それを念頭に土坑を良く調べましたが大膳野南貝塚では中空ゾーンに「めぼしい」遺構は見つかりません。

2 参考 装身具出土遺構
人骨は出土しないけれどもその土坑が土坑墓である決め手として、そこから装身具が出土していることをもって論をすすめている検討例もあります。そうした検討例を参考に大膳野南貝塚の装身具出土遺構を調べてみました。

装身具出土竪穴住居・土坑
中空ゾーンからは装身具は出土していません。
中空ゾーンは葬祭の場ではないようです。

3 中空ゾーンの意義
竪穴住居・土坑分布図に中空ゾーンをプロットしたみました。

竪穴住居・土坑
中空ゾーンは漆喰貝層なし竪穴住居に囲まれているように観察できます。またその中央部分(”ゾーン”の字の付近)には列状に土坑(植物食関連送り場土坑、トイレあるいは植物食関連送り場土坑)が分布します。
この分布図だけから中空ゾーンの意義を論証できることはありませんが、空想をすることはできます。学習を進める上で後に間違いであることがわかるにしても何も考えないより少しでも考えておくほうがよいに決まっています。
そこで浮かんできた中空ゾーンの意義に関する空想をメモします。

中空ゾーンがあまり意味の無い空間であったとは到底考えられません。他の遺跡でこのゾーンに土坑墓が集中配置されている例があるからです。
また環状構造を作っておいて、その中央部分が無意味であるはずはありません。

廃屋墓を観察すると多人数でかつ性別年齢が異なる人が埋葬されている例があります。この埋葬は特定時期にほぼ同時に死亡したのではなく、バラバラの時期に別の事情で死亡した人が別の場所で殯が行われ(ミイラ化され)、ある特定の時期に同時に廃屋墓に持ち込まれたと考えました。
2017.12.26記事「殯(モガリ)におけるミイラ作成」参照
廃屋墓はあくまで最後の埋葬地であり、その前に長期間にわたる(半年~1年~2年?)ミイラ作成場所(殯の場所)が必要です。
その場所は居住している竪穴住居であるとは考えづらいことです。
またその場所を集落の外や谷津であると考えることも縄文人の死者に対する気持ちに反するように感じます。
そのミイラ作成場所(殯の場所)こそ中空ゾーンだったのではないかと空想します。
404号土坑(ヒト骨出土土坑、植物食関連送り場土坑)は深さ13cmの浅い土坑ですが、ここからヒト頭骨細片1点が出土していて、浅い土坑がミイラ作成場所と関連していた可能性を暗示しています。

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