2024年9月6日金曜日

谷口康浩著「環状集落と部族社会」(2002年)学習

 谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」学習 18


Studying "Circular Settlements and Tribal Society"  (2002) by Yasuhiro Taniguchi


Study 18 “DOGU & SEKIBOU: Rituals and the Domestication of Society in Prehistoric Jomon” by Yasuhiro Taniguchi


I studied "Circular Settlements and Tribal Society" (2002) by Yasuhiro Taniguchi. It was very interesting and I read it all the way to the end in one go. It made me think a lot about why Jomon circular settlements were based on two large groups. I understood that the two groups were in a joint guarantee alliance from the perspective of securing mutual interests.


谷口康浩著「環状集落と部族社会」(2002年)を学習しました。とても興味深く、最後まで一気に読みました。縄文環状集落がなぜ二大群を基本とするのか、大いに考えさせられました。二大群は相互権益確保観点からの連帯保証的同盟関係にあると理解しました。

谷口康浩著「環状集落と部族社会」(2002年、「縄文社会論(上)」、同成社)は谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」の引用文献に掲載されています。

1 環状集落の分節構造

「一、環状集落には対向する二大群が存在する。もっとも基本的な分節単位はこの大群である。墓域における埋葬区や住居の配置場所は大群ごとに規制され決定されている。

二、環状墓群の分節構造がしばしば勝坂式期あるいは加曽利E式期を通じて踏襲されていることなどからみると、大群への帰属は世代を超えて継承されていたと推定される。

三、二大群を対比すると相互に異質性を発揮している場合が認められる。それは墓坑数・住居数などの数量的な不均衡や、住居型式・炉形態・埋甕の相異などに顕著に表れる。

四、墓坑に副葬された玉類などの装身具の保有量を比較すると、二大群の間に明確な格差は認められず、むしろ平均的になっている。三で指摘した二大群の異質性は、ただし優劣・主従のような階層的な区分とは考えられない。

五、集落の変遷過程で二人群は足並みを揃えた変化をするとは限らず、片方の一大群のみが住居型式を刷新したり戸数を増加させるケースなど、 一大群が独自の動きや変化を見せる場合がある。二大群が必ずしも同質でないことがここにも表れている。

六、二大群の片方が単独に存在する半分構造がある。墓群や住居群が半環状を呈するのは、各大群がもつ独自性の半面を表し、他の半分の使用が留保されている状態を表す。

七、大群内部にさらに複数の分節が入子状に内在する場合がある。とくに二大群のそれぞれに二小群が内在し、全体が四群に分節化している構造が明確である。さらに多数の小群が含まれる場合も見られる。

八、分節構造は墓群や住居群に表れるばかりでなく、廃棄帯にも認められる。分節構造は埋葬区や居住区の区分であるだけでなく、環状集落の空間全体を区分する空間のシンボリズムと見なした方がよい。」「谷口康浩著「環状集落と部族社会」(2002年)」から引用

2 分節単位と出自集団

二大群の分節を出自集団の区別と仮説する解釈は妥当である。仮説は環状墓群人骨から血縁関係を確認して証明できる見通しが生まれている。

3 出自集団の機能

出自集団による環状集落の出現は、領域や資源に対する利権の問題と深く関係する。

4 人口密度と環状集落

環状集落分布は遺跡分布密度と強く相関する。

遺跡分布密度の増減に即応して環状集落が発達したり逆に解消したりする運動が繰り返されている。これを環状集落の「点滅」と呼ぶ。

5 環状集落の解体

後期中葉から後葉には不平等化の拡大により環状集落構造の基本原理が変化する。社会内部の変化が暗示される。

6 感想

・環状集落の基本が何故二大群なのか考えました。一大群や三大群でないのは何故かということです。この考えをあれこれこねくり回している中で、環状集落二大群の意義を次のように考えました。

・領域・資源の権益を自分で(家族で、身内集団で)確保するのは、「しんどい」。動物集団が縄張り争いをするのと同じである。

・領域・資源の権益を隣接する2人で(2家族で、2集団で)同盟関係を結んで確保するのは、「しやすい」。権益に侵入する外来者(集団)は通常1人(1家族、1集団)であるから、それに対抗するに2人(2家族、2集団)なら必ず優越できる。

・同盟関係を結んだ2人(2家族、2集団)の権益が複数存在し、それが広域空間的に配置されれば、広域空間の権益が安定する。外部からの侵入を広域的に予防できるようになる。

・つまり、二大群同盟とその同盟関係の空間連続配置は、社会全体を俯瞰的に統制する組織が発明されていない状況下で、縄文社会が発明した最良の社会安定継続装置である。

・三大群の同盟関係は不安定であり、実現しない。

・二大群の同盟関係とは、すなわち権益面における対侵入者対策での相互連帯保証同盟関係(契約関係)である。

・侵入者からみると、二大群の同盟関係は単なる力の同盟関係ではなく、現代風に言えば、法的な契約が支配する風景が存在することになり、侵入を諦めざるをえない状況だったと考えられる。

・二大群契約による環状集落発達区域、時期とは、狭い範囲にひしめき合って生活しても、食っていけるだけの資源が存在していたことの証である。あるいは資源利用の効率を高める制度的発明であるために、より多くの人口を養えた区域、時期である。

・環状集落を構成する二大群の後背地(領域、資源)は隣接して区画されていたと考えられる。

・以上のような感想(環状集落理解のための思考)がどれだけ適切であるのかどうか、今後の学習で確かめて行くことにします。


千葉市大膳野南貝塚後期集落の様子


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