2022年5月22日日曜日

考古学講座「土器や土偶に描かれた「顔」」受講

 Take the archeology course "Faces drawn on pottery and clay figurines"


On May 21, 2022, I attended the archeology course "Faces drawn on pottery and clay figurines" (lecturer: Momoko Saga) at the Yamanashi Prefectural Archaeological Museum. There were only interesting topics such as the sculptural fusion of clay figurines and pottery. Make a note of my impressions.


2022年5月21日に山梨県立考古博物館令和4年度考古学講座第1回「土器や土偶に描かれた「顔」」(講師:山梨県埋蔵文化財センター佐賀桃子先生)がオンラインで開催され、受講することができました。その概要と感想をメモします。


考古学講座のチラシ

1 講座の概要

講座は判りやすい画像資料を次々に説明しながら進み、土器や土偶の顔についての理解が進みました。自分は講演内容が次の3つの部分から構成されているような印象をもちました。

ア 導入(顔認知など一般論)

イ 山梨県における「顔」表現

ウ 「顔」表現出現の背景

どれもこれも面白い話ですが、講師の佐賀桃子先生はイとウに重点をおいて話されました。

なお、事前に充実した6ページ資料をダウンロードできました。お話は資料で事前事後に確認できますので便利です。特に参考文献が20数編掲載されていて、今後の学習に特に便利です。


ダウンロード資料

2 感想


開会画面

自分が特に興味を抱いた点についてメモします。(順不同)

2-1 中部高地の中期の典型的な「顔」


笛吹市一の沢遺跡出土土偶

笛吹市一の沢遺跡出土土偶の例を示して次の特徴の説明がありました。

・眉と鼻がくっついたカモメ状またはT字状の表現(及びハート形輪郭)

・上向の鼻の穴、つり目、おちょぼ口

・頭部にヘビやイノシシを乗せるものもある。

この典型的な「顔」と縄文人復元図を対照して、カモメ状表現(ハート形輪郭)が縄文人の顔が対応してるという趣旨の説明がありました。

【感想】

中部高地の中期の典型的な「顔」はこのようなものであることはよく理解できました。

縄文人の眼窩上隆起の特徴がカモメ状表現(ハート形輪郭)に対応していることが理解できました。

同時に、この「顔」は、縄文人が縄文人成人を単純にイメージしてつくったものではなく、次のような多層のイメージをレイヤーを重ねるようにイメージした産物であると考えました。

・産道から頭を出した新生児の顔という状況(丸い穴から顔を出している)

・新生児であるから幼い様子で描かれる(目と目の間の距離が成人とくらべて長い)

・そもそも人ではなく神として描かれている(女神が子どもの女神を産む様子)→頭にヘビなどが乗る、→鼻の穴が1つの例がかなり沢山あり、それはその顔が人ではないことを表現している。

・女神だから、縄文人女性の身だしなみ表現を加えている。(目の下のイレズミ、耳輪の装着)

・女神が幸を呼ぶ歌(呪文)を歌っている。(丸い口)

なお、上向きの鼻とつり目はなぜそのように描かれるのか、今後検討することにします。(現代出産技術と異なる状況で、出産時あるいは出産直後に新生児顔にあらわれた特徴か?)

2-2 異形の「顔」

片目に傷があるものや、口蓋裂、のっぺらぼうなど異形の「顔」の例多数を画像で説明していだきました。

【感想】

目の障害や口蓋裂などの障害を土偶(女神)に負わせ、自らの出産で生まれる子供からはその災厄を避ける祈願に使われたと考えました。

2-3 土偶と土器の造形的融合

勝坂式期から土偶と土器の造形的融合が顕著になる。

胴の膨らんだ器形が多いのは、妊娠状態の土偶のイメージの象徴的表現と考えられる。

土偶の体内で調理する=食物が土偶の体内を通過=飲食物の神秘的な生命力を付加

食物という、生命維持に不可欠な要素に本質的に関係している。

2-4 中期段階に住居跡数と土偶の数がともに急増

「顔」表現が出現・増加する時期は、土器の器種の増加や人口が増加する時代

【感想】

中期の人口急増期(加曽利EⅡ式頃ピーク)に山梨では土偶が急増しましたが、千葉や東京(湾岸)など貝塚社会では土偶はほとんど使われていません。山と海で土偶が全く異なる扱われ方をしていて、その様子をもっと詳しく知りたくなります。そのためには山梨縄文中期の様子をもっと詳しく知りたくなります。

3 春季企画展

山梨県立考古博物館春季企画展「心を描く縄文人-人面・土偶装飾付土器の世界-」(2022.04.16~2022.06.12)の紹介がありました。今回講演に関連する興味深い展示物が目白押しのようです。早速駆けつけて観覧することにします。


山梨県立考古博物館春季企画展「心を描く縄文人-人面・土偶装飾付土器の世界-」チラシ


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