2018年6月13日水曜日

貝塚集落がたち行かなくなった時の身の振り方

2018.06.10記事「大膳野南貝塚後期集落 消長シナリオ」で大膳野南貝塚後期集落の集落衰退期の様子(シナリオ)を次のように書きました。
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●集落衰退期
・海岸線が後退して村田川河口湾内干潟の減少が著しくなった。
・集落が確保している漁場からの漁獲物は急減し、急増人口を養えなくなった。
・漁労系住人は新しい漁場(村田川河口沖の干潟)方面の新天地(村田川河口砂洲)などへ移住した。
・集落立地の重要条件である占用漁場が海岸線後退により事実上失われたことにより集落が解体した。
・堅果類採集系住人は新天地である印旛沼方面へ移住した。
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シナリオ(半ば想像)とは言え、この記述に大きな間違いを見つけましたので訂正します。縄文人の本質を見誤っていました。
以下は想像的検討(!)です。

1 大膳野南貝塚が立ちいかなくなった時の対応策
海岸線が後退して、大膳野南貝塚からみると自分の漁場そのものが物理的に消失してしまったのですから、急増人口を養えるはずものなく、また絶海の孤島ではありませんから移住が対応策として執られたと考えます。
その際、漆喰貝層有竪穴住居住人(狩猟、漁労、採集)と漆喰貝層無竪穴住居住人(主に採集)がバラバラに移住したとしたのは間違いであると考えます。
漆喰貝層有竪穴住居住人と漆喰貝層無竪穴住居住人は上下関係があるのですから、その関係を保持したまま移住したと考えます。

2 移住先
2-1 移住先 海岸部
移住先として、「新しい漁場(村田川河口沖の干潟)方面の新天地(村田川河口砂洲)」を考えましたが、これは2つの理由から間違いであると気が付きました。
2-1-1 論理矛盾
海岸部移住仮説は自分自身の論理矛盾としての間違いでした。
海岸線が後退して漁場が消失したのですから、その場所に移住することはあり得ません。
残った漁場は周辺の有力な貝塚集落(具体的には六通貝塚)が独占しました。その周辺に移住して利用できるような漁場はありません。

●参考
縄文時代に貝塚集落が立地するためには、近くに地形で分節された小入り江の存在が必須であると考えました。

仮説 地形で分節された小入り江の存在が多数貝塚集落が立地できる必須条件

2-1-2 漁業執着に対する誤解
海岸部移住が仮にあったとすれば、それは台地から低地に降りて、生業をほとんど漁業専業にすることを意味します。そのような選択肢は縄文人には無かったと考えます。
次の図は大膳野南貝塚が立地している地形上の位置です。

大膳野南貝塚の位置

大膳野南貝塚の地形断面図上の位置
大膳野南貝塚住人は海から4㎞以上離れた標高50mの台地面に集落を建設しています。この立地は漁業活動に有利だから選んだ場所ではなく、狩猟に便利であることが第1であり、その次に海にも出られる谷津のそばであることを理由にしています。つまり大膳野南貝塚住人が最もこだわっている生業は狩猟です。縄文人のアイデンティティは狩猟民であることです。
したがって大膳野南貝塚住民は仮に漁場が遠くなったからといって、海岸線付近の低地に移住することはあり得なかったと考えます。もしそのような移住があり得るならば、最初から遠い台地面ではなく、海岸線近くの低地に集落を建設していたはずです。

2-1 移住先 印旛沼周辺
次の図に示すとおりⅥ期(後期前葉~中葉)からⅦ期(後期中葉~晩期前半)にかけて東京湾岸の貝塚集落が減少し、印旛沼周辺で増加します。

Ⅵ期→Ⅶ期の貝塚集落増減
大膳野南貝塚が利用していた漁場が消失して、移住した先は印旛沼近くであったと想定することは次の理由から合理的です。
1 先住者が少なく開拓できる空間が広がっています。
2 前居住地と一連の台地に位置していることから、動物の移動ルート情報など既往知識を活用でき、狩猟環境に激変がありません。
3 汽水とはいえ漁場(地形で分節された小入り江)を占有できます。
4 母集落や東京湾岸貝塚集落との社会関係を維持できる空間に位置します。

なお、九十九里方面は東京湾と同じく海岸線が後退して単調な砂浜海岸となり、縄文人が漁労を営むことができる好適な漁場は急減していたと推定します。そのため九十九里方面への転進は無かったと考えます。


シナリオは次のように修正します。
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●集落衰退期
・海岸線が後退して村田川河口湾内干潟の減少が著しくなった。
・集落が確保している漁場からの漁獲物は急減し、急増人口を養えなくなった。
・集落立地の重要条件である占用漁場が海岸線後退により事実上失われたことにより集落が解体した。
・ほとんどの住人は新天地である印旛沼方面へ移住した。
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