2023年1月26日木曜日

花見川とお雇い外人技師デレーケ

 花見川よもやま話 第6話


Hanami River and Hired Foreign Engineer Johannis de Rijke


Johannis de Rijke is one of the great men who built the foundation of river improvement and erosion control in Japan. Dereke is a foreign engineer hired in the Meiji era, and is involved in the Inbanuma Canal plan. I made a note of that situation.


日本の河川改修や砂防の基礎を築いた偉人の一人である、明治期お雇い外人技師のデレーケが印旛沼運河計画にかかわっているので、その様子をメモしました。

1 ヨハネス・デレーケ

ヨハネス・デレーケはオランダの土木技術者で、明治期に来日したいわゆるお雇い外人技師であり、日本の河川改修や砂防の基礎を築いた偉人の一人です。

デレーケは淀川河川改修工事、木曽三川分流工事、常願寺川河川改修工事などにかかわり、治山・植林、砂防の重要性を指摘したり、粗朶沈床というオランダ由来工法を導入するなど指導者として大きな業績を残しました。また大阪港、三國港など港湾の調査・計画・工事の指導でも業績を残しました。


デレーケ像

農林水産省webサイトから引用

そのデレーケが明治期の花見川の運河化と大いにかかわっているので、その状況・様子をメモします。

2 内務卿大久保利通の7大プロジェクト


内務卿大久保利通の7大プロジェクト

三浦裕二・高橋裕・伊澤岬編著「運河再興の計画 房総・水の回廊構想」(彰国社)から引用

明治11年(1878)内務卿大久保利通は国土計画の7つの計画が含まれるいわゆる大久保利通の7大プロジェクト(「一般殖産および華士族授産の儀に付伺」)を建議しますが、この中に「印旛運河の掘削」が含まれています。明治期は鉄道が未発達であり、人流・物流ともに舟運発達が期待されていて、利根川-印旛沼-花見川-東京湾の舟運開通が国家的プロジェクトとして注目をあびていました。

3 「印旛沼開鑿成功予期図」と大明会の結成


印旛沼開鑿成功予期図

織田寛之著「印旛沼経緯記」から引用

明治19年(1886)に大橋精次は「印旛沼開鑿成功予期図」を世に公表し注目をあびました。この「印旛沼開鑿成功予期図」を契機にして利根川-印旛沼-花見川-東京湾を舟運でつなぐプロジェクト実行促進民間団体の大明会が発足します。大明会には織田寛之を筆頭に渋沢栄一、金原明善、高島嘉右衛門等が集い、資金調達に動きました。

なお、印旛沼開鑿成功予期図には織田寛之の漢詩とともに二宮尊徳の言葉「ナセバ ナル・・・」も掲載されていて、この頃二宮尊徳の報徳仕法が世の中に受け入れられていたこと物語っています。二宮尊徳は天保期に老中水野忠邦により引き上げられ、印旛沼堀割普請に関する調査報告書を作成しています。

4 デレーケの視察と報告

明治22年(1889)デレーケは渋沢栄一の推薦により利根川安食から印旛沼-花見川-東京湾一帯の視察を2回にわたり行い、報告を行っています。高明なデレーケのお墨付きは資金集めのためにも、内務省土木局の理解を得るためにも必要だったと考えられます。


デレーケの報告に関する記事(印旛沼経緯記 内編)1/4


デレーケの報告に関する記事(印旛沼経緯記 内編)2/4


デレーケの報告に関する記事(印旛沼経緯記 内編)3/4


デレーケの報告に関する記事(印旛沼経緯記 内編)4/4

デレーケの報告では「此事業ハ大利益ニシテ運河開鑿共ニ必成ヲ期スヘシ」として、経費として100万円を見積もっています。この報告を受けて織田等は事業計画として「印旛沼実益概況」を作成し、国庫から80万円の支出を取付け、100万円の県債を立てて実行に移そうとします。しかし日露戦争の影響を受け、事業は挫折します。

5 メモ (2023.01.27追記)

・渋沢栄一が金銭的に応援した織田寛之らの大明会プロジェクトは明治26年(1893)にはすでに挫折していて、その挫折という結果を受けてまとめた資料集が「印旛沼経緯記」(明治26年7月、8月発行)になります。

・従って印旛沼運河プロジェクト挫折は日露戦争(1904~1905)とは関係ありません。(日露戦争の影響という記述はある土木専門書の記述にあったものを咀嚼しないで引用したものです。)

・挫折の要因は競合プロジェクトである利根運河の開通(1890)などが関わっていた可能性がありますが、今後詳しく検討することにします。

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