2021年3月20日土曜日

加曽利博研究講座「縄文を知る」を聴講する

 本日(2021.03.20)加曽利貝塚博物館主催講座を聴講してきました。印象が薄れないうちにメモします。2人の先生からとても興味深い話がありました。とても贅沢な参加です。広大なホールに選ばれし市民30人程度が何人分もの席を我が物顔に占有しての聴講です。(コロナのため抽選参加です。)

加曽利貝塚博物館主催「市民のための研究講座「 縄文を知る - 市内縄文研究概論 - 」」

●「千葉市有吉南貝塚の縄文時代集落形成について」青笹早季先生(千葉市教育委員会文化財課)

●「有吉北貝塚の特異な人骨埋葬例―SB096-A人骨の事例―」千葉南菜子先生(千葉市教育委員会文化財課)

1 「千葉市有吉南貝塚の縄文時代集落形成について」青笹早季先生(千葉市教育委員会文化財課)


講演の様子

博物館ホームページには有吉北貝塚と書いてありましたが、ミスプリだったようです。お話は有吉北貝塚の隣有吉南貝塚でした。千葉市有吉南貝塚と流山市中野久木谷頭遺跡との対比で加曽利E式期頃の集落消長を分析して、中期末にはほぼ同時期に終焉した様子を話されました。終焉した理由は急成長しすぎたことによる崩壊と気候変動の2つが一般にいわれているが、まだ断定できる状況にはないとのことでした。

【感想】

中期末にこれらの集落が終焉した要因について、これまで思考したことが走馬灯のように脳裏をよぎりました。自分が仮説的に考えている2つの主要要因…1河川や谷津の堆積作用進行による海岸漁業環境の劣悪化、2加曽利EⅡ式期の爆発的人口急増による劇的破綻…についてもっと思考を深めたいと思いました。

2 「有吉北貝塚の特異な人骨埋葬例―SB096-A人骨の事例―」千葉南菜子先生(千葉市教育委員会文化財課)


講演の様子

現在学習中の有吉北貝塚そのもの事例ですから大いに興味が深まります。加曽利EⅠ式期に埋葬された人骨が加曽利EⅢ式期に掘り出され、多数の部位が切断・折断され、何らかの利用が行われ、再び同じ場所に埋葬されたと理解できる事例の研究の報告です。ほぼ同じ趣旨がすでに発掘調査報告書で述べられていますが、千葉先生はこの人骨の切断痕を精査するなどして、切断人骨が磨耗するまで多くの人の手で扱われたことを明らかにしました。死者と生者が文字通り共存して生活する実体が浮かび上がったことになります。

【感想】

加曽利EⅠ式期で埋葬された時点から加曽利EⅢ式期に埋葬人骨が掘り出された時点までの時間はおそらく50~60年であり、掘り出した人々は埋葬人骨本人の素性を伝え聞いていたと想像します。有吉北貝塚集落のいわば創始者の力を借りる、墓を掘り起こして人骨を取り出して、集落創始者のタマシイと直接交流して助けを借りざるをえないような重大事態が加曽利EⅢ式期に生じていたと想像します。


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