2018年6月17日日曜日

貝塚・集落の構造

大膳野南貝塚学習中間とりまとめ 4 貝塚・集落の構造

大膳野南貝塚学習中間とりまとめを次の10項目に分けて行っています。
1 漆喰貝層有無2集団の関係
2 諸磯・浮島2集団の関係
3 集落消長の理由
4 貝塚・集落の構造
5 貝殻・獣骨・土器片出土の意義
6 埋葬の様相
7 竪穴住居祭壇の様相
8 狩猟方法イメージ
9 個別テーマ
10 背景学習

この記事では「4 貝塚・集落の構造」の説明素材を集めて、まとめペーパーの材料を作りましたので掲載します。
なおここでは遺構からみた後期集落の構造の意義を学習します。

1 集落構造を知るための指標と方法
貝塚と後期集落の関係及びその全体構造を知るために次の指標を設定して、指標別分布図をオーバーレイしてその重なりを分析しました。

1-1 集落構造を知るための指標
●漆喰貝層有竪穴住居関連指標
・貝層
・地点貝層
・漆喰貝層有竪穴住居
・廃屋墓・ヒト骨出土竪穴住居
・環状焼土・特殊遺物出土竪穴住居
・装身具出土竪穴住居
・屋外漆喰炉
・漆喰貝層が出土する送り場土坑
これらの指標は貝を扱った人々(漆喰貝層有竪穴住居住人)の居住と祭祀に関する活動を表すものです。

●漆喰貝層無竪穴住居関連指標
・漆喰貝層無竪穴住居
・廃屋墓・ヒト骨出土竪穴住居
・装身具出土竪穴住居
・漆喰貝層が出土しない送り場土坑
これらの指標は貝を扱わなかった人々(漆喰貝層無竪穴住居住人)の居住と祭祀に関する活動を表すものです。
なお、「漆喰貝層が出土しない送り場土坑」はすべて漆喰貝層無竪穴住居住人がつくったものであると仮定しました。

●漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居に分けられない指標
・貯蔵土坑
貯蔵土坑が漆喰貝層有竪穴住居住人と漆喰貝層無竪穴住居住人の間でどのように使い分けられていたのか、あるいは一緒に使っていたのかまだわからないので、別建ての指標(中立指標)としました。

1-2 分析方法
各指標の分布図を作成してオーバーレイしてその重なり具合により分析しました。
指標分布図はGIS上で点情報として扱っている指標と面情報で扱っている情報の重なりを視覚化するためと、重なり具合を強調・模式化して判りやすくするために、全ての指標に2mバッファ(拡張領域)を加えました。
「重なり具合」の分析は、分布図を同色の淡色(透過度20%)で作成してオーバーレイすることにより生まれる色の濃淡を使いました。指標分布の重なりが多い部分では色が濃くなり、それは活動が活発であったことを示すと考えます。指標分布の重なりが少ない部分では色が薄くなり、それは活動があまり活発でなかったことを示すと考えます。

2 指標分布図
次に指標分布図を掲載します。

指標分布図 漆喰貝層有竪穴住居関連指標 1

指標分布図 漆喰貝層有竪穴住居関連指標 2

指標分布図 漆喰貝層無竪穴住居関連指標

指標分布図 漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居に分けられない指標

3 オーバーレイ分析
3-1 漆喰貝層出土遺構
漆喰貝層出土遺構をオーバーレイすると次のようになります。

漆喰貝層出土遺構オーバーレイ
全体が円環状を呈する分布となり北貝層と南貝層で濃色となり活動が活発であったことが判ります。
居住に利用された住居の場でその廃絶祭祀が行われ、同時に埋葬の場となり、さらにそこに貝塚が築造されたという一連の活動が円環状ゾーンのなかで行われたことが判ります。

3-2 漆喰貝層非出土遺構
漆喰貝層非出土遺構をオーバーレイすると次のようになります。

漆喰貝層非出土遺構オーバーレイ
漆喰貝層出土遺構オーバーレイと比べると、分布が遺跡区域全体にバラけていて明瞭な秩序を感得することができません。
漆喰貝層出土遺構オーバーレイとの関連でみると、その外側の分布する部分と内側に分布する部分に分けて捉えることは可能です。

3-3 全遺構
全遺構をオーバーレイすると次のようになります。

全遺構オーバーレイ
この図は、漆喰貝層出土遺構による円環状構造とその外周と内周に分布する漆喰貝層非出土遺構の姿、つまり集落構造を表現しています。
次に、この図を模式化してわかりやすくします。

3-4 模式的把握
3-4-1 漆喰貝層出土遺構 模式的把握
漆喰貝層出土遺構の円環状ゾーンを模式的に表現すると次のようになります。

漆喰貝層出土遺構 模式的把握

3-4-2 漆喰貝層非出土遺構 模式的把握
多少の無理を伴いますが、漆喰貝層非出土遺構の分布を模式的に表現すると次のようになります。

漆喰貝層非出土遺構 模式的把握

4 集落構造
漆喰貝層出土遺構模式的把握と漆喰貝層非出土模式的把握をオーバーレイすることによって集落構造を単純化して把握することができました。3重円環構造となっています。

集落構造

集落構造の意義
集落主体ゾーンと名付けたゾーンは漆喰貝層有竪穴住居住人の居住の場、祭祀の場、埋葬の場であり、貝塚建設の場です。
一方、外周ゾーン、内周ゾーンと名付けたゾーンは漆喰貝層無竪穴住居住人の居住の場、祭祀の場、埋葬の場です。このゾーンでは貝塚は建設されません。
なお、集落主体ゾーンと外周ゾーン・内周ゾーンが重複している部分があります。この重複は「漆喰貝層無竪穴住居住人の活動」(古)→「漆喰貝層有竪穴住居住人の活動」(新)という時間差により生じているものです。

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次の資料を公開しました。(2018.06.17)

pdf資料「貝塚・集落の構造 要旨

pdf資料「貝塚・集落の構造

上記資料を含めて私の作成した主な資料・パワポはサイト「考古と風景を楽しむ」にも掲載しています。

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