2011年10月19日水曜日

花見川河川争奪の成因検討2 oryzasan氏の説と感想3

花見川河川争奪を知る16 花見川河川争奪の成因検討2 oryzasan氏の説と感想3

oryzasan氏論文全4章の第2章を紹介します。

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oryzasan氏論文「花見川の地学」 第2章引用

Ⅱ.現在の川筋が決まったのはいつか
ですから、現在の台地と低地の分布が決まるのは湿地の時代からV字谷の時代にかけてのことであり、V字谷の時代以降、川筋の変更は起きていないと考えて良いでしょう。おそらくは乾陸化の完成する東京軽石層降灰期の5万年前には、ほぼ現在の川筋に固定されていたのではないでしょうか。
古東京湾の海退直後にはまだ川はありません。海退直後の地表面の微妙な高低の分布に従って流れ出した小さな流れが、現在の川筋、つまり低地の元になったと考えられます。つまり現在の川筋が決まったのは、湿地の時代のことです。

図3

常総粘土層最下部には「三色アイス軽石層(SIP)」と呼ばれる、約13万年前の箱根山の噴出物が挟まれています。右の図は花見川流域におけるその分布図ですが、SIPが層状で挟まれているのが観察される地域と、軽石の粒として砂の間に散っているか、全く見られない地域があり、後者は前者に比べて、離水が遅れた地域と考えられます。なぜなら後者は河原など水の動きの激しい環境と考えられるからです。層状のSIPの分布域は現在の分水界地域よりも東京湾よりの、やや低い地域にあります。

図4

また、常総粘土層の最上部は、やや緑がかった、白~灰色の石けん状の粘土層よりなることが多いのですが、この粘土層は、水成の火山灰層で、水との化学反応の結果粘土化したものと言われています。しかし花見川下流域の千葉市天戸~長作付近にはこの粘土層は見られず、かわりに赤土状のローム層が分布します。この地層は「下末吉ローム層」と呼ばれる、常総粘土層と同時期に降下した陸成火山灰層です。このことは、古東京湾の海退後、まだ湿地環境が残っていた他の地域に対して、天戸~長作周辺地域の乾陸化が先行したことを示しています。離水は最も高い場所から進むはずなので、天戸~長作地域は現在の分水界地域である、横戸~柏井周辺よりも高かった(下の図)ことになります。

図5

図6

この地域に最初に流れ出した川はおそらく、この地域から北東の印旛沼方向と南西の東京湾方向に向かって流れ出しますが、間もなく分水界地域に隆起帯の軸が移って、現在の分水界が形成されたのでしょう。
次の図は八千代市周辺の台地と低地の分布に、印旛沼水系と東京湾水系との分水界を入れたものですが、最も高い、海抜高度が30mを越える地域が、分水界よりも印旛沼水系側にあることに注目してください。このことは隆起軸の印旛沼側への移動が、分水界確定後も続いていることを示しています。しかし現在の川筋はこの頃、既にある程度できあがっており、周りの隆起にもかかわらず、谷底の下刻作用を続けて、現在(正確には海水面の最降下期、つまり最終氷期最寒冷期)に至ったのでしょう。隆起軸の長作-天戸地域から30m地域への移動は、陸成下末吉ローム層に挟まれる御岳起源の軽石層、Pm-Iの年代の約7万年前から、この地域全域の陸化の完了する5万年前(東京軽石層の降灰年代です)までの間に行われたと考えられます。

図7

そうした中で花見川だけが、その流域を北に「食い込ませて」おり、やや異質な印象を受けます。それは東西の柏井の谷津の合流によります。柏井の谷津はどちらも、他の谷津と同様、北東方向に向かって流れ出しますが、30m地域に遮られるようにして流路を直角に曲げ、花見川に合流して、当初とは逆方向の東京湾へと向かいます。クーラーさんはその理由を、かつてあった「古柏井川」の上流域を花見川が奪ったためとしていますが、僕は柏井の谷津は5万年前には既に花見川の流域であったと考えています。理由は次の通りです。
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2 件のコメント:

  1. コメントへの返信ありがとうございました。

    花見川にまつわる昔の人々の生活 生業などに 興味があります。
     私の隣のお宅の敷地(庭)には 昔からの金比羅さんの祠があり いまでもお供物をそなえ大事にされています。
    昔はたいそうにぎわったと 聞いております。
    花見川の普請に携わった人たちでしょうか? 
    犢橋の町名の由来 子牛を人柱の代わりに神様にささげたとか。とても難工事で あったことは いまでも
    語り伝えられています、

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  2. 犢橋の地名由来に興味があります。ねむの木さんからもう少し詳しく教えていただけるとうれしいです。特に子牛を人柱の代わりにしたところなど。

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