A lecture by Professor Yasui Kenichi, "Clay figures from Chiba Prefecture - focusing on the faces"
I attended the lecture by Professor Yasui Kenichi, "Clay figures from Chiba Prefecture - focusing on the faces". It was an easy-to-understand and very informative lecture. I was deeply inspired by this lecture. I thought that the explanatory concept of avoiding facial expression and the emergence of late masked clay figures have the same roots.
安井健一先生講演「千葉県の土偶-顔面に着目して-」を聴講しました。わかりやすくとても充実した講演でした。自分はこの講演から強いインスピレーションを受けました。説明中心概念である顔表現忌避観念と後期仮面土偶発生は同根であると考えました。
1 講座の演目
2024年8月31日開催の令和6年度加曽利貝塚博物館・市原歴史博物館連携講座「造形の考古学-土偶と埴輪-」を聴講しました。
次の3つの講演がありました。
安井健一先生(千葉県教育振興財団)講演「千葉県の土偶-顔面に着目して-」
飯島史尊先生(千葉市教育委員会)講演「縄文時代の動物形土製品について」
萩原恭一先生(千葉県立房総のむら)講演「ハニワの顔と工人集団」
この記事では、安井健一先生(千葉県教育振興財団)講演「千葉県の土偶-顔面に着目して-」を聴講して気が付いたことや感想をメモします。
2 講演がわかりやすく、資料が充実している
・全国と千葉県を対照しながら特徴的土偶写真を紹介するスタイルで講演が進み、またその概要が配布資料5ページカラー(多数事例掲載)で確認できますので、とてもわかりやすい講演となりました。
・これまで土偶に関する講演は何回も聴講したことがありますが、今回の講演は最もわかりやすいものでした。
講演の様子
3 千葉県の土偶変遷がよくわかる
・今回の講演では千葉県の土偶変遷がよく整理されて、自分は理解が進みました。早期前葉の撚糸文期は千葉県内出土が全国で最も多くなることや、中期中葉の大規模環状集落がつくられたころ土偶はほとんど出土しないことや、後期中葉後葉に山形土偶やミミズク土偶が大量につくられたことなどの特徴をよく理解できました。
山形土偶変遷説明
4 顔表現に忌避観念が働いているという指摘
・今回の講演で、私が獲得できた最大情報は土偶づくりで顔表現に忌避観念が働いているとの指摘です。
・確かに早期、前期の土偶(三角土偶、バイオリン形土偶など)には顔表現がありません。
・前期出土人頭形土製品は写実的ですから、縄文人が写実的に顔表現できる技術はあるのですが、土偶の顔は抽象的であり、意図的に顔表現が忌避されているとの指摘は、自分にとってとても示唆に富む話しでした。
いろいろな顔表現(非表現)
前期出土人頭形土製品3Dモデル
この土製品は故人の頭部をリアルに表現したモノ(デスマスク)であると想像します。
5 後期ハート形土偶に仮面を思わせるものがあるとの指摘
・後期ハート形土偶に仮面を思わせるものがあるとの指摘がありました。
仮面を思わせるつくり
ハート形土偶の切手
・ハート形土偶は山形土偶に変化します。
・山形土偶に仮面を感じる記事を最近書きました。
仮面タイプの山形土偶か?
2024.08.16記事「全面赤彩の山形土偶は仮面土偶か?」
・山形土偶はミミズク土偶に変化します。
・ミミズク土偶に仮面を感じる記事を最近書きました。
ミミズク土偶の仮面
2024.07.23記事「仮面タイプのみみずく土偶(千葉市内野第1遺跡)観察記録3Dモデル」
・講演では山形土偶やミミズク土偶の仮面については触れていなかったようですが、ハート形土偶に仮面がみられるとの指摘から、山形土偶一般、ミミズク土偶一般も仮面を表現しているとの作業仮説に対する確からしさを強く感じるようになりました。
6 感想
今回の講演聴講で、4の指摘(顔表現忌避観念)と5の指摘(後期土偶の仮面性)が同根事象である可能性を考えるようになりました。次のような作業仮説をメモします。
[作業仮説]
・縄文人には現代人には理解しにくい、土偶の顔面表現忌避観念があったと考えます。土偶の顔面とはすなわち神様の顔面であると考えます。
・神様の顔面を忌避する背景には、神様の顔面を想像できないという事情も存在していたと考えます。
・神様の顔面を勝手に造形すると災厄が訪れるという思考が、顔面忌避観念の中心にあったと考えます。
・土偶発生時から土偶の顔表現は忌避され、あるいは抽象的でした。
・土偶(祭祀)が発達する中で、顔表現がないと不便なので、(神様の)顔面を(神様を表現した)仮面に置き換えるという発明がありました。この発明により仮面土偶としてのハート形土偶・山形土偶・ミミズク土偶(祭祀)が盛行しました。
・この発明の背景には人が仮面を被り祭祀を実行するというリアルな活動があったからだと考えます。
・仮面を剥ぐとその下にある顔はだれの顔がでてくるのでしょうか?「人」の顔でしょうか?それとも「土偶本人=神様」の顔なのでしょうか?
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