2022年5月29日日曜日

3Dモデルによる土器観察 対向系横位連携弧線文土器 外

 Observation of pottery by 3D model  Facing system horizontal cooperation arc line pottery


I have summarized the observations of facing system horizontal cooperation arc line pottery and others from February to May 2022. This observation utilizes a 3D model and a GigaMesh Software Framework deployment.There are a lot of interesting pottery.


「2022年2月~5月の縄文土器学習記録」と銘打って今年2月以降の縄文土器学習の要点を記録としてまとめています。この記録は次のような目次を予定しています。

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1 はじめに

2 これまでに開催された企画展「あれもE…」と学習の概要

3 令和3年度企画展「あれもE…」と学習活動

3-1 展示土器の3Dモデル作成と観察

3-1-1 観覧と写真撮影

3-1-2 3Dモデル作成とGigaMesh Software Framework展開

3-1-3 3Dモデルによる土器観察

1)意匠充填系土器

2)入組系横位連携弧線文土器

3)対向系横位連携弧線文土器 外

3-2 3Dモデル分析

3-3 興味を覚えたテーマ(講演会含む)

3-4 習得した3Dモデル関連技術

3-5 感想

4 今後の学習について

4-1 令和4年度企画展開催までの学習活動

4-2 令和4年度企画展にかかる学習活動

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この記事では次の目次部分を掲載します。

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3-1-3 3Dモデルによる土器観察

3)対向系横位連携弧線文土器 外

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3)対向系横位連携弧線文土器 外

3)-1と3)-2の2点が対向系横位連携弧線文土器で、他の土器は別の文様分類です。

3)-1 加曽利EⅢ式深鉢(No.25)(千葉市中薙遺跡)


加曽利EⅢ式深鉢(No.25)(千葉市中薙遺跡)

土器の括れた部分で弧線文が上下で対向します。2つの弧線文の対向位置は全て同じ方向に微妙にずれます。

3)-2 加曽利EⅣ式深鉢(No.36)(千葉市餅ヶ崎遺跡)


加曽利EⅣ式深鉢(No.36)(千葉市餅ヶ崎遺跡)

上下の弧線文の数が異なります。2つの弧線文の対向位置は微妙にずれますが、そのずれる方向はバラバラのようです。上下弧線文の先端を微妙にずらして表現する行為は、縄文人世界観と関連しているものと想像します。

3)-3 加曽利EⅤ式深鉢(No.15)(千葉市上谷津第2遺跡)


加曽利EⅤ式深鉢(No.15)(千葉市上谷津第2遺跡)

胴部が口唇部を除き全面縄文施文される土器です。このような全面縄文施文土器は加曽利EⅢ式期や加曽利EⅣ式期に各地で出土しています。

土器に沈線や隆帯で文様を施文することがない製品であり、簡易的な用途に使われたと想像します。少なくとも「心を込めた調理」をする土器とくらべたら、ランクの低い活動用道具だと考えます。なお、土器展示正面下部だけ縄文のすり減りが激しくなっています。この土器を利用する際にどこかを「正面」として認識していて、炉との位置関係がいつも同じだったので、特定場所のすり減りが激しかったのだと想像します。

この土器は柄鏡形竪穴住居の入口で埋甕として出土しています。そばから称名寺式土器(No.16)が出土しているので、加曽利EⅣ式ではなく加曽利EⅤ式として分類されました。


上谷津第2遺跡6号住居址の土器出土状況 展示資料


称名寺Ⅰ式鉢(No.16)(千葉市上谷津第2遺跡)3Dモデル画像

この土器(No.15)の器形は加曽利EⅣ式のものですが、称名寺式土器(No.16)と共伴出土しているので、加曽利EⅤ式と判定されています。この判定の仕方は、加曽利EⅤ式土器の意味が「称名寺式期に存在し続けた加曽利EⅣ式土器の末裔」であるということを如実に示しています。

同一竪穴住居から加曽利EⅤ式土器と称名寺式土器が共伴出土する意味に興味を持ちます。夫婦の出自が加曽利EⅣ式土器を使う集団と称名寺式土器を使う集団であったということでしょうか?

3)-4 加曽利EⅣ式・EⅤ式深鉢(No.21)(千葉市すすき山遺跡)


加曽利EⅣ式・EⅤ式深鉢(No.21)(千葉市すすき山遺跡)

4つ並んだ区画文のうち左から2番目が意匠充填系土器の円文、その両側が逆三角形文のように感じることができます。この土器は意匠充填系土器の流れに位置付けることができるのかもしれません。


2つの土器の共通点
主文様と考えた区画文の中に反転S字状文が沈線で刻まれています。反転S字状文は中峠式土器や加曽利E式土器に多くみられます。次の例では反転S字状文が水平に描かれています。


参考 中峠5次2住型深鉢(松戸市中峠遺跡)のGigaMesh Software Framework展開図

次の例では垂直方向に端が渦になる反転S字状文が描かれています。


参考 加曽利EⅡ式土器(千葉市有吉北貝塚)

自分はこの反転S字状文は吉祥文であると想像しています。2つの集団・家系(夫婦により結びつく異なる2集団・家系)の絆を表現しているのでしょうか?

なお、この記事でこの土器だけがGigaMesh Software Framework展開が矩形になっていますが、GigaMesh Software Frameworkでは扇形にも矩形にもできます。


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3)-5 加曽利EⅤ式両耳壺(No.2)(千葉市愛生遺跡)


加曽利EⅤ式両耳壺(No.2)(千葉市愛生遺跡)

沈線で描かれた模様が噴水を表現する記号(水瓶であることを示す記号)であると考えました。


愛生遺跡出土両耳壺模様の解釈

なお、この土器の噴水模様上の口唇部に片口(注ぎ口用刻み)があります。

3)-6 称名寺式土器(千葉市内野第1遺跡)


称名寺式土器(千葉市内野第1遺跡)

縄文帯によるJ字文が2段に重ねられている文様パターンを示していて、称名寺式土器の最も基本となる文様パターンであると言われています。

3)-7 称名寺Ⅰ式深鉢(No.18)(千葉市上谷津第2遺跡)


称名寺Ⅰ式深鉢(No.18)(千葉市上谷津第2遺跡)

波状突起に対応して縄文施文J字文が配置されていることが確認できます。しかし、頸部より下の縄文施文文様の規則性は背面が観察できないので確認できませんでした。反転J字文が1箇所あるようです。

3)-8 称名寺Ⅰ式深鉢(千葉市加曽利南貝塚)


称名寺Ⅰ式深鉢(千葉市加曽利南貝塚)

広く深い沈線が特徴となっています。文様の様子は称名寺式として自分はこれまで見たことのないものです。称名寺式土器の文様のバリエーションが多様であることを認識させられます。

3)-9 対向系横位連携弧線文土器外の一覧


対向系横位連携弧線文土器 外

対向系横位連携弧線文土器はNo.25とNo.36だけです。


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