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2025年12月17日水曜日

技術メモ 断面幅20㎝スリットから出土した遺物の分層別集計方法

 Technical Note: A method for counting artifacts by layer excavated from a 20cm-wide slit.


I developed a method for counting artifacts by layer excavated from a 20cm-wide slit. I used layer lines from Illustrator and Blender Python to count the artifacts.


断面幅20㎝スリットから出土した遺物の分層別集計方法を具現しました。Illustrator由来の分層線を利用してBlenderPythonで集計します。

1 断面幅20㎝スリットから出土した遺物


断面幅20㎝スリットから出土した遺物(11断面)

2025.12.06記事「11断面幅20㎝スリットから出土した遺物抽出」参照

2 断面幅20㎝スリットから出土した遺物の分層別集計方法

2-1 分層別集計用メッシュオブジェクト作成


分層と遺物分布

分層線はIllustrator由来のカーブ

遺物は点群で2つの属性(id,bunruicode)を具備しています。


S3混土貝層の集計用メッシュオブジェクト

分層線(カーブ)から押し出しと面貼りを利用して、遺物を完全に内包するメッシュオブジェクトを作成します。

2-2 BlenderPythonによる分層内遺物集計

集計用BlenderPythonをChatGPT支援で作成しました。集計は分層毎に行い、遺物リストと分類コード別集計(統計)の2つのcsvファイルを生成します。


集計と統計のcsvファイル

3 メモ

少し前まで、手にカウンターを持って、画面を見ながら数えるようなこともあったのですが、そうした活動はようやく過去のものとなりました。


2025年12月6日土曜日

11断面幅20㎝スリットから出土した遺物抽出

 Extraction of artifacts excavated from 11 cross-section, 20cm-wide slit


Artifacts excavated from 11 cross-section, 20cm-wide slit on the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound were extracted. Next, a document was created that correlated the artifacts excavated from the slits with the cross-section of the shell layer in 3D space. This document will be useful for examining the formation of the shell layer from the perspective of artifact distribution.


有吉北貝塚北斜面貝層の11断面幅20㎝スリットから出土した遺物を抽出しました。次に3D空間の中で、スリット出土遺物と貝層断面図を対応させた資料をつくりました。この資料は貝層形成の様子を遺物分布の側面から検討できる有力材料となります。

1 11断面


11断面貝層断面図


11断面貝層断面写真

2 11断面幅20㎝スリットの遺物抽出


11断面幅20㎝スリットの遺物抽出


11断面幅20㎝スリット

11断面の幅20㎝(前後各10㎝)からなるスリットを設定し、そのスリット内の遺物を抽出しました。

●スリット内遺物

遺物件数:400

内訳

1 土器・土製品      90

2 石器・石        11

3 骨角歯牙製品       1

4 貝製品         13

5 骨・歯(魚類を除く) 274

6 貝            1

7 魚骨・鱗        10

3 11断面幅20㎝スリットにおける遺物と断面図の対応

11断面幅20㎝スリットにおける遺物と断面図の対応資料を作成しました。遺物は種別に色分しました。


11断面幅20㎝スリットから出土した遺物の種別


11断面幅20㎝スリットから出土した遺物の種別


11断面幅20㎝スリットから出土した遺物の種別


11断面幅20㎝スリットから出土した遺物の種別

4 「11断面幅20㎝スリットにおける遺物と断面図の対応」資料の画期的意義

「11断面幅20㎝スリットにおける遺物と断面図の対応」資料は、当該貝層断面図分層とほぼ直接的に対応する発掘資料が判明したという点で画期的です。3D空間の中で貝層は激しく変化します。従って記録された貝層断面図と出土遺物を直接的に関連付けることは一般に困難です。しかし、遺物3D分布資料を断面スリットで抽出することにより、この関連付けが可能となりました。この資料は恐らく本邦初出であると考えられます。

5 メモ

ここではスリット内遺物分布データを貝層分布検討の資料として扱います。

・遺物分布のパターンが貝層分層線の傾きと同じ部分が多く見受けられます。この対応関係は遺物と貝層が斜面に沿って移動しているという仮説を支持します。

・分層毎にみると斜面最上部より斜面中下部の方が遺物分布密度が高くなっているものが多くなっています。これも遺物と貝層が斜面に沿って移動しているという仮説を支持します。

・崩落層にも基底部を含めて遺物が散見されます。これは崩落層形成中にも貝殻投棄が行われたという貝層分析結果と整合します。

・K層からの遺物出土が極めて少なく、K層の由来(規模の小さな湖成層)想定と整合します。

6 技術メモ

11断面幅20㎝スリットの遺物抽出と種別表現は次の手順で行いました。

●北斜面貝層全部の遺物3Dデータ(csvファイル)からスリット分をPythonスクリプトで抽出する。

●抽出データ(csvファイル)をBlenderにBlenderPythonスクリプトで、属性情報付き点群としてプロットする。

●Blenderで、geometry nodesで属性情報の種別データを色分けしたICO球て表示する。


2025年11月5日水曜日

話題 離れた場所から出土した接合打製石斧

 Topic: Jointed Hammered Stone Axes Excavated from Separate Locations


In an excavation report, I found examples of jointed hammered stone axes excavated from opposite ends of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound (approximately 30 meters apart in a straight line). I believe that a fragment of a broken hammered stone axe discarded at the head of a gully-eroded valley was carried downstream by flowing water.


有吉北貝塚北斜面貝層の両端(直線距離で約30m離れている)から出土した接合打製石斧の事例を、発掘調査報告書から見つけました。ガリー侵食谷の谷頭で投棄された破損打製石斧の1片が流水によって下流に運搬されたと考えます。

1 離れた場所から出土した接合打製石斧


離れた場所から出土した接合打製石斧


離れた場所から出土した接合打製石斧

小片47a(遺物番号1190009)は一括出土に含まれるため、グリッドより詳細な平面座標はありません。標高は遺物台帳の前後関係から約31mと推定できます。

大片47b(遺物番号3530614)は3D座標が揃っています。

2 メモ

ガリー谷を埋めて発達する北斜面貝層では、貝層形成中にも稀な大雨で石器や土器が30m以上運搬される事象があったことをこの事例から確認できます。以前の調査で、同様規模の土器片移動も確認しています。


参考 294番土器の破片分布

3 参考 谷頭付近の接合石器出土例


谷頭付近の接合石器出土例

2023年5月4日木曜日

有吉北貝塚北斜面貝層出土の全遺物に精細3D位置情報があることを知る

 Knowing that all relics excavated from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound have detailed 3D positional information


I learned that all the relics excavated from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound are associated with detailed 3D positional information (on-site in millimeters).

For me, who enjoys 3D analysis learning of excavated information in Blender 3D space, it is a great news to discover a surprising fact.

I forget my remaining life and get excited.


有吉北貝塚北斜面貝層出土の全遺物に精細3D位置情報があることを知りました。発掘調査報告書掲載情報を3D分析して学習を楽しんでいる自分にとって、驚愕の事実判明です。1980年代の発掘ですが、全出土物の平面座標(x,y)と高さ座標(z)が㎜単位の精度で紐づいています。発掘関係者にとっては常識なのかもしれませんが、一般市民の自分にとっては驚愕であるだけでなく、3D空間分析の新地平が確実に開けると考えられる超朗報です。

有吉北貝塚出土資料を保管している千葉県教育委員会森宮分室の担当官の方に資料現物をみせていただき、教えていただきました。感謝です。

1 発掘調査報告書掲載土器(中期土器)の3D位置情報

発掘調査報告書には掲載土器の精細平面分布図と精細立面図が掲載されています。


例 359番土器破片の平面分布図と立面分布図

このすばらしい資料から掲載土器の高精度3D空間分布データを作成し、分析してきました。


例 加曽利EⅡ式土器(第10・11群土器)3D分布図(部分)

しかし学習を進めれば進めるほど、欲が出てきます。掲載図から3D位置情報を読み取る作業で生まれたデータには各種誤差・錯誤・不明が入り込み、精度が落ちるデータもあります。またグラフに表現できる情報には限界がありますから、情報全体の2割程度は欠落しています。

ところが、今回教えていただいた保管原資料を使えば、手間はかかりますが、次の方法で全ての土器破片について現場㎜単位の精度で3D位置情報を知ることができます。

ア 復元土器破片の注記からメッシュ番号と遺物番号を読み取る


例 359番土器破片のメッシュ番号と遺物番号

イ 遺物分布図から平面座標を読み取る

メッシュ毎に1/10遺物分布図が作成されていて、遺物番号が平面図にプロットされています。方眼紙に描かれた遺物分布図上で0.1㎜程度精度の計測が可能ですから、情報としては現場における㎜単位の精度になります。遺物番号位置を図面上で計測することにより高精度の遺物出土平面座標を知ることができます。

具体的には、遺物分布図をスキャナーで電子化し、illustratorに取り込み、illustrator座標を読み取れば簡単な変換式で現場座標を知ることができます。


illustratorを使った座標読み取りのイメージ

ウ 遺物台帳から高さ情報を知る

遺物台帳には全出土物の高さ情報が㎜単位で記載されています。

2 早期土器・前期土器及び土器以外の全出土遺物の3D位置情報

中期土器は出土土器現物の注記を読み取らなければその3D座標にたどり着くことが出来ません。しかし、早期土器・前期土器及び土器以外の全出土遺物については、発掘調査報告書に遺物番号が記載されていますので、現物注記を読み取ることなく、その3D位置座標を知ることができます。

2-1 前期土器の例

前期土器は南斜面貝層出土土器と接合する土器もあり、その分布原理に強い興味を持っています。北斜面貝層出土前期土器には発掘調査報告書で出土メッシュ番号と遺物番号が記載されているので、現物確認することなく3D座標を知ることができます。


例 発掘調査報告書における前期土器(158番)の記載

これまで次のようなメッシュ単位分布図を作成してきましたが、これからは中期土器と同じく精細な3D空間分布を把握することが可能となります。


例 これまでの早期土器・前期土器の分布把握

早期土器や前期土器がその時期にこの場所に持ち込まれたのか、それとも加曽利EⅡ式土器と一緒に持ち込まれたものであるのか、3D分布分析の中で結論がでるかもしれません。

2-2 貝製品の例

貝製品に限らず中期土器以外の出土物は発掘調査報告書でメッシュ番号と遺物番号が記載されています。


例 貝製品(装飾品他)でメッシュ番号と遺物番号が記載されている様子

従って、これまで平面分布図のみ作成してきましたが、これからは3D分布図作成が可能となります。


例 これまで作成してきた貝製品のメッシュ単位分布図(棒グラフの立体表現)

貝製品(装飾品他)の分布について、識者の見立てでは、台地面存在の指導者竪穴住居がガリーに崩落して、その結果腰飾りが貝層に流れ込み埋もれたということになっています。しかし、3D分布分析ができるようになると遺物と貝層との関連も判るようになり、北斜面貝層で祭壇がつくられてたり、装飾品が埋納されるような活動存在が想定できるようになるかもしれません。

3 感想

Blender3D空間を舞台に北斜面貝層の貝層と遺物の3D分布分析が可能であることがわかりました。発掘作業が行われた1980年代には、作成した3D位置情報を有効活用する技術は十分ではありませんでした。しかし、2023年の今では、素人の自分でも貝層と遺物の精細3D分布分析が技術的に可能です。これからの有吉北貝塚北斜面貝層学習に、残寿命を忘れてワクワクします。