2018年5月12日土曜日

疑問 竪穴住居漆喰貝層有無の意義

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 40

竪穴住居から漆喰貝層が出土するか否かが集団の違いに対応するかどうか疑問を抱いています。

竪穴住居の分布

2018.05.08記事「送り場等として再利用された貯蔵土坑の分布特性」では次のように書きました。
「3 竪穴住居の漆喰貝層あり、なし区分は祭祀環状空間との関わりで廃絶後に生まれる事象であることから、その区分は集団等の別とは関係しない可能性が強いと考えます。(これまで逆に集団等の違いがあると疑っていました。) 」

しかし、この記述は不十分でしたので否定することにします。貝層の出土は廃絶後覆土層に投げ込まれたものですから廃絶後に生まれた事象ですが、漆喰貼床、漆喰炉は竪穴住居が生活に利用されていた時期に設置されたものだからです。
漆喰と貝層出土は強く相関し、空間的には祭祀環状空間に分布します。

竪穴住居の漆喰貝層あり、なしは集団の違いに対応するというこれまでの考えを踏襲することにします。
2018.02.27記事「新発見 貝塚における異なる生業2集団の共存 大膳野南貝塚後期集落」参照

ただし、これまでは漆喰貝層あり竪穴住居の集団と漆喰貝層なし竪穴住居の集団の2つが直接集落を構成するようにイメージしていたのですが、貯蔵土坑の検討から下図にあるように集落を直接構成するのは3つの家族集団であることがわかったのですから集落構成イメージを少し変更する必要があります。

貯蔵土坑に関する作業仮説
2018.05.07記事「貯蔵土坑と竪穴住居との関係」参照

疑問として思考停止するのではなく、結果として間違ってもよいから作業仮説を立てて学習を進める立場から集落構成イメージを次のように推定します。

大膳野南貝塚後期集落の構成(推定)
漆喰貝層あり竪穴住居家族は漁労・狩猟・採集を生業とする家族で集落内で主導的役割を果たし、漆喰貝層なし竪穴住居家族は狩猟・採集を生業とする家族で集落内で追従的役割を果たしていたと推定しました。推定根拠の一つとして漆喰貝層なし竪穴住居が祭祀環状空間から外れた中空ゾーンや谷津斜面に分布することをあげます。
また漆喰貝層あり竪穴住居家族と漆喰貝層なし竪穴住居家族の埋葬方式が異なりますので、恐らくルーツが異なる集団であると想像します。

想像に想像を重ねれば3つの貝層別集団の中で、漆喰貝層あり竪穴住居家族集団と漆喰貝層なし竪穴住居家族集団は生業の特色を生かして相互協力関係・補完関係にあったものと推定します。同時に祭祀における優劣関係も明白であったと推定しますが支配-非支配という関係でないことは漆喰貝層なし竪穴住居によって南北貝層が分断されている(漆喰貝層なし竪穴住居を移転させることができない)ことからもわかります。

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