縄文後期イナウ似木製品の観察と解釈例 1
現在、六通貝塚をはじめ大膳野南貝塚近隣遺跡検討を進めていますが、都合により上記テーマのシリーズ記事を割り込ませます。上記テーマは2017年9月~10月に連載記事で一度検討しましたが、今回そのとりまとめを行う中でより合理的解釈ができましたので再度記事化します。
1 西根遺跡出土木製品(杭状加工品)の実見
2017年6月28日に大多喜町に所在する千葉県教育委員会森宮分室にて西根遺跡出土木製品(杭状加工品)を実見することができました。液体に入れて特別に保存している木製品であり、閲覧申し込み時点では実見が実現できるかどうか確約がとれなかったのですが、当日実見することができました。
西根遺跡出土木製品(杭状加工品)
担当官の方に上面と下面を裏返して見せていもらいました。自分で手に取ることは不可であり、かつビニール袋と液体がなす反射光で手に取れる遺物観察とは大いに違う制限のある観察となりました。しかし、驚きの発見を3点にもわたってすることができました。発掘調査報告書記述には無い明瞭な細工2種と付属物を確認できたのです。
2 発掘調査報告書における木製品(杭状加工品)の記述
木製品(杭状加工品)は縄文時代河川敷から多量の加曽利B式土器とともに出土したもので、発掘調査報告書では次のように記載されています。
木製品(杭状加工品)の計測
発掘調査報告書の記述「2の杭は丸木を利用しており、下端は石斧等の刃の痕跡が明瞭に残る。上面は細かな調整痕がみられる。」
2杭 西根遺跡発掘調査報告書から引用
発掘調査報告書では別に出土した赤漆塗り飾弓については特別な調査検討が行われていますが、「杭状加工品」はこの上に引用した記述が全てになります。表皮がはがされた丸木の上下を石斧で成形したところまでの記述が全てです。スケッチもその記述に沿ったものになっています。
3 木製品実見での3つの発見
3-1 刻印の発見
2ヵ所に鋭利な石器で木をえぐった刻印の存在が確認できます。
刻印の発見
3-2 削り跡の発見
多数の斜めに丸木を削った跡の直線が多数存在しています。
削り跡の発見
3-3 小型棒状木製品の発見
袋に数点の小型棒状木製品が同封されています。小型棒状木製品のいくつかには黒く焦げた部分があります。小型棒状木製品はその形状から自然の小枝でないことが判ります。
同封小型棒状木製品
4 木製品が杭でないことを確信し写真分析を開始する
発掘調査報告書にはこの木製品の写真も掲載されていますので検討したところ刻印や削り跡が不鮮明に確認できます。木製品に存在する刻印や削り跡が精細写真として世の中に存在するのですから、写真を入手できれば詳しい分析が可能となります。
この木製品が杭ではなくイナウのような祭具ではないだろうかという疑いを強く持ちますから写真分析による詳細検討実施を決断しました。
早速木製品写真と発掘状況写真の閲覧申請を千葉県教育委員会に行い、写真を入手することができました。詳しい写真分析作業をスタートさせることができました。
つづく
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