2021年3月1日月曜日

加曽利EⅠ式深鉢(No.36)(松戸市根木内遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 552

加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」で展示された加曽利EⅠ式深鉢(No.36)(松戸市根木内遺跡)を3Dモデルで観察しましたのでメモします。観察は2021.02.26記事「加曽利EⅠ式深鉢(No.20)(市川市向台貝塚) 観察記録3Dモデル (観察項目検討と詳細観察)」で設定した観察項目により行います。

1 加曽利EⅠ式深鉢(No.36)(松戸市根木内遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式深鉢(No.36)(松戸市根木内遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.02

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 91 images


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開 テクスチャ


GigaMesh Software Frameworkによる展開 ソリッド


GigaMesh Software Frameworkによる展開 分析用加工

3 観察とメモ

以下の文章は観察記載ですが、【感想・メモ】は妄想・空想を含めた感想や学習上のメモです。

……………………………………………………………………

1 器形

1-1 基本器形

キャリパー形。

【感想・メモ】同じキャリパー形といっても加曽利EⅠ式深鉢(No.20)(市川市向台貝塚)とは形状の印象がだいぶ異なります。口縁部及び胴部の膨らみ方がNo.20土器とくらべてNo.36土器は少ないです。このような違いがどれほどの意味があるのか、注意しながら多数土器を観察していくことにします。


No.20土器とNo.36土器の器形比較

この二つの土器の器形の違いが時期の違いによるものか、地域の違いによるものか、用途の違いによるものか、その違いに大きな意味がないのか興味が湧きます。

加曽利博企画展展示加曽利EⅠ式土器の器形を並べて比較検討する機会を追ってつくりたいと思います。

1-2 細部器形

3単位の把手が特徴的です。3単位のうち手前の把手が他の2つの把手より幾分大きくなっていて、主把手1、副把手2という構成のように把握します。主把手の部分の器形が幾分広がっていて、口唇部が正円から外れた膨らみを持ちます。


主把手方向に口縁部が膨らんでいる様子

【感想・メモ】把手の数は4単位が多いように感じますが、統計的にどうなのか調べる(調べた情報を探す)ことにします。

把手の数は土器が表現する物語(神話)の内容に大きくかかわっているのではないだろうかと想像します。例えば把手の数や把手の主縦の違いは物語に登場する神様(あるいはそれに類似する概念)の数や軽重に関係するのかもしれません。

2 大きさ、容量

2-1 器高

46.4㎝。3Dモデルから計測。

2-2 最大器幅

33.6㎝。3Dモデルから計測

2-3 口唇部器壁厚

計測中。

2-4 容量(推定)

計測中。

3 文様

3-1 文様帯の段区分と主文様帯の位置

口縁部区画文の2条隆帯の下辺が土器を周回するように配置され、それにより口縁部と胴部の2段に土器が区分されます。主文様帯は口縁部に存します。

3-2 文様帯の特徴

ア把手

口唇部を周回する2条隆帯及び口縁部区画文を成す2条隆帯と連続して把手部に輪と渦が立体的に構成されています。把手に縄文は施文されていません。

渦の一つには重畳する模様が描かれています。この文様は中峠式土器の把手文様にも見られました。


重畳する模様が描かれる把手の渦文様


参考 中峠式土器(中峠0地点型深鉢 松戸市中峠遺跡)の把手に見られる重畳模様

イ 口縁部

2条隆帯によるクランク文で区画されクランク形状や楕円形状の区画が形成されています。区画内は縄文が施文されています。2条隆帯には渦が配置されています。

ウ 胴部

2条沈線と蛇行沈線の垂下で胴部が区画されています。縄文施文の後沈線の施文が行われています。

【感想・メモ】把手文様は口縁部文様から連続していることから、把手は口縁部から生えていると考えることが出来ます。

渦の周りの重畳する模様は渦の波紋あるいは吹き上がる水がばらけて降りそそぐ様子を想起させます。

把手の孔は土器外面側に2つ、内面側に1つ合計3つあります。この表現は湧水水中から泡がボコボコ湧いている様子を立体的に表現しているのだと想像します。

把手→口縁部→胴部の順に文様施文が簡易になります。これはその順番にその部位の物語意義が虚弱になることを意味していると想像します。

把手は天空界と神の領域のインターフェイスを、口縁部は天空界(故人の住む天空にある世界)を胴部は地上界(人が住む現実世界)を表現していると空想します。

口縁部2条隆帯によるクランク文はS字状文の変異型であると想像します。

天空界と地上界の区画はそれぞれの世界での集落生活上の区画(集落が確保している縄張り)を表現していると想像します。

4 展示館説明

4-1 型式

加曽利EⅠ式深鉢。

4-2 出土遺跡

松戸市根木内遺跡出土。

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