2023年8月29日火曜日

3D座標が判明した土器破片の型式別数と分布特徴

 Number and distribution characteristics of pottery fragments for which 3D coordinates are known


Among the fragments of pottery unearthed from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, I observed the number of pottery fragments for which 3D coordinates were known and their distribution characteristics. The number and distribution characteristics are different between Kasori EII middle stage and before.


有吉北貝塚北斜面貝層から出土した土器破片のうち、3D座標が判明した土器破片の型式別数とその分布特徴を観察しました。加曽利EⅡ式中段階以降とそれ以前で数と分布特徴が異なります。

1 3D座標が判明した土器破片の型式別数


3D座標判明土器破片の型式別数(グラフ)


3D座標判明土器破片の型式別数(表)

・このグラフは北斜面貝層の型式別(=時期別)利用強弱を表現していると考えます。早期土器はすくないので何とも言えませんが、前期土器の時代から漁労が行われ、斜面貝層が形成されていたと推察します。これまでの検討で、前期土器とその時代の貝層の存在が資料分析から抽出できそうだという印象を持っています。

・中峠式土器数が加曽利EⅡ式新段階土器数より多いことは注目に値します。中峠式期に北斜面貝層利用が活発であったことを表現しています。

・加曽利EⅡ式中段階土器と中~新段階土器の出土が爆発的に増えています。なぜ爆発的に増えたのか、その理由の検討は大きな学習テーマとなります。

2 土器破片の型式別分布特徴

2-1 型式別平面分布


早期土器・前期土器平面分布図


阿玉台式土器平面分布図


中峠式式土器平面分布図


加曽利EⅠ式土器平面分布図


加曽利EⅡ式古段階土器平面分布図


加曽利EⅡ式中段階土器平面分布図


加曽利EⅡ式中~新段階土器平面分布図


加曽利EⅡ式新段階土器平面分布図

2-2 貝層区分


貝層区分

北斜面貝層ではガリー谷頭から投棄されてガリー流路で運ばれる土器と左岸から斜面に投棄される土器が観察できるので、貝層をガリー谷頭急斜面貝層、ガリー運搬堆積層、斜面貝層に区分して検討しました。ガリー谷頭急斜面貝層とガリー運搬堆積層は連続するものですが、ここでは便宜的に第3断面を境に区分しました。

2-3 土器破片の貝層区分別割合


土器破片の貝層区分別割合(表)


土器破片の斜面貝層出土割合(グラフ)

前期土器から加曽利EⅡ式古段階土器までは斜面貝層出土の割合が大きく、加曽利EⅡ式中段階以降ではその割合が小さいことが判明しました。これは、前期土器から加曽利EⅡ式古段階土器まではガリー谷頭から投棄だけでなく、左岸から斜面に投棄される土器が一定数存在していたのに、加曽利EⅡ式中段階土器以降はほぼガリー谷頭からの投棄に限られるようになったことを表現しています。つまり土器投棄活動の意義が変化した可能性を暗示しています。

土器投棄活動が祭祀活動であったと考えると、前期土器から加曽利EⅡ式古段階土器までは自分の好みの場所で投棄している場合もあり、集落統制力(祭祀統制力)は弱かったと考えます。しかし、加曽利EⅡ式中段階土器以降は投棄場所(祭祀場所)規制が厳しくなり、集落統制力(祭祀統制力)が強化されていたのかもしれません。加曽利EⅡ式新段階土器を最後に集落が消滅に近い衰退を迎えることと関連しているのかもしれません。


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