そこで、中間段階ですが、牧関連情報を集成とりまとめておきます。
1 馬具
A177竪穴住居から馬具が出土しています。
馬具出土遺構
A177竪穴住居は廃絶時に一気に埋め立てられ、その時一緒に馬具が「竹野」墨書土器などが覆土に混じったようだと報告書に記述されています。
馬具はハミの一部で、15は径24.5×厚さ4、重量33g、16は長さ259×厚さ5~10、重量55.9g、17は総長160、重量85.2g、環形25×厚さ5.
2 長文墨書土器
牧建設と馬飼養を祈願した墨書土器が、A036竪穴住居から出土しています。
A036竪穴住居出土長文土器
この長文墨書土器から「野」が牧の意味であることが判明しました。
3 墨書土器「竹野」
長文土器から「野」が牧の意味であることがわかり、結果として「竹野」は竹集団の牧部隊の祈願文字であることがわかりました。
「竹野」分布から野(牧)空間をイメージすると次にようになります。
墨書土器竹野に対応する野(牧)イメージ
竹集団以外も牧を行っていたと考えます。この図はあくまで竹集団が関わる牧空間イメージです。
4 上谷遺跡付近の農業空間
竪穴住居及び掘立柱建物の分布から逆にそれらが分布しない空間を抽出し、農業空間と想定しました。
上谷遺跡 台地上農業空間の抽出
牧空間は農業空間の中に含まれると考えます。
5 馬が歩いていた可能性のある空間
一気埋戻し竪穴住居は、竪穴住居廃絶時にその跡が穴にならないための意識的施策であると考えられます。
馬が転び骨折すれば、その大きな商品価値が無くなりますから、それを防止するためであると考えました。
馬が歩いていた可能性のある空間(想定)
馬が歩いていた可能性のある空間の近くに掘立柱建物がありますから、それが厩舎であった可能性もあります。
6 馬の水飲み施設の可能性の高い土坑とその管理施設(竪穴住居)
不安定な水面あるいは湿地であることが判った場所に馬の水飲み施設としての土坑とその管理施設(竪穴住居)を見つけることができました。
馬の水飲み施設
(図中A188は誤、正A182)
馬の水飲みの管理施設(竪穴住居)
A182竪穴住居は水面近くに設置しているため、竪穴住居に浸水防止用土盛りをしている。
このことから、通常居住用ではなく、水場管理施設であることがわかる。
参考 上谷遺跡の地形解釈(想定)に基づく表層地下水の流れ
思った以上に牧関連情報が集まりました。
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