大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 9
竪穴住居から出土した石器数を漆喰貝層有無別に観察します。
1 竪穴住居からの石器出土数
竪穴住居からの石器出土数
最初期の漆喰貝層有竪穴住居は5軒だけですが石器出土数が異様に大きく不自然です。
時期別に竪穴住居数は大幅に変動しますから、竪穴住居1軒あたり平均出土数で比較して観察してみました。
時期別竪穴住居1軒あたり平均石器出土数
観察ア
最初期(漆喰貝層有は称名寺式期~堀之内1古式期、漆喰貝層無は加曽利E4式期~称名寺式期)の漆喰貝層有が飛びぬけた直となっています。
観察イ
集落が貝塚集落であった時期(漁業がおこなわれていた時期)漆喰貝層無竪穴住居からの石器出土数は極めて乏しく、有と比べて多くて13%程度ですが、貝塚集落終焉以後の期(堀之内2式期~加曽利B1式期、加曽利B1式期)になると急増して堀之内1式期・堀之内2式期の有竪穴住居と同等程度の直になります。
2 考察
2-1 最初期漆喰貝層有竪穴住居の石器多量出土の理由(観察ア)
最初期漆喰貝層有竪穴住居からの石器出土数を後期集落全体の順位グラフで確かめると次のようになります。
石器数出土順位グラフ
5軒の竪穴住居のうち3軒からの石器出土数が特に多く平均値を大幅に押し上げている状況が確認できます。
この5軒の分布は次の通りです。
称名寺式期~堀之内1古式期竪穴住居(すべて漆喰貝層有竪穴住居)
この5軒は大膳野南貝塚後期集落の最初の漁民家族です。貝塚集落の始祖家族の住居です。
この始祖家族が苦労して東京湾の漁業権を獲得して、以後集落が東京湾で漁業ができるようになったのです。
これら始祖家族に対する祭祀は長い間繰り返し行われ、その時のお供え物が累積的に蓄積したと考えられます。通常の竪穴住居廃絶祭祀とはことなり、後々まで集落の人々に語りつがれ、始祖を敬う祭礼が行われたと考えます。
そのお供え物のうち土器や石器が残り多量に出土していると考えます。
中テン箱数(大ざっぱには土器の量に比例するようです)も同じ傾向を示しています。
参考 中テン箱数
2-2 貝塚集落終焉後に漆喰貝層無竪穴住居の石器出土が増える理由(観察イ)
漆喰貝層有竪穴住居は堀之内2式期までで、この期で貝塚集落は終わります。漁民家族は狩猟も植物採集も全て自前でおこなっていて繁栄した時期もあるので、生業上の理由から移動したということは考えづらいと思います。恐らく何らかの理由で集落崩壊して衰滅したと想像します。その衰滅理由にもよりますが、例えば清潔な飲料水の枯渇(疾病を伴う水質の汚染)が原因ならば漁民家族だけでなく漆喰貝層無竪穴住居の家族も衰滅したに違いありません。
想像を重ねると、堀之内2式期に集落は一旦全滅し、その後に漁業権を持っていない別の家族が外部から入り、この場所に竪穴住居を構えたと考えます。
2018年1月16日火曜日
2018年1月13日土曜日
漆喰貝層有無竪穴住居別石器出土数
大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 7
竪穴住居からの石器出土状況を漆喰貝層有無別に観察します。
1 漆喰貝層有無竪穴住居別石器出土状況
漆喰貝層有無竪穴住居別石器出土割合
漆喰貝層有竪穴住居の50%から、無竪穴住居の30.9%から石器が出土します。
漆喰貝層有無竪穴住居別石器出土数
竪穴住居出土石器数は漆喰貝層有竪穴住居は無竪穴住居の5倍近くになります。
参考 漆喰貝層有無別竪穴住居数
2 漆喰貝層有無別竪穴住居からの石器出土数
漆喰貝層有無別竪穴住居からの石器出土数
(グラフ表現の理由から黒曜石を表示していません。黒曜石の出土数は漆喰貝層有竪穴住居115、無竪穴住居17です。)
石器種類別にみると、全ての種類で漆喰貝層有竪穴住居の出土数が無竪穴住居の出土数より大幅に上回ります。
3 考察
・漆喰貝層無竪穴住居の石器出土状況が大変貧弱であり、漆喰貝層有竪穴住居グループとは対等とはとても言えない貧しい生活をしていた様子が推察できます。
・石鏃出土数が漆喰貝層有竪穴住居で38と他の種類を抜いて多く、石鏃が狩猟活動で使っていたと考えると、漆喰貝層有竪穴住居家族は漁撈活動だけでなく狩猟活動もおこなっていたことが想定できます。同時に磨製石斧、打製石斧や敲石、磨石、凹石なども出土するのですから植物採集やその調理も行っていたことになります。
・石器出土状況から漆喰貝層有竪穴住居グループが漁労、狩猟、植物採集活動をすべて行っていたと考えると、漆喰貝層有竪穴住居グループと無竪穴住居グループの間に職種によるような分業が行われていた可能性が小さくなります。
・職種によるような分業ではなく、無竪穴住居グループによる一方的な労働力提供が行われていた可能性も検討の俎上にあげる必要があるかもしれまえせん。
・ひょっとすると奴隷的な意味での優位-劣位関係も検討する必要があるような気がします。
さらに検討を深めます。
竪穴住居からの石器出土状況を漆喰貝層有無別に観察します。
1 漆喰貝層有無竪穴住居別石器出土状況
漆喰貝層有無竪穴住居別石器出土割合
漆喰貝層有竪穴住居の50%から、無竪穴住居の30.9%から石器が出土します。
漆喰貝層有無竪穴住居別石器出土数
竪穴住居出土石器数は漆喰貝層有竪穴住居は無竪穴住居の5倍近くになります。
参考 漆喰貝層有無別竪穴住居数
2 漆喰貝層有無別竪穴住居からの石器出土数
漆喰貝層有無別竪穴住居からの石器出土数
(グラフ表現の理由から黒曜石を表示していません。黒曜石の出土数は漆喰貝層有竪穴住居115、無竪穴住居17です。)
石器種類別にみると、全ての種類で漆喰貝層有竪穴住居の出土数が無竪穴住居の出土数より大幅に上回ります。
3 考察
・漆喰貝層無竪穴住居の石器出土状況が大変貧弱であり、漆喰貝層有竪穴住居グループとは対等とはとても言えない貧しい生活をしていた様子が推察できます。
・石鏃出土数が漆喰貝層有竪穴住居で38と他の種類を抜いて多く、石鏃が狩猟活動で使っていたと考えると、漆喰貝層有竪穴住居家族は漁撈活動だけでなく狩猟活動もおこなっていたことが想定できます。同時に磨製石斧、打製石斧や敲石、磨石、凹石なども出土するのですから植物採集やその調理も行っていたことになります。
・石器出土状況から漆喰貝層有竪穴住居グループが漁労、狩猟、植物採集活動をすべて行っていたと考えると、漆喰貝層有竪穴住居グループと無竪穴住居グループの間に職種によるような分業が行われていた可能性が小さくなります。
・職種によるような分業ではなく、無竪穴住居グループによる一方的な労働力提供が行われていた可能性も検討の俎上にあげる必要があるかもしれまえせん。
・ひょっとすると奴隷的な意味での優位-劣位関係も検討する必要があるような気がします。
さらに検討を深めます。
2017年4月9日日曜日
大膳野南貝塚 前期後葉集落 石器出土数分布
1 土器出土数のおさらい
大膳野南貝塚前期後葉集落の石器出土数分布を土器出土数分布と比較しながら考察するために、最初に土器出土数をおさらいします。
次の分布図は土器・石器出土量(中テン箱数)を示したものです。
大膳野南貝塚 前期後葉 土器・石器出土量(中テン箱数)
土器と石器を合わせたものですが、土器出土量に近似するデータとして利用できると考えます。
J56が特段に多いことが特徴となっています。
土器形式は浮島式土器と諸磯式土器が出土し、どちらかの形式が凌駕する竪穴住居が多いので、その凌駕する土器形式(主体形式)を次の分布図にプロットしました。
この分布図は当初は発掘調査報告書の記述を細かく分析して、文章の表現に忠実に従って作成したのですが(2017.04.02記事「大膳野南貝塚 浮島式土器と諸磯式土器」参照)、その後発掘調査報告書のまとめに形式優位性の記述がありましたので、そのまとめ記述に従い改訂したものです。
大膳野南貝塚 前期後葉 竪穴住居祉 主体土器形式分布
空間的に浮島式土器と諸磯式土器が棲み分けているように観察できます。
土器・石器出土量が多い竪穴住居(J56、J72)は浮島式土器が主体の竪穴住居になります。
なお、参考までに土製品出土竪穴住居を示すと次のようになり、J56、J72竪穴住居が該当します。
大膳野南貝塚 前期後葉 土製品出土竪穴住居
上記の土器関連分布図と対照しながら石器出土分布を考察することにします。
2 石器出土分布
2-1 石器製品合計出土数
次の図は石器製品合計出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 石器製品合計出土数
石器製品合計出土数分布は土器出土量分布と似た分布を示します。
竪穴住居主人が死亡してその竪穴住居が廃絶し、故人の送り祭祀をするときに供えられた土器の量と石器の量はほぼ相関するというイメージを持つことができました。
土器の量が増えれば、石器の量も増えるということになります。
2-2 狩猟関連石器出土数
次の図は尖頭器・石鏃合計出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 尖頭器・石鏃合計出土数
この分布図もJ56、J72が多く土器出土分布と似ています。
2-3 動物加工関連石器出土数
次の図はスクレイパー・石錐・石匙・クサビ形土器合計出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 スクレイパー・石錐・石匙・クサビ形土器合計出土数
この分布図も土器出土量分布とにているように観察できます。
2-4 漁撈関連石器出土数
次の図は軽石製品出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 軽石製品出土数
J58,J22の出土量が多く、その竪穴住居は諸磯式土器が主体の竪穴住居です。
浮島式土器主体の竪穴住居からも軽石製品は出土しています。
2-5 植物採集関連石器出土数
次の図は礫器・磨製石斧・打製石斧合計出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 礫器・磨製石斧・打製石斧合計出土数
石斧の出土数は少ないのですが、浮島式土器竪穴住居から出土していないことが特徴です。
2-6 植物調理加工関連石器出土数
次の図は磨石・敲石・凹石・石皿・スタンプ状石器合計出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 磨石・敲石・凹石・石皿・スタンプ状石器合計出土数
これらの石器の出土数の合計は浮島式土器竪穴住居より諸磯式土器竪穴住居の方が倍近く多くなります。
狩猟や動物加工関連石器とは明らかに異なる分布傾向を示します。
3 考察
浮島式土器竪穴住居であるJ56からの石器出土数が特段の多く、次いでJ72が多いことが判りました。
石器出土数では浮島式土器竪穴住居が諸磯式土器竪穴住居を大きく凌駕します。
石器の中で狩猟・動物加工関連石器の占める割合が多いので、浮島式土器竪穴住居が狩猟と関連が深いことがイメージできます。
一方、漁撈・植物採集・植物調理加工関連石器を見ると、諸磯式土器竪穴住居の方が浮島式土器竪穴住居より出土数が多く、狩猟・動物加工関連石器と逆の傾向を読み取ることが出来ました。
興味深い発見です。
浮島式土器竪穴住居と諸磯式土器竪穴住居では生業の重点が異なっていた可能性が浮かび上がりました。
土器、石器の出土量、メイン生業である狩猟関連石器の出土量、祭祀関連土製品の出土などから、浮島式土器竪穴住居が優位であり諸磯式土器竪穴住居が劣位である関係性を観察できます。
その優位-劣位関係が同時代に存在したものであるのか、時間の前後関係であるのか興味が湧きます。
剥片の検討は次の記事で行います。
……………………………………………………………………
参考
大膳野南貝塚 前期後葉集落 石器出土数
大膳野南貝塚前期後葉集落の石器出土数分布を土器出土数分布と比較しながら考察するために、最初に土器出土数をおさらいします。
次の分布図は土器・石器出土量(中テン箱数)を示したものです。
大膳野南貝塚 前期後葉 土器・石器出土量(中テン箱数)
土器と石器を合わせたものですが、土器出土量に近似するデータとして利用できると考えます。
J56が特段に多いことが特徴となっています。
土器形式は浮島式土器と諸磯式土器が出土し、どちらかの形式が凌駕する竪穴住居が多いので、その凌駕する土器形式(主体形式)を次の分布図にプロットしました。
この分布図は当初は発掘調査報告書の記述を細かく分析して、文章の表現に忠実に従って作成したのですが(2017.04.02記事「大膳野南貝塚 浮島式土器と諸磯式土器」参照)、その後発掘調査報告書のまとめに形式優位性の記述がありましたので、そのまとめ記述に従い改訂したものです。
大膳野南貝塚 前期後葉 竪穴住居祉 主体土器形式分布
空間的に浮島式土器と諸磯式土器が棲み分けているように観察できます。
土器・石器出土量が多い竪穴住居(J56、J72)は浮島式土器が主体の竪穴住居になります。
なお、参考までに土製品出土竪穴住居を示すと次のようになり、J56、J72竪穴住居が該当します。
大膳野南貝塚 前期後葉 土製品出土竪穴住居
上記の土器関連分布図と対照しながら石器出土分布を考察することにします。
2 石器出土分布
2-1 石器製品合計出土数
次の図は石器製品合計出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 石器製品合計出土数
石器製品合計出土数分布は土器出土量分布と似た分布を示します。
竪穴住居主人が死亡してその竪穴住居が廃絶し、故人の送り祭祀をするときに供えられた土器の量と石器の量はほぼ相関するというイメージを持つことができました。
土器の量が増えれば、石器の量も増えるということになります。
2-2 狩猟関連石器出土数
次の図は尖頭器・石鏃合計出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 尖頭器・石鏃合計出土数
この分布図もJ56、J72が多く土器出土分布と似ています。
2-3 動物加工関連石器出土数
次の図はスクレイパー・石錐・石匙・クサビ形土器合計出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 スクレイパー・石錐・石匙・クサビ形土器合計出土数
この分布図も土器出土量分布とにているように観察できます。
2-4 漁撈関連石器出土数
次の図は軽石製品出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 軽石製品出土数
J58,J22の出土量が多く、その竪穴住居は諸磯式土器が主体の竪穴住居です。
浮島式土器主体の竪穴住居からも軽石製品は出土しています。
2-5 植物採集関連石器出土数
次の図は礫器・磨製石斧・打製石斧合計出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 礫器・磨製石斧・打製石斧合計出土数
石斧の出土数は少ないのですが、浮島式土器竪穴住居から出土していないことが特徴です。
2-6 植物調理加工関連石器出土数
次の図は磨石・敲石・凹石・石皿・スタンプ状石器合計出土数の分布図です。
大膳野南貝塚 前期後葉 磨石・敲石・凹石・石皿・スタンプ状石器合計出土数
これらの石器の出土数の合計は浮島式土器竪穴住居より諸磯式土器竪穴住居の方が倍近く多くなります。
狩猟や動物加工関連石器とは明らかに異なる分布傾向を示します。
3 考察
浮島式土器竪穴住居であるJ56からの石器出土数が特段の多く、次いでJ72が多いことが判りました。
石器出土数では浮島式土器竪穴住居が諸磯式土器竪穴住居を大きく凌駕します。
石器の中で狩猟・動物加工関連石器の占める割合が多いので、浮島式土器竪穴住居が狩猟と関連が深いことがイメージできます。
一方、漁撈・植物採集・植物調理加工関連石器を見ると、諸磯式土器竪穴住居の方が浮島式土器竪穴住居より出土数が多く、狩猟・動物加工関連石器と逆の傾向を読み取ることが出来ました。
興味深い発見です。
浮島式土器竪穴住居と諸磯式土器竪穴住居では生業の重点が異なっていた可能性が浮かび上がりました。
土器、石器の出土量、メイン生業である狩猟関連石器の出土量、祭祀関連土製品の出土などから、浮島式土器竪穴住居が優位であり諸磯式土器竪穴住居が劣位である関係性を観察できます。
その優位-劣位関係が同時代に存在したものであるのか、時間の前後関係であるのか興味が湧きます。
剥片の検討は次の記事で行います。
……………………………………………………………………
参考
大膳野南貝塚 前期後葉集落 石器出土数
登録:
投稿 (Atom)


















