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2024年9月25日水曜日

土偶(愛称「つきミン」)(長野県伊那市月見松遺跡)観察記録3Dモデル

 3D model of the observation record of the clay figurine (nicknamed "Tsukimin") (Tsukimimatsu site, Ina City, Nagano Prefecture)


I created a 3D model of the observation record of the clay figurine (nicknamed "Tsukimin") (Tsukimimatsu site, Ina City, Nagano Prefecture) on display at the Ina City Creative Center. It has a cute face, but the snout sticks out, making it look like an animal. There is a large hole in the back of the head.


伊那市創造館に展示されている土偶(愛称「つきミン」)(長野県伊那市月見松遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。愛らしい顔つきですが、吻が出ていて動物のように見えてしまいます。後頭部に大きな穴があります。

1 土偶(愛称「つきミン」)(長野県伊那市月見松遺跡)観察記録3Dモデル

土偶(愛称「つきミン」)(長野県伊那市月見松遺跡)観察記録3Dモデル

縄文中期初頭

撮影場所:伊那市創造館

撮影月日:2024.07.15


展示の様子

ガラス面越し撮影

3DF Zephyr v7.531 processing 83 images


3Dモデル画像


3Dモデル動画

2 メモ

この土偶は愛称「つきミン」として親しまれています。


つきミンのポスター


展示説明

愛らしい顔つきですが、吻が出ていて動物のように見えてしまいます。後頭部に大きな穴があり、何かを差し込んで使っていたのかもしれません。

この土偶が半獣半人像である可能性があるのかないのか疑問が浮かびます。もっと詳しく、背後なども観察したくなります。


2024年9月22日日曜日

土偶上半身(長野県伊那市常輪寺遺跡)観察記録3Dモデル

 Observation record 3D model of clay figurine upper body (Jorin-ji site, Ina City, Nagano Prefecture)


The upper body of the clay figurine (Jorin-ji site, Ina City, Nagano Prefecture) was observed at the Ina City Creative Center and a 3D model was created. Numerous bean impressions and bean remains can be observed on this clay figurine. It is thought that this clay figurine was made to pray for a good bean harvest.

This clay figurine is valuable when considering the significance of mid-period clay figurines.


伊那市創造館で土偶上半身(長野県伊那市常輪寺遺跡)を観察し、3Dモデルを作成しました。この土偶はマメ圧痕とマメ遺体が多数観察できます。マメ栽培の豊作を祈願してこの土偶を製作したと考えられます。

この土偶は中期土偶の意義を考える上で、物質的証明要素を含んでいる点で、とても貴重な土偶です。

1 土偶上半身(長野県伊那市常輪寺遺跡)観察記録3Dモデル

土偶上半身(長野県伊那市常輪寺遺跡)観察記録3Dモデル

縄文時代中期

マメ圧痕とマメ遺体が多数観察できる

撮影場所:伊那市創造館

撮影月日:2024.07.15


展示の様子

ガラス面越し撮影

3DF Zephyr v7.531 processing 73 images


3Dモデル画像


3Dモデル動画

2 マメ圧痕とマメ遺体

この土偶はマメ圧痕とマメ遺体が多数観察できる特別なものです。


マメ圧痕


主なマメ圧痕とマメ遺体


主なマメ遺体

土偶の内外に多数のマメを埋め込んでいることが直接観察できます。圧痕は主なものだけ図示しましたが、小さいものもさらに多数あります。

圧痕だけでなく、マメ遺体も胴部断面で多数観察できることに驚きます。

これだけ多数のマメを土偶に埋め込んだ意味は、マメの豊作を祈願する対象としてこの土偶を製作したと考えることが一番自然です。マメは栽培していたからこそ、その豊作を祈願したのです。

マメの栽培-マメの豊作祈願-豊作祈願ツールとしての土偶という項目がしっかりと繋がったと考えます。

土偶は女性の祈願道具であることから、マメ栽培は女性が担っていたと考えます。

なお、中山誠二著「マメと縄文人」(2020、同成社)には縄文時代のマメ科種子の出土状況という詳しい表がありますが、この表には常輪寺遺跡の記述はありません。

この土偶は、「土偶の出現年代の古さからみても、人間生活にとってより基本的な祈りに関係したシンボル、とりわけ生命と生活を維持していくうえで欠かせない生産や食に関連した祈りの対象と考えるのが、やはりもっとも妥当であろう。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)という思考の正確さを証明するような土偶です。

この土偶は中期土偶の意義を考える上で物質的証明要素を含んでいるとても貴重な土偶であると考えます。

【追記 2024.09.23】
全国遺跡報告総覧から発掘調査報告書(「東方A・村岡北・村岡南・常輪寺下・北条遺跡」(1975、伊那市教育委員会)をダウンロードして確認したところ、この土偶は加曽利EⅠ式土器が出土する第18号竪穴住居内の穴の側面から倒立して出土したことがわかりました。土偶は出土写真が掲載されていますが、観察や記述は一切ありません。

2024年9月21日土曜日

土偶頭部(長野県伊那市今泉遺跡)観察記録3Dモデル

 Observation record 3D model of clay figurine head (Inezumi site, Ina City, Nagano Prefecture)


I observed the clay figurine head (Inezumi site, Ina City, Nagano Prefecture) at the Ina City Creative Center and created a 3D model. There are two facial contour lines, and it is made like a tray. It feels like a mask. There are swirls on the neck and top of the head.


伊那市創造館で土偶頭部(長野県伊那市今泉遺跡)を観察し、3Dモデルを作成しました。顔輪郭線が2本となっていて、お盆のようにつくられています。仮面のように感じます。首と頭頂部に渦巻きがあります。

1 土偶頭部(長野県伊那市今泉遺跡)観察記録3Dモデル

土偶頭部(長野県伊那市今泉遺跡)観察記録3Dモデル

縄文時代中期

撮影場所:伊那市創造館

撮影月日:2024.07.15


展示の様子

ガラス面越し撮影

3DF Zephyr v7.531 processing 95 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 メモ

・顔輪郭線が2本となっていて、お盆のようにつくられていて、仮面のように感じます。

・首と頭頂部に渦巻きがあります。

・人中(鼻と口の間の溝)が長く深く、間延びした印象を受ける顔になっています。

・鼻下から左右に伸びるヒゲのような2本の溝はイレズミを表現していると考えます。


横から


上から


2024年8月17日土曜日

長野県原村阿久遺跡の廃棄帯

 谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」学習 16


The abandoned zone at the Akyu site in Haramura, Nagano Prefecture


Study 16 “DOGU & SEKIBOU: Rituals and the Domestication of Society in Prehistoric Jomon” by Yasuhiro Taniguchi


I didn't understand the meaning of the abandoned zone at the Akyu site in Haramura, Nagano Prefecture, introduced in “DOGU & SEKIBOU”by Yasuhiro Taniguchi, so I looked it up in the excavation report. A large amount of pottery was ritually discarded (destroyed) in the circular stone cluster area that borders the burial zone (the afterlife) and the settlement (this world).


谷口康浩著「土偶と石棒」で紹介されている長野県原村阿久遺跡の廃棄帯の意味が判らなかったので、発掘調査報告書で調べました。埋葬ゾーン(あの世)と集落(この世)を境する環状集石群エリアで多量の土器が儀礼的に破棄(破壊)されました。

1 長野県原村阿久遺跡


長野県原村阿久遺跡

谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」から引用

この説明図の廃棄帯の意味が判らなかったので、全国遺跡報告総覧から発掘調査報告書をダウンロードして阿久遺跡について即席の学習をしました。

ダウンロードした発掘調査報告書

長野県中央道埋蔵文化財包蔵地発掘調査報告書 -原村その5- 昭和51・52・53年度 本文編

同 図版編

2 阿久遺跡の概要と廃棄帯

2-1 阿久遺跡の位置


阿久遺跡の位置

2-2 阿久遺跡の時期


阿久遺跡の時期 発掘調査報告書から引用

関東における前期諸磯式期頃が阿久遺跡の盛期になります。以前学習した千葉市大膳野南貝塚前期集落と時期、集落や土壙の空間配置もよく似ています。

2-3 阿久遺跡の空間構成

阿久遺跡盛期の阿久Ⅳ期では、中心遺構の立石・列石を核として、土壙群と方形柱列からなる内帯Ⅰ、集石群からなる内帯Ⅱがドーナツ状にとりまきます。住居址群は内帯Ⅱの東から南に外帯として占地します。Ⅳ期の占地範囲は円形状に径160m余に及びます。


中央立石・列石復元図 発掘調査報告書から引用


土壙分布図 発掘調査報告書から引用

発掘調査報告書では土壙の一定量は墓坑であると推定しています。人骨の出土はないようです。


集石群分布図 発掘調査報告書から引用

発掘調査報告書では集石群で埋葬がおこなわれた形跡はなく、埋葬に関連した儀礼の場であった可能性が述べられています。具体的には洗骨の埋納時に単位集団ごとに定められた区域に集石を構築していたと推定しています。


出土土器分布図(Ⅲ~Ⅴ期) 発掘調査報告書から引用

多量の土器と石器が阿久遺跡から出土しています。発掘調査報告書では、土器が棄てられていない中央広場と土器が棄てられている集石群ゾーンなどの空間区分に着目して、土器廃棄という点で強固な規制が持続していたことに注目しています。


集落分布図 発掘調査報告書から引用

集石群・廃棄帯の外側に集落が分布します。

3 メモ

発掘調査報告書における解釈をまとめると、この遺跡を次のように理解できます。

・この遺跡は、近隣地域の親族を含めた広い範囲の集団の埋葬祭祀場所であった。

・中央広場にモニュメント(立石・列石)と祭祀建物(方形柱列)があった。中央広場はモニュメントと祭祀建物以外の利用はなかった。

・中央広場を囲んで埋葬場所(洗骨の埋納場所としての土壙)が多数存在した。

・埋葬場所(土壙)を囲んで、埋葬儀礼が行われる集石遺構が多数形成された。集石遺構では火を使った儀礼活動も行われた。

・集石群(環状集石群)域では大量の遺物が出土した。しかし、すべて破片で完形品はみられない。これらの遺物は宗教的儀礼にともない廃棄されたものと解釈できる。

・集石群(環状集石群)域は墓域(非居住地)と集落(居住地)を区画し、後世の「玉垣」や「賽の河原」的性格を持つ。

4 感想

4-1 環状集石群について

環状集石群が墓域と居住域を分ける「賽の河原」的性格を持つという発掘調査報告書記載から、環状集石群は現代「賽の河原の石積み」(ケルン)の始原形態であるかもしれないと空想しました。

逆にそのように考えると、環状集石群の意義がよく理解できます。

あの世(墓域)とこの世(集落)の中間地帯(環状集石群のゾーン)で石積みして故人を慰める活動が縄文前期にあったと想像します。

4-2 土器廃棄帯について

「賽の河原」という民俗用語に触発されて、「茶碗割り」という民俗用語を思い出しました。半世紀くらい前まで、(今でも?)、出棺の際に故人が使っていたお茶碗を玄関の床に叩きつけて割ります。故人とのお別れの儀式です。その茶碗割りの始原形態が縄文前期の廃棄帯活動だったのかもしれません。故人が使っていた土器をあの世とこの世の中間地帯で破壊して、あの世での故人の生活とこの世に生きる人々との区切りを明確にしたのだと思います。

[故人使用土器の儀礼的破壊]

阿久遺跡発掘調査報告書で思考された土器廃棄帯=故人使用土器の儀礼的破壊ゾーンという解釈は、各地に見られるいわゆる土器塚に当てはまると直観します。

有吉北貝塚北斜面貝層に顕著にみられる加曽利EⅡ式土器廃棄ゾーンも、印西市西根遺跡に広がる加曽利B式土器廃棄ゾーンもその土器破片を復元すると完形になってしまうものが沢山あり、不思議でした。また儀礼的空間であると直観できるのに、祭器土器はありません。これらの土器廃棄ゾーンは近くの場所(別の場所)で行われた故人の埋葬に関連して、故人が使用していた実用土器を儀礼活動として廃棄(破壊)した場所であると解釈すると、そのゾーンの諸特徴を統一した論理で整合的に説明できるようになります。