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2021年11月14日日曜日

顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)の3Dモデル観察

 箕輪町郷土博物館常設展に展示されている顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)を3DモデルとGigaMesh Software Framework展開図で観察し、その文様の意味について想像しました。

1 顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡) 観察記録3Dモデル

顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文時代中期中葉

長野県宝

撮影場所:箕輪町郷土博物館常設展

撮影月日:2021.11.10


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 184 images


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開図


GigaMesh Software Frameworkによる6面図


GigaMesh Software Framework作業風景

3 観察とメモ

顔面把手を正面から見た時の吊り目で吻が出ている顔面を母神と考えると、次のような祖母神-母神-子神-孫神の顔が描かれていると想像しました。


顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)文様の解釈(想像)

ア 把手顔面を正面から見た時

母神だけが具象的顔で表現されていて、母神の体が即ち土器そのものであると想像します。母神の対向位置に子神が描かれていて、子神の顔は双眼把手として抽象的に表現されています。子神は背中を土器表面に貼り付けているように表現されています。子神はその乳房、手(指4本)、胴、足が人風に描かれています。さらに子神の腹には双眼把手があり、これは子神から生まれた孫神の顔であると考えます。

なお、母神の顔の上に双眼把手があります。これは母神を今産んでいる祖母神の顔であると考えます。

つまりこの場面では祖母神が母神を産み、母神が子神を産み、子神が孫神を産んでいる様子を一挙に表現していると考えます。しかし母神の顔だけ具象的なので、母神が子神を産んでいる様子がメインテーマになっていると考えます。

イ 把手を裏から見た時

展示では視線が到達できないので把手裏面の様子が不明瞭ですが、発掘調査報告書写真で確認すると把手裏面の母神顔面に相当する場所には大きな丸い穴が存在します。この穴が母神顔の抽象表現であると想像します(注)。その上に双眼把手があり祖母神の顔と考えます。


発掘調査報告書掲載写真 

丸山遺跡発掘調査報告書から引用

子神の様子はアの子神とほとんど同じように表現されています。

つまり把手を裏から見た時も祖母神が母神を産み、母神が子神を産み、子神が孫神を産んでいる様子を一挙に表現していると考えます。しかし母神の顔は双眼把手とは異なる抽象表現となっています。この場面でも母神が子神を産んでいる様子がメインテーマになっていると考えます。

注)大きな穴は祖母神の産道を表現していて、ここから母神の顔が出てくることを想像させる趣向であると想像します。


2021年11月12日金曜日

完形で出土した縄文中期土笛の観察

 長野県上伊那郡箕輪町郷土博物館を訪問した際、開催中特別展に縄文中期土笛が展示されていました。予期しない幸運として縄文土笛実物を観察し、3Dモデル作成用撮影を行うことができました。土偶祭祀などで使われる楽器として土笛に興味をもっている最中の出来事です。この記事では土笛の3Dモデルを作成して観察しました。ところが模様をよく観察すると思わぬ展開が・・・。

1 土笛(縄文時代中期、箕輪町御射山遺跡) 観察記録3Dモデル

土笛(縄文時代中期、箕輪町御射山遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:箕輪町郷土博物館令和3年度特別展「地味だけど推しの資料展」

撮影月日:2021.11.10


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 65 images


3Dモデルの動画

2 観察メモ

2-1 土笛としての機能

この遺物が音を出すための土笛であることは専門家の間で確定しているようです。

「長野県箕輪町から出土した縄文中期後半頃のラグビー・ボール型の土製品や・・・は「土笛」とみなすことができる。」(笠原潔「楽器の考古学」日本音響学会誌62-8、2006)

丸い穴から息を吹き込み、スリットから音がでる仕組みになっています。スリットに指を当ててスリットの幅を調整することで異なる音階を出すことが可能であると考えられます。現在の音楽とは比較にならないほどの素朴なものであるにちがいありませんが、メロディーやリズムを備えた楽曲を奏でていたに違いありません。土偶祭祀などでの音楽演奏に使われたと想像します。

2-2 模様

3Dモデルをくるくる廻しながら子細に観察すると動物を表現しているように見えてきます。

上からみるとスリットの先にある三角形が顔面で右目も表現されています。(左目もあるように見えますが、保護コーティングの下になっています。)また吻(鼻先)もあるように見えますがこれも保護コーティングの下になっています。

横から見ると展示正面とその裏面でともに口と体模様の表現がありますが、その様子が異なります。体の左右で別の動物、あるいは同じ動物の雄雌などの違いを表現しているように見えます。

土笛の音、あるいはそれを奏でる場所、あるいはそれを使う儀式内容などとこの動物が関わっていると考えますが、その詳細は今は判りません。


動物を思わせる模様

あるいはこの土笛は狩猟に使う動物を呼び寄せる笛かもしれません。鹿笛、鳥笛などであり、実用道具の可能性もあり得ます。

一度この土笛の音を聞けば、祭祀用楽器なのか、狩猟用笛なのか見当がつくかもしれません。

3 参考 発掘調査報告書の記述

次の情報は「御射山遺跡 -御射山遺跡第Ⅰ調査報告書-」(昭和54年、箕輪町教育委員会)の主な記述です。

「土笛(第25図5)

第3号住居址覆土中から出土したものである。出土時には長軸に添って二つに割れていた。長形71㎜、胴部最大径39㎜で、胴部中央に径4㎜の穴が一つある。中空で器厚は6~7㎜である。穴の周囲は直線の沈線で不定形の文様が施されている。穴の裏側には二本の沈線で円が描かれているが何を表現しているのかは不明である。土笛の出土例は全国的にみても数はそう多くないと考える。この土笛について石守氏(注)によると2種7形態に分類し、箕輪町福与大原出土のものを「箕輪タイプ」としている。本出土例もほぼこれと同じタイプであり、ラグビーボール状のものである。今回の出土により同じタイプのものがあまり離れていないところから二つ出土したことは意味あることであり、今後使用目的などについて研究したい。」(注1、長野県考古学会誌1980・6、原始古代楽器の考古学的一研究より)


添付図 (残念ですがこの図にはスリットが表現されていません)


図版

4 参考 土笛の読み

展示では土笛(ドテキ)とルビがふってあります。考古学用語では「ドテキ」と読むようです。「汽笛(キテキ)一声新橋を・・・」の歌と同じ読みです。しかしドテキと発音しても即座にそれが土笛と理解できる人は少ないように感じます。自分は当面「ツチブエ」と発音してコミュニケーションすることにします。


2021年11月11日木曜日

箕輪町郷土博物館観覧

 箕輪町郷土博物館の観覧が実現しました。Twitterでどなたかが紹介していた記事が気になっていた縄文土器展示館です。期待していた以上の知的収穫がありました。特に縄文中期土笛の展示に巡り会えたのはラッキーでした。

1 箕輪町郷土博物館常設展

長野県上伊那郡箕輪町郷土博物館を2021年11月10日訪問観覧しました。特別展「地味だけど推しの資料展」が開催中とのことで入場料は無料でした。

総合博物館であり民俗展示室、自然展示室、考古・歴史展示室があります。考古歴史展示室は縄文、弥生、古墳の遺物が特に充実しているようでした。展示物はそれぞれ興味深いものばかりですが、自分の興味が縄文にあることから、今回は縄文土器・土製品のなかのさらに興味深いモノだけを集中的に観覧し、3Dモデル作成用撮影をしました。

考古・歴史展示室入り口に展示されている顔面把手付土器(縄文時代中期中葉 丸山遺跡)は現在3Dモデルを途中まで作成している顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)と類似の土器であり、興味が深まります。


長野県宝 顔面把手付土器(縄文時代中期中葉 丸山遺跡)

展示土器はどれもこれも興味深いものばかりですが、特に次の3点には視線が釘付けになります。


長野県宝 抽象絵画文有孔鍔付土器(縄文時代中期 上の林遺跡)


長野県宝 唐草文深鉢形土器(縄文時代中期後葉 上の林遺跡)


双口土器(縄文時代前期 荒城遺跡)

箕輪町郷土博物館はこれから2度、3度と訪問して展示土器の学習を深めたい展示施設です。


展示の様子


展示の様子

2 特別展「地味だけど推しの資料展」

開催中の特別展では縄文時代遺物として草創期尖頭器、荒城遺跡出土尖頭器、土偶型土鈴、土笛などが展示されています。このうち土笛は自分は現物を初めて見ました。穴とスリットがあり、穴から息を吹き込み、スリットに指を当てて音階を調整する楽器であることが一目で判ります。土偶祭祀の中で4~5音階の出る土笛による音楽が使われた可能性を指摘した研究論文を学習したことがありますが、まさにそのような土笛を実見できたことは感動です。


土笛(縄文時代中期 御射山遺跡)

長さ7.1㎝、最大径3.9㎝でラグビーボール形をしています。