2022年10月19日水曜日

散乱人骨分布と土器分布の相関

 Correlation between scattered bone distribution and pottery distribution


A three-dimensional graph of the scattered bone data number distribution of the north slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound reveals a close correlation with the distribution of concentrated discarded pottery (Kasori EII type pottery). I had an intuition that a completely new development would begin in considering the significance of Kasori EII-style concentrated pottery dumping.I made a working hypothesis of "slope burial".


有吉北貝塚北斜面貝層の散乱人骨データ数分布を立体グラフにしたところ、集中投棄土器分布(加曽利EⅡ式土器)と密接な相関が観察できます。加曽利EⅡ式土器集中投棄の意義を考える上で全く新たな展開が始まると直観しました。「斜面葬」を作業仮説しました。

1 散乱人骨データ数分布と加曽利EⅡ式土器(第10・11群)分布

散乱人骨データ数分布と加曽利EⅡ式土器(第10・11群)分布

散乱人骨データは2m×2mメッシュ内のデータ数を立体グラフで示す。(データ数[1~48]は高さに比例して表示。灰色1~9、濃灰色10~39、黒色40以上)

加曽利EⅡ式土器(第10・11群)分布は出土3D位置を土器片1つずつ0.3m×0.3m×0.3mの赤立方体で示す。

Number distribution of scattered bone data and distribution of Kasori EII pottery (groups 10 and 11)

Scattered bone data shows the number of data in a 2m x 2m mesh in a three-dimensional graph. (The number of data [1 to 48] is displayed in proportion to the height. Gray 1 to 9, dark gray 10 to 39, black 40 or more)

The distribution of Kasori EII type pottery (groups 10 and 11) indicates the excavated 3D position of each pottery fragment with a red cube measuring 0.3m x 0.3m x 0.3m.


「散乱人骨データ数分布と加曽利EⅡ式土器(第10・11群)分布」画像


「散乱人骨データ数分布と加曽利EⅡ式土器(第10・11群)分布」動画

2 メモ

散乱骨(人骨)は北斜面貝層の広域に分布します。貝層で埋葬が行われたことを示していると考えます。

一方、散乱人骨が集中する範囲は限定され、メッシュ番号ではⅡ-10、21、32とその周辺になります。メッシュⅡ-10、21付近は勾配35度程度の急斜面(ガリー侵食地形の谷頭部)になっています。この急斜面では谷頭上部縁から貝が投棄されることにより混貝土層が生成し、また土器も投棄されていることがデータで観察できています。このような荒蕪急斜面に遺体が置かれ埋葬されたか、あるいは(実感を伴った思考になりませんが)ガリー谷頭上縁部から遺体が副葬品とともに投棄されるという埋葬形式が取られたかのどちらかの埋葬があったと考えられます。どちらの形式であっても、重力作用と年に数回程度の大雨で遺体や副葬品は混貝土層とともに下流に流されていくことを前提とする埋葬になります。「斜面葬」とでもいうべき特殊な埋葬であると考えられます。

一方、散乱人骨分布と加曽利EⅡ式土器(第10・11群)分布がほぼ一致することは、土器集中投棄と考えられてきた現象が埋葬と関係するかもしれないという、これまでに報告のない新たな仮説が生まれる可能性があります。荒蕪急斜面で遺体を埋葬するとき、遺体を大型土器破片で覆う埋葬が行われたならば、散乱骨分布と同じ分布で土器破片が残ります。つまり、荒蕪急斜面埋葬で大型土器破片で遺体を覆う埋葬がおこなわれたという作業仮説を立てて今後の分析を行うこととします。


●作業仮説

加曽利EⅡ式期に北斜面貝層空間の谷頭付近荒蕪急斜面で、大型土器破片で遺体を覆う埋葬が盛んに行われた。その埋葬は重力や雨水で遺体・副葬品や大型土器破片が下流に流下して、下流で混貝土層に自然埋設されるいわば「斜面葬」とでもいうべき特殊な埋葬方法であった。


なお、この作業仮説の蓋然性を補強する一情報として、竪穴住居(SB096)から出土した埋葬人骨の頭部が同一土器大破片で挟まれていることをあげることができます。(発掘調査報告書370ページ)なお、この事例に関する講演を聴講して記事に書いたことがあります。2021.03.20記事「加曽利博研究講座「縄文を知る」を聴講する


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