2022年9月26日月曜日

「294土器破片と貝層断面図の関係」3Dモデルの作成と観察方法の初歩的検討

 The 3D model of "Relationship between 294 pottery fragments and cross-section of the shell layer" and observation method.


I created a 3D model of "Relationship between 294 pottery fragments and cross-section of the shell layer". At the same time, a basic study was conducted on how to grasp the relationship between the 3D distribution of pottery fragments and the stratigraphy of shell layers. In the future, I aim to acquire new knowledge on shell layer continuity through more detailed investigations.


「294土器破片と貝層断面図の関係」3Dモデルを作成しました。同時に、土器破片3D分布と貝層層位との関係把握方法について初歩的な検討しました。今後さらに詳しく検討して貝層連続性に関する新知見獲得を目指します。

1 「294土器破片と貝層断面図の関係」3Dモデルの作成

294土器破片の3D分布、貝層断面図15枚及び土器片分布平面図・立面図をBlender座標に同寸でプロットしました。

「294土器破片と貝層断面図の関係」3Dモデル

294土器破片:赤小立方体


貝層断面図凡例(貝層断面2の例)

赤小立方体の大きさは0.1m×0.1m×0.1mで、3Dモデル正面からみて左下奥の頂点が正確な出土ポイントを指す。土器片分布平面図の緑線メッシュは2m×2m、立面図は2m×1m。

土器片分布平面図、立面図、貝層断面図は有吉北貝塚発掘調査報告書から引用・塗色

"Relationship between 294 pottery fragments and cross-section of the shell layer" 3D model

"Relationship between 294 pottery fragments and cross-section of the shell layer" 3D model

294 Pottery Fragment: Red Small Cube

Shell layer cross section legend (example of shell layer cross section 2)

The size of the red small cube is 0.1m x 0.1m x 0.1m, and the vertex in the lower left corner when viewed from the front of the 3D model indicates the exact excavation point. The green line mesh of the earthenware fragment distribution plan is 2m x 2m, and the elevation is 2m x 1m.

The pottery fragments distribution plan, elevation, and cross-section of the shell layer are quoted from the Ariyoshi Kita Shell Mound Excavation Report and colored.

次に、このモデルの主要情報だけを抜き出して、シンプル版をつくりました。

「294土器破片と貝層断面図の関係」3Dモデル (シンプル版)

294土器破片:赤小立方体

貝層断面図凡例(貝層断面2の例)(上に同じ)

赤小立方体の大きさは0.1m×0.1m×0.1mで、3Dモデル正面からみて左下奥の頂点が正確な出土ポイントを指す。

貝層断面図は有吉北貝塚発掘調査報告書から引用・塗色

"Relationship between 294 pottery fragments and cross-section of the shell layer" 3D model (simple version)

294 Pottery Fragment: Red Small Cube

Shell layer cross section legend (example of shell layer cross section 2)

The size of the red small cube is 0.1m x 0.1m x 0.1m, and the vertex in the lower left corner when viewed from the front of the 3D model indicates the exact excavation point. 

The shell layer are quoted from the Ariyoshi Kita Shell Mound Excavation Report and colored.


3Dモデル(シンプル版)の動画

2 土器破片3D分布と貝層断面図の関係把握方法

2-1 単純投影方法について

貝層断面図は縦断図1枚、横断図14枚が描かれています。


貝層断面図配置の様子

当初は、貝層断面図横断図の内13枚は2mピッチと短い距離であることから、土器破片を最寄りの横断面図にY軸方向(縦断方向)に投影して、該当する貝層層位がその土器破片の出土層位であるとすればよいと考えました。(単純投影方法)

しかし、実際の3Dモデルをみると、貝層が縦断方向にきつい勾配を有しているところが広範囲にわたっています。このため、単純投影方法では土器破片と貝層層位の対応は大きな誤差が生まれることは明白です。従って、単純投影方法は採用できないことを悟りました。

2-2 貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法

貝層の縦断方向勾配は上流で急であり、下流で緩やかです。その様子は全体として趨勢的に変化しているように見えます。そこで、断面図毎にその場所の貝層層位(貝層分類)が趨勢的な勾配を持って上下流方向に分布していると仮想します。その仮想貝層3D分布と土器片3D位置を対応させて、土器片が出土する貝層層位を把握することにします。趨勢的勾配で仮想する貝層が現実に存在した貝層とどれだけの精度で対応するのかは不明ですが、「単純投影方法」とくらべればはるかに高い精度になります。この方法を「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」と呼ぶことにします。

294土器は横断面図2付近に9個の土器破片が分布します。この9個の土器破片について「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」を適用すると次のようになります。


294土器の横断面図2付近における「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」適用 上流側


294土器の横断面図2付近における「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」適用 下流側

土器破片9個の出土貝層層位問題はそれが純貝層とどのような関係にあるかということに集約されます。

これまでの学習作業で、純貝層から出土する遺物はほとんどなく、遺物のほとんどは純貝層下の混貝土層や混土貝層から出土することが判っています。

そこで、純貝層の断面がそのままの形状で縦断方向にこの付近の趨勢的勾配で存在していたと模式的に仮想して、その模式仮想貝層に294土器破片9個が対応するかどうか調べてみました。

なお、この付近の趨勢的縦断勾配は貝層断面図1(縦断面図)を利用してもよいのですが、土器破片9個の縦断勾配の方がより正確なので、それを使います。なんとなれば、この9個がばら撒かれたときの地表面の位置がこの9個の出土位置と一致し、その縦断方向線が当時の地表面の勾配であると考えられるからです。

結果として、模式仮想純貝層に対応する土器破片は、横断面2の上流側で4個の内2個、下流側で5個の内で2個ということになります。ただし模式仮想純貝層に対応するといっても全てその最下層部分です。

この結果から294土器破片は純貝層が形成される直前頃から純貝層形成開始直後頃にばら撒かれたと時間幅を持って読み取ることができます。ただし、土器破片がばら撒かれたのはある一時点であり、時間幅はありません。したがって、解釈としては「294土器破片は純貝層が形成される直前頃に(あるいは純貝層形成開始直後頃に)ばら撒かれた」という2つの異なる可能性を指摘することになります。

この2つの異なる解釈は両立できないものですから、他の情報に基づいて、どちらか一つを選択する必要があります。

2-3 貝層3Dモデル作成による方法

貝層横断面の縦断的連続性の検討は発掘調査報告書では行われていません。しかし、2-2の方法を適用して、個別土器の破片と貝層断面図情報(貝層層位)の対応が判ってくると、貝層層位の区分とその連続性が判ってきます。その時点で、判明した貝層層位区分に基づく貝層3Dモデル(貝層層位毎の3Dモデル)をBlenderで作成し、それと土器破片の対応を検討することにより、より蓋然の高い土器破片3D分布と貝層断面図の関係把握を検討することができます。この方法を「貝層3Dモデル作成による方法」と呼ぶことにし、将来の取組課題とします。

3 メモ

次の記事で、2-2の方法により294土器の全土器破片と貝層との関係を把握し、その結果を考察することにします。

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