上谷遺跡学習における寄り道学習として土坑の学習をしています。
上谷遺跡の主な大型土坑のうち、D125土坑について学習します。
上谷遺跡の主な大型土坑
D125土坑は発掘調査報告書では次のように記載されています。
●遺構
長軸1.97m×短軸1.79m×深さ0.97m、長軸方向はN-44°-Eを示す。
平面形はほぼ円形である。
A144(竪穴住居)と重複している。坑底は平坦であり、壁の立ち上がりに周溝を持つ土坑である。
覆土はロームを混入させた暗褐色土を主体とした人為堆積である。
須恵器2片が出土している。
●所見
覆土は、単に土砂を放り込んだような堆積である。
形状から墓壙とも想定したが、覆土状況からそのようには捉えられないものである。
D125土坑
「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第3分冊-」(2004、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)から引用
この土坑が切っている竪穴住居A144及び直近の竪穴住居からタール状付着物のある土器が出土していて、この付近が漆工房集中区域である可能性を既に検討しています。
2016.09.14記事「上谷遺跡 漆工房群存在の可能性」参照
上谷遺跡 付着物土器出土遺構
漆工房集中区域の可能性
想定(想像)になりますが、D125土坑は漆産業に関連する土坑であると考えることが合理的です。
次のような機能のうちどれかあるいは全部がこの土坑の機能であると考えます。
1 漆栽培のための分根の貯蔵庫(土に埋めて貯蔵する装置)
2 漆実生発芽のための漆実の脱蝋装置(脱蝋のために果肉を腐らせる装置)
3 脱蝋した漆実の貯蔵庫(脱蝋漆実の発芽を促進させるために土に埋め、散水する装置)
この土坑の検討の中で、奈良時代の漆産業は自然に生えた漆の木を利用するのではなく、漆の木を栽培してそれを利用していたということを学びました。
漆工房が集中する空間付近(の斜面)には漆畑が存在していたと考えます。
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