2024年9月2日月曜日

萩原恭一先生講演「ハニワの顔と工人集団」聴講記

 A lecture by Professor Hagiwara Kyoichi titled "Haniwa Faces and Craftsmen Groups"


I attended the lecture by Professor Hagiwara Kyoichi titled "Haniwa Faces and Craftsmen Groups". It was a very easy-to-understand lecture with a clear argument. I was drawn in by the talk about the production areas and supply areas of haniwa, and my interest deepened and broadened. Although the kiln for the bearded haniwa at Ningyozuka Tomb in Chiba City has not been found, it seems highly likely that it was located in Ibaraki Prefecture.


萩原恭一先生講演「ハニワの顔と工人集団」を聴講しました。とても分かりやすく、論旨明解な講演でした。埴輪生産地と供給圏の話しに引き込まれて、興味が深まり広がりました。千葉市人形塚古墳のヒゲの埴輪の窯は見つかっていないけれども、茨城県にあった可能性が濃厚のようです。

1 講座の演目

2024年8月31日開催の令和6年度加曽利貝塚博物館・市原歴史博物館連携講座「造形の考古学-土偶と埴輪-」を聴講しました。

次の3つの講演がありました。

安井健一先生(千葉県教育振興財団)講演「千葉県の土偶-顔面に着目して-」

飯島史尊先生(千葉市教育委員会)講演「縄文時代の動物形土製品について」

萩原恭一先生(千葉県立房総のむら)講演「ハニワの顔と工人集団」

この記事では、萩原恭一先生(千葉県立房総のむら)講演「ハニワの顔と工人集団」を聴講して気が付いたことや感想をメモします。

2 わかりやすく論旨明解なお話

講演の内容は、最初に基礎知識としてハニワの起源、ハニワ配列の変遷の話しがあり、次いで本題のハニワ生産地と供給圏、人物埴輪の型紹介、ヒゲの人物埴輪の分布などに進みました。とてもわかりやすく、論旨明解な講演でした。


講演の様子

3 ハニワ生産地と供給圏


関東地方のハニワ生産地と供給圏


生出塚埴輪窯と製品供給範囲

ハニワ生産地と供給圏の話しはとても興味深いものでした。特に埼玉県鴻巣市生出塚埴輪窯の埴輪製品が千葉県市原市山倉1号墳に供給されていることは驚愕するような事象です。

なお、この驚くべき事象をテーマとして、今年10月からの市原歴史博物館企画展「旅する埴輪展」が開催され、当該埴輪が展示されるとのことです。


市原歴史博物館企画展「旅する埴輪展」開催予告画面

埴輪は重量物であるため水運で運ばれたと考えられていて、生出塚埴輪窯から荒川筋を下り、東京湾沿岸航路で市原まで運ばれたと考えられています。

4 ヒゲの人物埴輪の分布

ヒゲの人物埴輪は千葉市人形塚古墳からも出土していて、そのエキゾチックな風貌が印象的です。そのヒゲの人物埴輪の分布図が掲載されました。自分ははじめてみる分布図です。


ヒゲの人物埴輪分布図

何と茨城県の6古墳、千葉県3古墳、福島県1古墳から出土しています。

このヒゲの人物埴輪の窯はまだ見つかっていませんが、茨城県にあると考えられているようです。

もし窯が茨城県にあり、そこから千葉県3古墳に埴輪が運ばれたとすると、どのような水運路になるのか、とても面白い学習テーマになりそうです。九十九里平野には砂洲の間に縦横無尽に水路があったので、香取の海から船越(短区間陸路)を経てルートが通じそうです。

人形塚古墳(東京湾岸)は香取の海から印旛沼-新川-船越-花見川-東京湾-村田川河口という大廻ルートでしょうか?それとも別ルートでしょうか?

なお、ヒゲの人物埴輪はユダヤ人説があり、本を書いている人もいるが、考古学の立場から言えば、ぜひとも証明してほしいとの「挑発」がありました。ユダヤ人説は論外ですが、なぜ異国人のような風貌に見えるのか、講演者からの説明一言がほしかったです。

5 渡来系の人々の古墳

渡来系の人々の古墳には埴輪が無いものもあるが、埴輪がある古墳もあり、王権と渡来系の人々の個別関係で決まったようだとの説明がありました。古墳の形式や大きさ、埴輪設置の是非は王権が決定していたとの説明がありました。

6 参考良書

最後に参考良書として和田晴吾著「古墳と埴輪」(岩波新書)が紹介されました。自分は最近この図書を読んで、感想を記事にしました。

2024.08.20記事「和田晴吾著「古墳と埴輪」(岩波新書)読後感



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