2017年12月24日日曜日

人骨出土竪穴住居分布で気が付いた貝塚集落特性

大膳野南貝塚 廃屋墓の機能不明柱穴の検討 15

この記事は2017.12.21記事「大膳野南貝塚 廃屋墓の機能不明柱穴の検討 まとめ」、2017.12.22記事「非貝塚形成集団と貝塚形成集団の入れ替わり」の続きです。

5 人骨出土竪穴住居の分布
人骨出土竪穴住居の分布はつぎの通りであり、貝層分布域に限定されているように観察できます。

大膳野南貝塚後期集落 人骨出土竪穴住居

貝層が分布する場所では人骨が理化学的に保存され、それ以外の場所の人骨は火山灰層の影響で消滅してしまったと考えることができます。

しかし、人骨出土竪穴住居の分布をよくみると、貝層(北貝層、南貝層、西貝層)に直接かかわらないものもが4軒あります。その4軒は覆土層に貝層が含まれるものです。

そこで、覆土層に貝層が含まれる竪穴住居分布を調べてみました。

大膳野南貝塚後期集落 貝層のある竪穴住居

竪穴住居が廃絶して埋める時、貝で埋めたり、貝を含んだ土で埋めた竪穴住居の分布が上記の図であり、その分布と人骨出土竪穴住居の分布が略一致することになります。

参考に漆喰貼床・漆喰炉のある竪穴住居分布を次に示します。

大膳野南貝塚後期集落 漆喰貼床・漆喰炉のある竪穴住居

上記3つのデータ、つまり人骨出土竪穴住居、貝層のある竪穴住居、漆喰貼床・漆喰炉のある竪穴住居の間には明瞭な相関を認めることができます。それらの分布は円環状貝塚(北貝層、南貝層、西貝層)を下敷きにして形成されていると捉えることができます。

さて、ここで大いなる疑問が生じます。漆喰や貝が出土しない竪穴住居はなぜそれらが出土しないのかという問題です。

漆喰や貝が出土しない竪穴住居の方が出土する竪穴住居より多いのです。その分布は台地中央や斜面に広がります。

大膳野南貝塚後期集落 漆喰・貝層出土別竪穴住居軒数

大膳野南貝塚後期集落 漆喰貼床、漆喰炉及び貝層のない竪穴住居

漆喰や貝が出土しない竪穴住居とは、貝塚集落内なのに高機能の漆喰炉や漆喰貼床を利用していないのです。また廃絶したとき貝を覆土に撒いていないのです。
極めて特異な事象の存在に、人骨非出土という状況を通して気が付きました。

この記事でこの特異事象を解明することはできませんが、とりあえず次のような作業仮説を設定しておき、これから竪穴住居の詳細検討をするなかで確かめることにします。

人骨出土が貝層(北貝層、南貝層、西貝層)付近に集中する理由(作業仮説)
・円環状貝塚形成を指向する集団が大膳野南貝塚後期集落の主導集団で漁業を生業としていた。
・その主導集団の竪穴住居は漆喰貼床・漆喰炉を利用し、廃絶すると貝や貝を含んだ土で埋められた。従って廃絶住居が墓として利用されると、その人骨は残った。
・一方、主導集団に支配される劣位階層の人々がいて、台地中央や斜面の竪穴住居に住んでいた。
・劣位階層の人々は漆喰の利用や廃絶住居を貝や貝を含んだ土で埋めることを許されなかった。従って廃絶住居が墓として利用されると、その人骨は火山灰土の影響で消滅した。
・なお貝塚集落形成前の廃屋墓人骨がその後の貝塚発展のなかで偶然貝層の下に埋もれ残ったという唯一例外があり、それがJ88竪穴住居である。

0 件のコメント:

コメントを投稿